大相撲初場所は33歳徳勝龍の感動的な涙の初優勝で幕を閉じた。その一方で、同じ33歳の大関豪栄道の引退という寂しいニュースも報じられた。
昨年1月の横綱稀勢の里の引退を機に平成をリードしてきた実力者達の衰退が一気に進み、令和の新時代の力士達への世代交代の波が急激に押し寄せてきた。
どんな世界のどんな実力者にも訪れる世代交代という抗えない運命。朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜と続いたモンゴル勢の頂点から、再び日本人力士の天下へと戻るのか。初場所に見た豪栄道の引退と世代交代の波のレポート。
● 大関豪栄道の引退
土俵上では小さく見えたが、184cm、160kgと決して小さい体ではない。しかし、背中を丸めて頭でぶつかって右四つ左上手からの出し投げや、切り返し、外掛けから崩しての巧さが光るので、どちらかというと技巧派の印象がある。
大阪府寝屋川市出身で小学校から相撲を始めていたが、高校相撲の名門埼玉栄高校に進学。1年生から頭角を現して高校横綱。2005年初場所に初土俵。
そこから正にとんとん拍子の出世を続け、幕下、十両で若干足踏みはしたが2007年秋場所で幕内昇進。その後は常に幕内上位、三役で取り続ける活躍。
しかし、2010年の大相撲野球賭博問題に関与して書類送検。相撲界からも謹慎休場処分を受けて十両に陥落。その後、再び盛り返して14場所連続関脇在位という昭和以降の最長記録の末に、2014年名古屋場所後に念願の大関昇進を果たした。
しかし、大関昇進後は度重なる怪我に悩まされて休場や負け越しを繰り返し、優勝争いに絡む事も稀な状況が続いた。
そして、4度目のカド番を迎えた2016年秋場所。夏巡業で充実した稽古を積んだ豪栄道は初日から連勝を続け、7日目に2横綱3大関に勝って快進撃の隠岐の海との全勝同士の対決を制し、更に波に乗る。
11日目に同じ大関で初優勝を期待される稀勢の里、13日目に連覇を狙った日馬富士を倒して初優勝を全勝で飾った。
しかし、初めての綱取りに失敗すると腰痛や怪我に悩まされ、優勝のチャンスはあったがものにする事は出来ず、同年齢の稀勢の里に横綱争いで先を越されてしまう。
そして、歴代ワースト3位の9回目のカド番となった初場所。前場所痛めた左足首が完治しないまま出場したが、初日から3連敗と苦しい相撲が続き5勝10敗に終わり大関陥落。
来場所は地元大阪場所なので大関復帰にかけると見られていたが、28日引退届を出した。「やりきった気持ちがある。相撲を取る気力がなくなった」と語り、その相撲同様に潔い決断だった。
運動後のジョイントメンテ&リカバリーケアドリンク【ランショット】
● 世代交代の波
昨年、一昨年の2年間と今場所の13場所で白鵬、鶴竜が各3回の優勝。その他では三役力士で4回、平幕力士が3回。
大関は優勝無し。横綱、大関で半数にも満たない状況では確実に世代交代が進んでいると言っても過言ではないだろう。
特に、2回の優勝を決めた御嶽海、大関昇進を果たした貴景勝、三役で活躍している朝乃山の3人は世代交代の旗頭と言っても差し支えないだろう。
しかし、この3人もまだ両横綱に取って代わるほどの実力も安定感もないだろう。特に、貴景勝は千秋楽の徳勝龍戦のようにまわしを取られたら、格下相手でも勝つのが難しい状況では、綱を目指すには苦しい。
御嶽海は貴景勝よりは四つ相撲をこなせるようだが、逆に貴景勝ほどの爆発力に欠けるし、かといって四つ相撲になっても胸を合わせると苦しい。
その点、有望なのは朝乃山。近年の大型化からか若手の実力者はつき押し相撲が多いが、この力士だけは本格的な四つ相撲。まだまだ、先手を取られると弱いところがあるが、徐々に力強さが出て来て一方的に持っていかれる場面が少なくなってきた。
この他に、粘り強いつき押し相撲が身上の北勝富士、今場所覚醒したような正代、つき押しの威力が増してきた大栄翔、阿炎。更に、四つ相撲にも進境を見せた阿武咲と、多士済々で先陣争いが激しいと共に一気に世代交代まで持って行けるか楽しみ。
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