第72代横綱稀勢の里が引退して明日で1週間になります。
ニュースや報道番組の取り扱いを見ても如何にその存在が大きかったかを改めて思い知らされているところです。
相変わらず満員御礼の盛況は続いていますが、それは稀勢の里が引退する前にチケットが完売していたからで、関係者の間では来場所以降の大相撲の人気に早くも陰りが生じていると心配している向きもあります。
その上、今場所は全盛を過ぎた白鵬が今日10日目で早くも2差リードして独走状態になっています。
本来対抗するべき鶴竜は序盤の不振から休場を余儀なくされ、大関陣も高安は5勝5敗、豪栄道に至っては勝ち越しも望めそうにない4勝6敗、栃ノ心は1勝も出来ずに休場という体たらくです。
期待されていた若手も好調だった御嶽海が怪我で休場、先場所の優勝で俄に脚光を浴びた貴景勝もまだまだ安定した活躍は望めません。
結局、全勝の白鵬を追う2敗は34歳の関脇玉鷲と平幕の千代の国の2人だけという状況です。
これでは13日にも優勝が決まりそうな予感がします。
白鵬が強いというよりは他の力士の不甲斐なさが浮き彫りにされてしまいました。
これまで数々の不祥事が続いたにもかかわらず大相撲人気が続いて来たのは、強いモンゴル勢に稀勢の里が闘志溢れる相撲で孤軍奮闘していたからです。
たとえ優勝は逃しても人気と実力で対抗する核として稀勢の里が存在したからこそ、ファンは最後まで優勝争いを楽しめたのです。
明らかに全盛期を過ぎた白鵬に独走を許しているようでは、それでなくても稀勢の里ロスによって離れつつあるファンを引き留める術はありません。
更に、人気回復の癌になっているのは前人未到の優勝41回を誇る白鵬自身なのです。
生涯勝率8割2分強を誇るその実績は脱帽するしかない孤高の横綱です。
ただ、残念ながら不人気なのは否めません。
別にモンゴル人だからという訳ではありません。
このグローバル化した現代に外国人だからといって排斥するつもりはありません。
今は野球、サッカー、バスケット、ラグビー……、あらゆるスポーツに外国人選手のいない競技は無いと言っても過言ではありません。
みんなその競技におけるパワー、テクニックに惜しみない拍手を送っていて人気と尊敬を集めています。
その点、白鵬は横綱としての自覚、振る舞いに稀勢の里のような尊敬される力士たり得る部分が足りないのです。
日本人の求める横綱像は正に稀勢の里が体現したような、勝って驕らず負けて腐らず堂々と下の力士の力を受け止めて強さを見せつける、というものです。
ところが、白鵬は横綱以前の稀勢の里に対したように立ち合いで策を弄して、相手に合わせようとしないで牽制したり、相手の不意を突く立ち合いをしたりと、横綱らしい堂々としたところに欠けているのです。
それは稀勢の里だけにとどまらず、若手の実力者が現れる時に今も見せる姑息的な立ち合いです。
また、勝負の決まった後の無用な駄目押しや、これ見よがしな所作など枚挙に暇がない程、横綱らしさに欠ける部分が多すぎます。
このような第一人者の自覚の無さに、日本人力士の不甲斐なさが続くようなら大相撲人気の凋落は目に見えています。