5月26日から6月9日まで行われた全仏オープンの後、故障回復に努めて前哨戦を全てパスしてぶっつけ本番で迎える今シーズン初めての芝コートの全英オープン。
初戦の相手はランキング113位、予選勝ち上がりのチアゴ•モンティール(ブラジル•25歳)。今シーズン初めての芝コートの上に初対戦の相手でやりづらい1回戦になったが、キレのあるストロークで相手を左右に揺さぶって、常に主導権を握ってアグレッシブなゲームでストレート勝ち。
まだ、本来の錦織には少し足りないように感じたが、約1ヶ月ぶりの実戦にしては錦織らしいテクニックも随所に垣間見られ、何よりストレートで勝ったのはスタミナ的にも2回戦以降の試合を考えるとナイスゲームと言えるだろう。
● 滑り出し好調の第1セット
全仏オープンの故障回復を優先して前哨戦の芝コートの試合に出場しないで、いきなり全英オープンに出場したので不安に思っていたが、芝コートの経験云々よりも休養優先にあたった事で体調が整えられ、キレッキレの状態に見えた。
第1サーブの成功率が70%超と安定し、それによって積極的なネットプレーも随所に見られて危なげなくポイントを重ねた。
ただ、思ったより予選勝ち上がりのモンティールがサーブもショットもレベルが高く、簡単にブレイク出来る相手ではなかった。強力なモンティールのサーブに対して鋭いリターン、前後左右に揺さぶる多彩な攻撃で第5セットのブレイクに成功し、その後リードを守って6ー4で第1ゲームを乗り切った。
● やや決め手に欠けた第2セット
第1セットからモンティールの強力なサーブが炸裂。対して錦織も安定したサーブからのネットプレー等アグレッシブなプレーで対抗し、第4セットまではお互いにキープが続いた。第5セットにモンティールの度重なるインフォースドエラーからブレイクに成功した。
このまま第1ゲーム同様に錦織が押し切ると思われたが、お互いにキープしあった第10ゲームに20本超のラリーをものにしたモンティールがその勢いで、この試合初めてのブレークに成功。そのまま第2ゲームはタイブレークに突入する。
一時は1━3とリードを許した錦織だが、ここから一気にギアを上げて6連続ポイント。タイブレークを制して何とか第2セットも連取したが、モンティールの粘り強いプレーはあったが第10セットのブレークを許した辺り、やや決め手に欠ける内容に感じた。
● 抵抗を押し切った第3セット
第3セットもお互いに安定したサービスゲームの応酬でお互いになかなかブレークチャンスを与えない展開が続き、第8ゲームまでお互いにキープしあい4━4。ここで錦織が第9ゲームのキープに成功して5━4と王手をかけた。
モンティールのサーブの第10ゲーム。モンティールのバックがアウトになって錦織が先にポイントを挙げる。モンティールがすぐに返して15━15。そこから錦織のバックハンドウィナー、更にモンティールのバックがネットにかかって錦織がマッチポイントを迎える。一度はモンティールがしのいで40━30となったが、最後はモンティールのフォアハンドがアウト。モンティールがチャレンジするも認められず錦織がセットカウント3━0のストレートで勝利。
● 今後の錦織の課題
「しっかり練習出来たので自信があって、最初から調子は良かった。2セットで危ない場面もあったが、1試合目にしてはいい試合だった」右上腕痛で前哨戦には出なかったが、そのおかげで体調は良く、休養優先の判断が正しかったようだ。
今後の課題については、「もう少し攻撃的にプレーしてもという気持ちはあるが、バランスも凄く大事。そのいい割合を見つければ芝でのプレーも良くなる」と、自信を持ったように語った。
予選からの勝ち上がりとはいえ、モンティールも強力なサーブと粘り強いストロークで、ランキング113位とは思えない相手だった。しかし、スタミナに不安がある錦織だけに敢えて言いたい。
苦しんだ第2セットは先にブレークしていただけに、第10セットをしっかりキープしてタイブレークに持ち込まれる事なく完勝して欲しかった。いつも、強敵と相まみえる準々決勝以降に備えるためにも、決めるべきところはきっちり決めてスタミナロスを防いで欲しい。
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