５月に入った途端、スポーツ選手の引退が次々に発表された。女子卓球の銀メダリスト石川佳純、フィギュアスケート・アイスダンス『かなだい』ペア村元哉中、高橋大輔。更に驚いたのは元関脇逸ノ城。それぞれ事情や思惑のある引退だろうが、高橋以外は全て１９９３年生まれの３０歳。
競技にもよるが、最近のアスリートはトレーナーによる健康管理や指導で引退年齢が高くなってきたようにも見受けられるだけに、まだやれるのに……と思ったファンも多いはず。３組４人のそれぞれの引退事情を探ってみたい。
卓球女子・石川佳純
何の競技でもそうだが必ず先頭に立って、あるいは複数で競り合って時代を引っ張っていく選手が存在する。現在の卓球女子では強豪揃いの２２歳世代より一つ上の世代として、１０年以上にわたってトップクラスを維持してきた石川佳純。全ての卓球選手が目標とする全日本選手権シングルスで２０１０年の初優勝から、途中の３連覇を含めて最後の２０２０年大会まで計５回の優勝。女子卓球界に一時代を記した紛れもない選手の一人と言っても過言ではあるまい。
しかし、圧倒的強さを誇る中国の前に国際大会では苦杯を舐め続け、オリンピックや世界選手権では混合ダブルスで２０１７年世界選手権デュッセルドルフ大会での金メダルは有るものの、女子団体やシングルスでの優勝はなかった。２０２４パリオリンピック代表選考ポイントで５位に付けてはいるが、若手の台頭もあり苦戦必至の状況。オリンピック３大会連続出場を果たしたこの辺が潮時と判断した模様。
５月１日、自身のインスタグラムの発表では「４月の大会をもちまして現役を引退することを決めました。いつも応援してくださるファンの皆様、ありがとうございました」と引退を表明。「卓球を通じて学んだチャレンジ精神を忘れずに、いろいろなことに挑戦していきたいと思います」と締めていた。長年の経験を活かして指導者の道を期待したいが、文面からはマルチタレントの可能性もありそう。
スケート村元・高橋
フィギュアスケートといえば、日本ではハイレベルな男女シングルが脚光を浴びるが、最近はレベルアップしたペアやアイスダンスにも注目が集まっている。その中で男子フィギュアスケートのレジェンドの一人高橋大輔が村元哉中と組んだアイスダンス゛かなだい〝が５月２日引退会見。全日本選手権を制し、四大陸選手権で日本人最高の銀メダル獲得など国際大会でも実績を挙げていただけに意外な感じを受けた。
シングルで世界選手権を制し、オリンピック銅メダリストでもある高橋。膝の故障で現役引退したのは２０１４年２８歳。その後３２歳で現役復帰を果たし、２０１９年から村中とのコンビでアイスダンスの道へ。前述のように結成間もなくから好成績を残して期待されていたが、やはり古傷の右膝が限界との事。今後も゛かなだい〝としてアイスショーなどで活動し、様々な形でエンターテイメントに関わるという。現役は引退しても二人の勇姿は見られるとの事。
大相撲元関脇逸ノ城
石川にしても゛かなだい〝にしても、ある程度やり遂げての引退で本人達もファンも納得していると思う。しかし、ゴールデンウィーク後半に入った５月４日の大相撲元関脇・逸ノ城の引退発表には驚きと共に釈然としない気持ちが残った。横綱照ノ富士と同じ飛行機で来日し、高校相撲の名門鳥取城北に相撲留学した逸ノ城。高校卒業後、実業団横綱のタイトルを獲得して大相撲湊部屋に入門。幕下１５枚目格付出でデビューし幕下、十両共に２場所で通過して史上２位タイの４場所で新入幕。
その新入幕の場所で１横綱２大関を倒して１３勝２敗で【モンゴルの怪物】と騒がれた。しかし、その後は増え過ぎた２００キロ超の体重から腰椎椎間板ヘルニアに悩ませられ、好不調の波が大きく成績が安定せず十両陥落も経験。更に、相次ぐ腰痛や新型コロナウイルス感染などで休場を繰り返すなど順風満帆な土俵人生ではなかった。しかし、２０２２年名古屋場所で新入幕から４７場所にして念願の初優勝。ついに覚醒したかと今後に期待されていた。
しかし、その喜びも束の間。初の賜杯を抱いて１０ケ月足らずで寝耳に水の引退会見。理由は腰痛の悪化というが釈然としない点が多々あり、マスコミも納得していない様子が窺える。以前から酒癖の悪さや、偶発的とはいえ親方夫人への暴力などが取り沙汰されている。会見で感じたのは湊親方との埋めようもない師弟の溝。ゴシップ筋で判然としないが結婚や、年寄名跡譲渡の金に絡む噂……。幕内優勝までしながら断髪式も無く土俵を去る怪物。せめて、今後の人生に幸あれと願わずにはいられない。
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