巨人の坂本勇人のバットが止まらない。6月6日現在打率.332、打点42、本塁打20をマークしている。打率は高橋周平(中日)、鈴木誠也(広島)に続く3位、打点は村上宗隆(ヤクルト)に次ぎ2位。本塁打はバティスタ(広島)に3本、鈴木に5本差を付けるトップ。三冠王も狙えそうな勢いだ。
● 坂本勇人進化の秘密
青森県の光星学院から入団して今年で13年目を迎えた坂本勇人。プロ入り2年目から巨人の遊撃手という難しいポジションでレギュラーの座をつかみ、昨年少し戦列を離れたがほとんど全試合に近い出場を続けてきた。まだ30歳だが、怪我さえ無ければ来年にも2000本安打に達するのは間違いないだろう。
入団時から遊撃手としてのセンスの良さには定評があったが、入団3年目の2009年には打率3割超をマークし、翌年は本塁打30本超えと打撃面でも成長を見せてきた。ただ、その後の5年間は並の遊撃手なら上等と言えるかもしれないが、坂本にしては低迷期という時期にあたるのだろうか。
しかし、2016年打率.344で初の首位打者に輝くと共に、6年ぶりの20本塁打超をマークして再び成長期に突入し、昨年は首位打者こそ逃がしたものの2016年を上回る打率.345をマークして安定感が増してきた。
その上、今年は更なる進化を遂げている。私的には坂本勇人という選手を打撃面で評価するなら、勝負強さがあって長打力もそこそこ持ち合わせているが、どちらかというと内角打ちの巧い好打者というイメージがある。186センチという長身ですらっとしたイメージからもパワーヒッターとは思えなかった。
しかし、今年の坂本を見ていると巧さを兼ね備えた長距離打者と言っても過言ではない。これまでの坂本のホームランは圧倒的に得意の内角を引っ張るレフト方向が多かった。しかし、今年の量産はセンターからライト方向と広角に打てている事が要因。
今年復帰した原監督が4年前の退任時に「あとはパワーだけだな。いいもの食べてウエイトトレーニングやって、もっとパワーをつけないとな」と、言葉を掛けていた。更に、ここ数年、キャンプや試合前の練習で行っている、トスをフライで遠くに飛ばす『ロングティー』。このパワーとロングティーによって、センター方向に飛ばす強いスイングが出来るようになって、本塁打量産につながっているようだ。
● 史上最高の遊撃手へ
今年の坂本は打率、打点、本塁打の打撃三部門全てにおいてキャリアハイを達成する可能性がある。首位打者はちょっとした調子の良し悪しや相手もある事なので絶対とは言えないが、交流戦に入ってクリーンアップを任されているが、この起用が続くなら打点王の可能性が大いに期待出来る。本塁打はバティスタ、鈴木の広島勢の他にバレンティン(ヤクルト)、ソト、筒香嘉智のDeNA勢等、ライバルが多いが今の坂本なら史上8人目の三冠王をしてのけても不思議でない勢いがある。
20代前半の進化期に始まって数年前を成熟の時としたら、あと数年後に迎える『円熟期』。遊撃手というのは守備の名手という先入観があって、少々打力が劣っていても守備で貢献というのが大方の持つイメージではないだろうか。
坂本が3年前に獲得した首位打者は遊撃手としてはセ・リーグ初の快挙。パリーグでもレインズ(阪急)、豊田泰光(西鉄)、西岡剛(ロッテ)の3人。打点王は葛城隆雄(大毎)、田中幸雄(日本ハム)の2人だけ。本塁打王は宇野勝(中日)一人しかいない。
今、坂本の活躍のせいかネットや巷で史上最高の遊撃手は誰か、で盛り上がっている。もともと、守備の上手い選手が多いので名手を挙げるのは両手でも足りないくらいだが、打撃も兼ね備えた名遊撃手となると限られてくる。強打でならした豊田や日米で活躍した松井稼頭央等の名前が挙がっているが、今年の坂本の活躍が続くなら一気に史上最高の遊撃手と讃えられる可能性が高い。今後の坂本の攻守から目が離せない。
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