今春2月のキャンプ中にファンに引っ張られて右肩を故障し、開幕を棒に振って二軍で調整していた松坂大輔が、7月16日に行われたナゴヤドームの阪神戦で今シーズン初登板した。
ウイークディにもかかわらず、前日の祝日のゲームを上回る32,338人の観客が詰めかけたナゴヤドームのマウンドで、今シーズンから戻った『背番号18』の松坂は制球に苦しみながらも、要所要所を締めて5回を2失点に抑えてチームの6連勝に貢献した。
● 待ちに待った令和初登板
故障に泣いてどん底を味わった松坂大輔は昨年6勝を挙げ、今年こそはローテーション投手として二桁勝利で『完全復活』を目指していた。キャンプ中の接触で右肩炎症の後、二軍調整から再スタートの松坂は出遅れながらも、5月28日ウエスタン•リーグのソフトバンク戦で実戦復帰にこぎつけた。
二軍で4試合18回、4失点、防御率2.00の成績を残して一軍切符を勝ち取った松坂は、二軍生活で焼けた小麦色の精悍な顔で、306日ぶりとなるこの日の一軍マウンドに立った。
1回表、売り出し中のトップバッター近本光司に4球目142キロの直球をセンター前に運ばれる。2番糸原健斗の初球に近本が盗塁に成功。更に、糸原に右前打を許してワンアウトも取れずに、無死一、三塁のピンチを迎える。
3番糸井嘉男はそつなくセンターに犠牲フライを飛ばして1失点。4番大山悠輔を中飛に打ち取り、5番陽川の初球で糸原が盗塁を仕掛けたが木下拓哉が落ち着いて差して、2安打1失点で初回を終える。
1回裏味方が2点取って逆転に成功。その直後の2回表は5番陽川尚将を一塁ゴロ、6番高山俊はセンターフライ、7番梅野隆太郎を二飛で三者凡退に抑える。味方が逆転してくれた直後の回を簡単に無失点で切り抜ける辺りは、さすが元エース。
3回表は8番木浪聖也をセンターフライ、9番ピッチャー岩田稔は三直と抑えたが、1番近本にフルカウントから中前打、続く糸原に四球。3番糸井に右翼線二塁打を打たれて同点に。更にニ死ニ、三塁で4番大山に四球。満塁のピンチを背負うも続く陽川を空振り三振でピンチを切り抜けた。
4回表は高山、梅野を連続遊ゴロに打ち取リ、続く木浪は空振り三振で2回に続いてこの日2度目の三者凡退。
5回表、ピッチャー岩田は左飛に打ち取るが、近本、糸原に連続死球を与える。どうも、この1番2番に投げづらそうだが今後の対決に苦手意識が出なければ良いが……と、気に掛かる内容。3番糸井は一塁ゴロ、4番大山を中飛に打ち取り無失点で切り抜ける。
● 今後の松坂を占う
結局、松坂の今シーズン初登板は5回91球を投げ、4安打2奪三振4四死球2失点の内容。今シーズン初登板初先発、306日ぶりの一軍のマウンドという事を考えれば良く投げた方だと思う。もちろん、全盛期の松坂を知る者にとっては物足りなさも感じるだろうが、38歳という年齢も加味してこの暑さの中好投とも言える。
「満足出来る内容ではなかったけど、チームの連勝を止めずに良かった。すんなり試合に入りたかったけど、自分でも力んでいるのが分かった。初登板は何年やっても難しいものだと改めて思った」
松坂のコメントが全てを表している。緊張と不安の中、マウンドを降りる時点で同点でリリーフ陣に繋いで、その松坂の思いを引き継いだ4投手が無安打無失点に切り抜け、9回裏一死満塁からアルモンテの押し出し四球でサヨナラ勝ち。松坂に勝ちは付かなかったが、チームとしては最高の形で勝利を得た。
直球の最速は142キロ。多彩な変化球を駆使して要所を締めるピッチングだったが、制球に苦しんだ印象がある。今後も球速が大幅に上がる事は考えられず、変化球のコントロールの改善が鍵を握る事になる。
バッタバッタと三振に切り取っていた『平成の怪物』の姿は見られないかもしれないが、ピンチを招きながらも要所要所を締めて飄々とマウンドを引きあげる、『ニュー松坂』をハラハラドキドキ応援するのも悪くはない。
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