大相撲秋場所は中日を過ぎて予想通り照ノ富士が圧倒的強さを誇示して一人全勝。それに続くべき大関は正代が相変わらずのムラの多い相撲内容で３敗。カド番の貴景勝は先場所休場の原因となった首の痛みからか、生命線の力強い当たりが見られず早くも４敗と大関陥落の危機という体たらく。
白鵬の休場である程度予想されていたとはいえ、大関陣との実力差は余りにも大きく早くも優勝当確のランプが灯ったと言っても過言ではない状況。他の三役陣も関脇御嶽海が一人２敗を保っているものの、照ノ富士に迫る力士は皆無の状態。このまま独走を許すのか……後半戦の土俵を占ってみたい。
照ノ富士時代到来か
あの膝の故障を抱えてこの強さ。何かモンゴル出身の横綱というと鶴竜は別として、朝青龍、白鵬、日馬富士と勝つ為には荒っぽい相撲もお構い無しという印象があった。しかし、怪我から復帰後の照ノ富士を観ていると、よく解説者が口にする堂々と受けて立つ横綱相撲を連想させる。
以前は照ノ富士自身も強引で荒っぽい相撲内容だったが、怪我のせいもあるのか理詰めの相撲が増えてきた。何よりも白鵬と違うのは『勝つ為には手段を選ばず』という、張り手やエルボーを使ったかち上げ等の醜い取り口がない点。昔の横綱が取ったと言われる《がっちり受け止めて相手に力を出させて勝つ》相撲を実践しているかのような、正々堂々の照ノ富士。
もう、完全に『照ノ富士時代』と、言っても過言てはないだろう。白鵬が復帰しても先場所のような反則紛いの張り手か、エルボーでも使うしかない状況。今場所の優勝も怪我でもしない限りは照ノ富士で決まり。後は全勝優勝か否かだけの問題。もし、照ノ富士に土を付けるとしたら上手くハマった時の正代か高安しかいない。いずれにしても、優勝は照ノ富士で確定。
実力者達の意地は
こんなつまらない場所にしたのは大関をはじめとする番付上位の実力者達の責任。正代は前に圧力をかけて出られた時は強いが、相手に残された場合にポカが出て安定性に欠ける。貴景勝は首の不安で思い切り強く当たれないのが致命的。しかし、誰しも怪我や故障と付き合って戦っている。それが出来ないなら引退するしかないという強い気持ちで向かっいって欲しい。
三役陣で期待したのは関脇御嶽海と小結高安。御嶽海は正代と同じようにムラなところがある。その日によって、立ち合いから集中力に欠けたように一方的な相撲で不覚をとるケースが時々ある。高安は先場所腰痛のために途中からの出場。症状がみられないので期待していたが、初日から４連敗と波に乗り切れずに５敗。勝ち越しも危うい状況に追い込まれている。
更には、このところ一歩一歩着実に力を付けてきた新関脇明生。しかし、まだ横綱、大関と顔を合わせていない時点で、同世代のライバル達に後れを取って３勝５敗と苦しい成績。また、大器と期待されながら歯がゆい土俵が続く小結逸ノ城。一時の不振から抜け出して１３場所ぶりの三役に復帰したが、場所前にコロナウイルスに感染した事もあってか３勝５敗。
期待の若手・新星は
今、幕内力士４２人の内３０代が２０人、２０代が２２人と拮抗している。そして、その中の殆んどが２６歳以上の２０代後半か、３０代前半で占められている。力士の全盛期が２０代後半から３０歳過ぎ辺りまでと考えれば、２５歳以下の若手は大関貴景勝に同年齢の霧馬山、阿武咲の他には２３歳の琴ノ若、２２歳の豊昇龍の二人しかいない。
東幕内筆頭豊昇龍。１８７センチ１３２キロの筋肉質な体は今の力士では軽量。しかし、叔父朝青龍譲りの足腰の良さと負けん気の強さで徐々に台頭し、わずか２年半で幕内昇進。今年の夏場所初めての上位戦で大関照ノ富士、貴景勝には敗れたが朝乃山、正代に土を付ける大活躍。今場所は照ノ富士に敗れ、途中休場もあり２勝止まりだが、三役昇進も間近な若手。
１８８センチ１６５キロと現代相撲では理想的な体の琴ノ若。一度怪我で十両に落ちたが一場所で復帰。幕内下位で力を蓄えて先場所１２勝３敗で初の敢闘賞受賞。初めての上位対戦となった今場所、横綱照ノ富士に善戦し、翌日には大関正代に土を付ける殊勲。恵まれた体と柔らかい足腰で、これからのライバル豊昇龍と共に照ノ富士の牙城を崩しに向かう期待の若手。
この記事は８日目終了時点の成績で書きました。９日目に照ノ富士が大栄翔に敗れましたが、１敗の妙技龍も敗れたため単独トップは変わりません。また、５人いた２敗力士は御嶽海が敗れて３敗に後退。２敗で追うのは阿武咲、隠岐の海、妙義龍、遠藤、千代の国の平幕の５人。照ノ富士優勝は固いと思っています。
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