大相撲秋場所が予想通りの混戦になっている。長く続いた『モンゴル時代』も、朝青龍、日馬富士が引退した上、白鵬と鶴竜の両横綱が揃って34歳になり最近は一場所ごとに休場する方が多い状態。
唯一モンゴル勢に抵抗した稀勢の里も引退し、これからは日本人の若手力士が台頭する時代に突入していく。
今場所はその日本人の先頭に立つべき力士が揃って優勝争いに絡んでいて、レベル的にはこれまでよりやや劣るかもしれないが、混戦模様の優勝争いに観客やファンは熱狂している。
今回は今場所はもちろん、令和の相撲界をリードしていく力士達を取り上げてみた。
● 今場所の優勝争い
今場所の優勝争い
2敗 貴景勝、明生
3敗 御嶽海、朝乃山、隠岐の海、宝富士、剣翔
11日目を終わって関脇貴景勝と平幕明生が2敗で並び、1差の3敗に関脇御嶽海の他に平幕朝乃山、隠岐の海、宝富士、剣翔が続いている。それにしても、10日目を過ぎた終盤戦で優勝争いに横綱と大関の名前がないのは極めて異例ではないだろうか。
この混戦の優勝争い。10日目が終わった時点で2敗だった御嶽海と朝乃山が11日目に揃って敗れた事で、貴景勝が一歩リードという気もしないではないが、問題は残りの対戦相手。
共に優勝経験が有り、今場所も優勝争いをリードするであろう御嶽海、貴景勝、朝乃山の3人が既にお互いの対戦を終えている。更に、朝乃山は既に三役以上との対戦を終えているが、御嶽海は今日の大関栃ノ心の他に豪栄道、更に小結遠藤戦を残し、貴景勝も大関豪栄道と小結阿炎戦が残っている。
今場所の状態では上位戦も大した難関にならないと思うだろうが、豪栄道、栃ノ心の両大関共に今場所カド番を迎えていてまだ勝ち越していない。両者とも大関の座を守る為に死に物狂いで向かって来るはず。大関の意地もあるので難敵になりそう。
更に、阿炎、遠藤共に勝ち越し目前に来ているので、勝ち越しだけでなくあわよくば二桁と向かってくるはずで、この二人も侮れない。
ズバリ、貴景勝と朝乃山の争いに勢いに乗っている明生が今日の隠岐の海を優勝争いから蹴落として、2敗を守るようならダークホースになりそう。
● 令和の大相撲を牽引する力士
平成をリードしたモンゴル勢に代わって、令和の大相撲を引っ張るのは日本人力士。あと1勝と大関返り咲きに迫った貴景勝が1歩リードしているが、やはり今場所の優勝争いに絡んだ御嶽海と朝乃山の3人が当面は角界を牽引していくだろう。
私はその中でも最も買うのは朝乃山。最近の力士は体重が増加した事もあり、ほとんど押し相撲が土俵を席巻している気がする。大型化した相撲界では以前のように相手の力を受け止めてから料理する余裕はなく、先手必勝とばかりに立ち合いからの突き押し相撲が全盛を迎えている。
しかし、突き押しだけでは勢いで大関にまでは昇進したとしても、更に上の横綱になって安定した成績を残し続けるのは難しい。歴代の横綱を見てもほとんどが上手を取っての寄り切り、投げを得意としていた。
如何に体重が増えたとしても、突き押し一本ではなく四つ相撲も取れないようでは相撲界を引っ張っていくのは難しい。その点、朝乃山は自ら攻めるだけでなく相手の突き押しを残して、まわしを引いてからの逆襲が出来る力士。大関昇進は貴景勝に譲ったとしても、横綱になって一時代を築く可能性があるのは朝乃山とみる。
続くのはとりあえず貴景勝。本人も突き押しだけで勝ち抜くのは難しいと自覚して、先々場所まわしを取る相撲も目指したが怪我を負ってまた突き押し一本に戻ったようなのは残念。ただ、この力士は突き押し相撲でも微妙な間を持っていて相手を冷静に見ながら戦う事が出来るので、ある程度安定した成績を残す事も可能。
続くのは御嶽海だが、押し相撲だけでいくのかまわしを取った攻めが出来るのかはっきりしない。徹底した相撲がないように感じる点が不満。それよりは、まだ力を蓄えている最中の若手の中から大物が現れる気がする。
いずれにしても、長かった『モンゴル時代』も終わりが見えてきたのは間違いない。今の力士達はその点恵まれているのだから、切磋琢磨して相撲界を盛り上げて欲しい。
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