
唯一無二を謳った新横綱大の里と、先輩横綱豊昇龍の争いと思われた名古屋場所
蓋を開けると豊昇龍は序盤3連敗からの途中休場。大の里も金星4の配給で減速
まさかの平幕主導の優勝争いを制したのは琴勝峰。大波瀾の名古屋場所リポート
大器・琴勝峰の覚醒なのか
同じ部屋の大関琴桜の後輩の琴勝峰。初土俵は琴桜より2年遅れだが、琴桜が幕下で伸び悩んでいた事もあって、新入幕はわずか2場所遅れ。琴桜以上の大器と言われた事もあったが怪我もあって伸び悩み。
2回の十両落ちでもたついている間に、琴桜は大関昇進。幕内優勝も経験して大きく差を付けられてしまった。東前頭15枚目の今場所も右太股を痛め、親方からは前に出るしかないとのアドバイス。
組んでも離れても取れるが、これまでは積極的なイメージはなかった。今場所も序盤で2敗したが、11日目の隆の勝戦での出足一気の目の覚めるような快勝で波に乗った感じ。結局は6日目から10連勝で横綱にも勝って初戴冠。
周囲は横綱、大関を目指して欲しいと期待は大きい。しかし、今場所だけでは分からない。今後、幕内上位で横綱や三役などと総当たりして好成績を残せるかが鍵。恵まれた体で前に出る圧力を更に磨いて、まずは2桁勝利を目指して欲しい。
平幕に集う多士済々の若手
序盤から終盤に掛けて琴勝峰以上に注目を浴びたのが前頭筆頭の安青錦。ウクライナ出身で初土俵から2年足らずの21歳。初土俵以来まだ負け越し知らずのスピード出世で、入幕後も3場所連続の11勝4敗と、大の里にも劣らないスピード出世。
序盤は大の里以外の関脇以上の力士を総なめ。低い体勢からの攻めと粘り強さが身上で、特に鮮やかな内無双が印象的。138キロと軽量だが、立ち合いの圧力を磨けば末恐ろしい存在になりそうな予感。次の大関争いの候補に躍り出た。
楽しみな若手は他にも数人いるが、その中でも特に注目したいのは新入幕の草野。日本大学出身で学生横綱のタイトルを獲得し、幕下最下位格付出でデビュー。こちらも安青錦同様に負け越し無しで新入幕。11勝4敗で終盤まで優勝争い。
183センチ、151キロは現代の大相撲では普通の体格だが、キビキビした動きとセンスの良さが魅力。伊勢ヶ浜部屋で同世代の稽古相手に恵まれ、伸び代は尽きない。立ち合いに磨きをかけ、速い攻めが身に付けば将来の横綱、大関候補か。
唯一無二へもがく、大の里
唯一無二の存在を目指して登場した、新横綱大の里。立ち合いから圧力を掛けて攻める時は無双の強さ。しかし、攻めが続かなかったり、押し込まれたりした時の引きが癖になっている。
学生時代のタイトル獲得の懸かった一番でも引き技で墓穴掘る場面があった。相撲解説者の琴風氏が言うところの毒まんじゅう。一度覚えたら止められない引きの毒まんじゅう。
もし、これが本当に身に付いてしまっているとしたら唯一無二どころではない。学生時代も大相撲に入ってからも、圧倒的な破壊力と引きで勝ち進んできた弊害が表れているとしたら大問題。
もう一度初心に帰って相撲を見つめ直す時期なのかもしれない。相手の当たりを受けて、引かずに押し返す。更に、回しを取って前に出る相撲も身に付けて欲しい。今場所は横綱昇進の行事で稽古不足もあったはず。来場所ニュー大の里を見せて欲しい。