テレビをつけた途端、呼び出しと行司の声がいつもより鮮明に聞こえてはきたが、それ自体がより寂しさを際立たせ、力士達の形だけの力水も相まって何か虚しさを覚えたのは私だけだろうか。
新型ウイルスにより至上初の無観客開催となった大相撲春場所。まるで序の口か序二段の取り組みかと勘違いしそうな静寂とガラ空きの観客席。
もちろん、力士達は一番一番に自分達の番付と生活がかかっているのだから勝負に徹するしかないが、やはりあのざわめき、声援、勝負がついた時のどよめきが無いのは観ているファンもイマイチ力が入らないし、素直に「寂しい」と口に出す力士もいた。
この異様な春場所を制するのは誰か?両横綱の復活はあるのか、大関獲りに挑む朝乃山や先場所活躍した德勝龍や正代の相撲は……世代交代の分岐点になるかもしれない場所を占ってみる。
● 大相撲春場所番付
東 西
白鵬 横綱 鶴竜
貴景勝 大関
朝乃山 関脇 正代
北勝富士 小結 遠藤
大栄翔 前頭筆頭 高安
隠岐の海 二枚目 德勝龍
豊山 三枚目 御嶽海
炎鵬 四枚目 阿炎
竜電 五枚目 阿武咲
妙義龍 六枚目 輝
宝富士 七枚目 玉鷲
松鳳山 八枚目 霧馬山
隆の勝 九枚目 栃ノ心
佐田の海 十枚目 栃煌山
千代大龍 十一枚目 照強
石浦 十二枚目 勢
琴奨菊 十三枚目 碧山
魁聖 十四枚目 錦木
剣翔 十五枚目 千代丸
東龍 十六枚目 志摩ノ海
明正 十七枚目 大奄美
琴ノ若 十八枚目
● 今場所の優勝争いと見所
今場所ほど優勝の行方の分からない場所は今までになかったかもしれない。最近、白鵬、鶴竜の両横綱の衰えが目立ち休場や途中休場の繰り返し。一気に世代交代が進んでもおかしくない状況。
その上、至上初となる今場所の無観客開催。両横綱はもちろんどんな大ベテランも経験した事の無い静寂の中での戦い。これが勝負にどういった影響を与えるか分からない。初日は関脇以上の上位陣が全て白星を並べる無難なスタート。
しかし、この先が全く読めない。そもそも、無観客の土俵上で力士達は集中出来るのか、それとも異常事態に感覚を狂わされて余計な事を考えてしまうのか。
常日頃、場内の雰囲気に呑み込まれて失敗する力士が稽古場と変わらないリラックス効果で大活躍を見せる場合があるかもしれない。
その反面、気力で取る力士が歓声とざわめきの無い土俵に、燃えるものがなくあっさり土俵を割ってしまうのか。そういう未知のプラスマイナスを考えると番付け通りにいくとも思えないが、とりあえず独断とひらめきで予想してみる。
ズバリ優勝は朝乃山。大関獲りがかかっているが稽古十分で落ち着きが見られ、得意の右四つになれば白鵬にも負けない自信のある安定感。さらに、つき押しの相手にも一気に持っていかれるひ弱は消えると同時に自ら攻めていく相撲も取れるのが強味。
二番手には貴景勝。つき押しの相撲だけに波に乗れば無類の強さを発揮するが、四つに組まれた場合脆さがあるが、それでもこれまでの突き押し相撲の力士と違ってがむしゃらに前に出るだけでなく、じっくり相手を見ながら取れるので安定感もある。
次に正代を挙げたい。先場所はそれまでの曖昧な相撲が消え、四つに拘らず体ごと前に出る攻めの相撲が覚醒した気がする。もちろん、一場所だけでは分からないが、今場所も余計な事を考えずに攻めに徹すれば優勝争いに加わってきそう。
もちろん、番付けからいって白鵬、鶴竜の両横綱も無視は出来ないが、両者とも序盤戦を乗り切れるかが鍵で、連敗したりすれば先場所のように途中休場になる可能性もあり、優勝は厳しいと見た。
今場所最大の焦点は朝乃山の大関獲り。優勝争いの筆頭に挙げたが、たとえ優勝が出来なくても今の力なら11勝、12勝は行ける気がする。
あとは、こんな無観客開催だけに人気者の遠藤や炎鵬の活躍に期待したい。この両力士が存在感を見せれば会場に代わってテレビ桟敷のファンの歓声で場所が盛り上がりそう。
更に、新入幕の琴ノ若。父は佐渡ヶ嶽親方で先代の琴ノ若。祖父が『猛牛』と呼ばれた第53代横綱琴櫻という角界のサラブレッド。更に、幕下には第48代横綱大鵬の孫、納谷。また、第68代横綱朝青龍の甥豊昇龍もいて、この三人が活躍すれば新型ウイルスで暗い世の中を吹き飛ばしてくれそう。
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