ヤンキース田中将大が首位攻防戦でレイズ相手に圧巻の完封劇で先勝し、ゲーム差を1.5に突き放した。昨年のレイズ戦以来1年ぶりの完封は自身4度目で本拠地ヤンキースタジアムでは初めて。
更に、10三振での完封劇は野茂英雄、黒田博樹、ダルビッシュ有に続く日本人投手としては4人目となる二桁三振完封。また、ヤンキースの投手が本拠地で2安打以下の二桁三振で完封したのは、通算270勝で殿堂入りしたマイク•ムシーナ以来17年ぶりの快挙。ファンも地元メディアも歴史的完封劇と盛り上がっている。
● 試行錯誤の中の完封劇
今シーズンの田中将大は武器のスプリットの精度が上がらず苦しい投球が続いている。第2子が誕生した直後の試合になった前回メッツ戦の登板も勝ち投手にはなったものの、6回2/3を投げて5失点(自責点4)と打ち込まれ、味方打線の援護による逆転の勝利だった。
日本では右の本格派として活躍した田中だが、メジャーではどちらかというと技巧派に属する。ただ、いわゆる七色の変化球をあやつるというイメージではなく、ストレート、スライダー、スプリットの主に三種類の球種を『三種の神器』の如く操ってメジャー5年間連続二桁勝利を挙げてきた。
6月17日(日本時間18日)のレイズ戦では、今シーズン不調だったスプリットが久しぶりに威力を発揮し、更にストレートとスライダーのコントロールが上下に決まってレイズ打線を翻弄した。立ち上がりからコントロール良く3回までは一人もランナーを出さない完全ペース。4回先頭のメトウズに右前打を打たれて初ヒットを許したが、後続を断ち切った。5回も2死からアダメスに中前打を浴びたが、続くウェンドルを三塁ゴロに仕留めた。
打線も3回にルメイヒューの先制ツーランホームラン、更に5回にはメイビンがソロホームランと援護。この試合の田中には十分過ぎる得点。6回以降はノーヒットに抑え、9回2安打10奪三振1四球と二塁を踏ませない快投。
首位奪回を目論んだレイズ打線は完全に沈黙し、敵将のキャッシュ監督は、「タナカは本当に本当にタフだった。素晴らしく効率的な完封だった。タナカを称賛する。今夜はおそらく何をしてもどうしようもなかっただろう。彼は本当にキレがあった」とコメントして、正にお手上げ状態だった。
● 光る大一番の強さ
今回、レイズとの首位攻防戦で快投したように田中の持ち味の一つは大一番での強さ。高校三年生の最後の夏の甲子園こそ、斎藤佑樹を擁する早稲田実業に敗れたが、2年時には夏の甲子園と秋の明治神宮大会を制している。プロ入り後もルーキーシーズンから11勝を挙げ新人王になったが、当時まだ弱小球団だった楽天を新人らしからぬ勝負強さで度々連敗から救った。
その後、2年目の2008年こそ北京オリンピックのために途中離脱して9勝に終わったが、メジャーに移籍するまでの7年間でそれ以外の年は全て二桁勝利。
なかでも、伝説となった日本球界最後の2013年には24連勝と、負けなしでシーズンを終えている。しかも、先発した27試合全てにおいて6イニング以上で自責点3以下のクオリティスタートを記録する等凄まじい成績を残し、クライマックスシリーズと日本シリーズでは先発に抑えに、正に大車輪の活躍で胴上げ投手にもなっている。
その勝負強さはメジャーに移籍してからも健在で、これまでの5シーズン全て12勝以上を挙げ、特にポストシーズンでの強さは別格でこれまで3勝1敗、防御率は1点前後と別格のパフォーマンスを発揮している。
今シーズン優勝争いを続けているヤンキース。メジャーリーグを代表する名門球団で史上最多のワールドシリーズ優勝27回、リーグ優勝40回を誇っているが、2009年松井秀喜の大活躍でワールドシリーズを制したのを最後に、9年間ワールドシリーズはおろかリーグ優勝からも遠ざかっている。
10シーズンぶりのワールドシリーズ制覇には田中の大一番での勝負強さは不可欠。あの2009年のワールドシリーズで6割1分5厘、3本塁打と大活躍して、日本人初のワールドシリーズMVPを受賞した松井に続き、名門ヤンキースの復活を成し遂げるのは同じ日本人の田中将大になるかもしれない。
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