混戦が予想された大相撲夏場所は横綱照ノ富士が3場所全休を物ともしないで一年振りの優勝を果たした。一方、カド番大関貴景勝は13日目で勝ち越して大関の座は守ったが8勝7敗で終えた。
場所前から期待されていた4人の関脇は全員2桁勝利と存在感を示し、霧馬山は大関昇進を確実にしている。他の3人も来場所以降の大関昇進に望みを繋いだ。
一方で12勝3敗の好成績ながら三賞を見送られた朝乃山。「元大関だから13勝はして欲しい」という審判部からのコメントが出たが、相変わらず不可解な相撲協会の体質にはうんざりする。
一枚上の照ノ富士
時間前の仕切りを見ても膝を折るのも痛々し気な横綱照ノ富士。それに対して対戦相手は様子見をしているように見受けられたと思うのは私だけだろうか。捕まってしまっては、例えもろ差しになっても抱えられて決め出されるのは分かっている。それゆえ、もっと前後左右に動いて撹乱すべきなのに、遠慮でもしているように当たり障りのない戦法に終始していたように思えて残念でならない。
唯一の黒星をつけた明生のように徹底的に動き回って勝機を探れば、もっと違った結果になっていたような気がする。といっても、照ノ富士の優勝は立派の一語に尽きる。膝の手術で3場所を全休し、成績如何では引退に追い込まれる可能性もあっただけに、その精神力の強さには敬意を表する。特に、黒星を喫した9日目以降は力強さを増して、相手を圧倒する横綱相撲が多くなっていた。
やはり、組んでしまえば照ノ富士の力が一枚上なのは明らか。しかし、相撲はがっぷりになるだけが全てではないはず。その力士の体や特性を活かして突き押しに徹したり、俊敏な動きで撹乱したり、投げ技や土俵際の粘り腰で逆転と色々な戦法があるはず。久し振りに強い横綱が帰ってきて14勝1敗というハイレベルの優勝が見られた。あとは、その横綱を倒すべく一人一人が持ち味を活かして、『打倒照ノ富士』を目指して攻防のある土俵を期待したい。
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続々現れる大関候補
次々に現れる大関候補の中で、昇進基準と言われる3場所合計33勝を超してほぼ昇進が確定した霧馬山。初場所小結で11勝、春場所は関脇で12勝3敗の優勝。今場所は11勝で合計34勝なら文句無しの昇進。ただ、勝ちを意識する余りか立ち合いから変化する相撲が何番か見られた。元々、相手を圧倒する取り口は少なく技巧派タイプの力士で、以前から時々変化に頼っていた。しかし更に上の番付を目指すなら、真っ正面から圧力を掛けて寄り切るような力強い相撲も身に付けて欲しい。
霧馬山に負けずと奮闘した他の関脇陣。豊昇龍10勝、11勝、大栄翔12勝、10勝、若元春11勝、10勝と三役で2場所連続の好成績を残した。審判部長の佐渡ケ嶽親方は来場所3人共に大関を懸ける場所になると言明。名古屋場所は史上初の3人同時昇進を狙う異例な場所になりそう。ただ、来場所は1横綱、2大関がいる上に小結や前頭上位に実力者が揃い、易々とはいかない可能性大。その中で誰が実力で大関の座を勝ち取るのか興味津々な場所になりそう。
来場所以降の注目力士
優勝や大関争い以上に注目を集めたのが2年振りに幕内の土俵に帰ってきた元大関朝乃山。東前頭14枚目という位置では流石に力の差を見せ付け初日から7連勝。土俵際危ない相撲もあったが、以前より前に出る積極的な取り口が増えて充実振りを窺わせた。後半、久し振りの三役や横綱との対戦もあったが臆する事なくぶつかっていた。結局、12勝3敗の好成績で場所を終えた。来場所は本格的に上位との対戦が組まれるが、大関復帰は勿論、横綱をも視野に入れて精進して欲しい。
幕内だけでなく十両以下でも楽しみな力士が現れた今場所。十両6場所目になるが先場所11勝で今場所は14勝1敗のハイレベルの優勝、鋭い突き押しが身上の豪ノ山。その豪ノ山と同じ14勝で優勝を争い、一場所で関取昇進を果たして話題になっていた落合。更にはその落合をも凌ぐ幕下付出10枚目で今場所初土俵を踏んだ大の里。惜しくも、初日黒星スタートだったが、その後6連勝と力を見せ付けた。既に実力は幕内級とも言われるだけに、来場所以降も目が離せない存在。
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