怪我で5場所ぶりに西序二段48枚目から再スタートした元大関照ノ富士。
場所前は稽古どころかトレーニングを始めたばかりで、三段目の力士にも歯が立たなかった状態で先行きが懸念されていたが、さすがに序二段では格の違いを見せ付けて無傷の快進撃を続けて5連勝。
初日若野口をはたき込みで敗った後は、「緊張した。不思議な感覚だった」と、まだ全く相撲感も無く勝ち越し等考えていないと言っていた。
4日目の相手は同じように幕内経験がありながら膝の怪我で序二段まで番付を下げていた元幕内天風。
しかも、入門前の体験入学で尾車部屋で相撲部屋のノウハウを教えてくれた先輩力士。
小手投げで土俵外に放り投げて2連勝を飾ったが、「相撲感が全く戻っていない。まわしを取っても前に出られない」と、反省していた。
6日目の相手は相撲教習所で一緒に学んだ同期生の栄富士。
頭から当たって、196キロの巨漢をゆっくりと慎重に寄り切って3連勝。
前回の天風に続いて縁のある力士との対戦に、「そんな相手ばかりですね」と苦笑いしながら勝ち越しに王手。
勝ち越しをかけた7日目は寺尾翔。見事にすくい投げで勝って無傷の4連勝で勝ち越しを決めた。
勝ち越しは大関時代の2017年夏場所以来、11場所663日目の歓喜。
しかし、照ノ富士は何度も首をひねりながら、「自分から足を止めてしまった。ぶつかり稽古をやっていないからか押せなかったのかな」と、浮かない表情。
そして昨日の10日目の相手は16歳の大雄翔。
もろ手からの突きを何度も胸に受け、横から攻められたが冷静に対応して最後は頭を抑え付けるようにはたき込み。
「最初から長い相撲を取るつもりで胸を出して行こうと思ったが、体が付いていかなかった。稽古が出来ないでトレーニングばかりやっているので足が動かない」と、5連勝にもかかわらず連日反省の弁。
元々、今場所出場したのも勝ち負け云々より相撲を取る体を取り戻す事と、相撲感覚を戻す事が目標。
元来、長い相撲が身上の照ノ富士。
ところが、最初の相撲から5秒、8秒、7秒、14秒と連日照ノ富士にしては短めの相撲ばかり。
だから、この日は攻めるより胸を出して突きや押しを受け止め、引きやいなしにも慌てず対応してこれまで出来ていない稽古をイメージして取った。
「久しぶりに稽古をした感覚だったね」と、満足そう。
これで5連勝と優勝も見えてきたが、幕内復帰という目標のある照ノ富士にとっては序二段の優勝より出場して、相撲を取れて、感覚を取り戻す事が一番大事なのだろう。
しかし、これで幕内復帰という目標に向かって一歩踏み出せた事だけは確かだ。