3月10日始まった大相撲春場所。貴景勝の大関獲りや玉鷲の大関への足掛かり等で騒がれているが、その大関の地位から怪我や体調不良の為に序二段まで陥落した元大関照ノ富士が再スタートの場所を白星で飾った。
大相撲は他の格闘技と違って体重別ではないので、体重が多い方が有利な競技とも言える。
そのせいか、力士は体重増加に力を入れて一昔前と比べて一回りも二回りも大きくなっている。
しかし、体重が増えるという事はそれだけ腰、膝、足等に負担が掛かるという事でもある。
最近の大相撲中継を観ていると、ほとんどの力士が包帯やサポートを身につけていて、真っさらな状態で土俵に上がる人は皆無に近い状況である。
もう、大相撲に怪我は付き物という印象さえある。
先場所も横綱稀勢の里が2017年春場所の怪我が完治しないまま引退に追い込まれたばかり。
そして、元大関照ノ富士も怪我の後遺症が長引き苦しんでいる。
相撲経験の無い照ノ富士だが高校相撲の名門、鳥取城北高校に相撲留学として2009年3月来日。
その年、全国高等学校総合体育大会で同校の団体優勝に貢献。
翌2010年に間垣部屋に入門。序の口、序二段、三段目と全て一場所で通過したが、2013年に間垣部屋が閉鎖され、伊勢ヶ濱か部屋に移籍。
横綱日馬富士等を擁する名門に移籍した事によって、稽古環境等が充実して更に素質に磨きがかかって幕下、十両と順調に昇進して2014年3月場所で新入幕を果たした。
その後も、一度負け越しを経験したがとんとん拍子で出世して2015年3月場所で初優勝。翌5月場所で12勝3敗の好成績で三役2場所で大関昇進。
翌7月場所は新大関で11勝。9月場所も11勝1敗と成績を伸ばしていたが、13日目に大関稀勢の里に寄り倒された時に右膝を負傷。
その後、怪我が完治しないまま出場して膝を悪化させてしまい、更にその後右肩、左膝の故障にも悩まされ、5度の大関カド番という不名誉な記録を残して2017年9月場所で大関陥落。
翌11月場所で4連敗から途中休場して10勝以上での特例復帰もならなかった。
その後、平幕に番付を下げた上に追い打ちをかけるように糖尿病まで発症して、2018年3月場所には十両、同年7月場所には大関経験者としては初の幕下陥落。
その番付が発表された同年6月25日に両膝の手術を受け、7月場所から今年の1月場所まで4場所連続休場して今場所は西序二段48枚目まで番付が下がってしまった。
初日、動き回る対戦相手の若野口を組止めて力ずくのはたき込みで昨年3月場所以来の約一年ぶりの白星を挙げた照ノ富士。
今は筋力トレーニング以外の稽古は出来ておらず、両膝にはサポーターを施したまま。
「少しずつ番付を上げていきます。体を鍛え直して幕内に上がるのが大事」と語っている。
解説者等からは、これから番付を上げていっても相手の圧力が強くなるので先行きは厳しい……、という声も聞かれるが、
「目標は今場所ではない。一年を見るという気持ちです」と、本人は前を見据えている。
大関昇進時はすぐにも横綱になれるとまで言われていた照ノ富士。
これからも茨の道が続くだろうが、まだ27歳。
幕内で再びあのふてぶてしいまでの強さが観られる事を期待して見守って行きたい。