東京オリンピックまであと10ヶ月。これまでも色々と物議を醸してきたが、ここにきて唐突に『オリンピックの華』とも言われるマラソンのコースが、札幌に変更という可能性が出てきた。
更に、先月行われた『MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)』に賞金が出なかった事に疑問を感じた、マラソン日本記録保持者の大迫傑が新たなマラソン大会を開く事を提案。
いずれもマラソンに関した二つの出来事について私見を述べる。
● 今更、マラソンコース変更?
東京都にとっては正に『寝耳に水』の事だったろう。いや、私達一般市民にとっても「え?今更なにを」というのが真っ先に頭に浮かんだ思いだったはず。
『国際オリンピック委員会(IOC)』のバッハ会長は、世界陸上選手権ドーハ大会のマラソン競技を見て、選手の身を案じて選手ファーストで東京から札幌への会場変更を思い当たったという。
しかし、真夏の東京が暑い事は最初から分かっていたはず。しかも、アメリカの放送局の放映料をアテにして敢えて8月開催に拘ったのはIOCの方。オリンピックまで10ヶ月の段階で唐突にこんな無理難題を言い出すなんてIOCバッハ会長は無責任過ぎる。
しかも、IOCと国際陸上競技連盟でほぼ話がまとまって、大会組織委員会に連絡があり、森喜朗会長はただ鵜呑みするしかないとは森会長は何の為のトップかと言われても仕方あるまい。
その上、開催地の東京都には最後まで伏せてほぼ話がまとまった段階で連絡するとは、開催地をないがしろにしているとしか言えない。
東京都はマラソン競技のためにコースの道路に遮熱性の高い舗装をするなどして、300億円以上の経費をかけて準備してきた。それが無駄になるばかりか、新たな開催地となった札幌市ではあと10ヶ月でこれらの対策をしなければならないが、その経費はどこが負担するのか。
一見、『選手ファースト』という言葉に騙されて「開催地変更は妥当な判断。暑すぎる東京でのマラソンは無理」「まずは選手第一。誤りを認めて柔軟に変更するのは恥ずかしい事ではない」等と賛成の声も聞かれる。
その反面、「マラソンは五輪の花。それがないなんて東京五輪とは言えない」「暑いのは前から分かっている事。選手もその対策をして本番に臨む準備をしている」等と、直前にIOCが一方的に決めた事に反発や疑問の声も上がっている。
今の状況では札幌市に開催地変更で押し切られそうだが、無責任極まるバッハ会長と何の考えもなくただ唯々諾々と従う森会長等の責任と、突然の変更の過程は検証が必要だ。
● アスリートのプロ化
こちらも唐突に発信された。マラソン日本記録保持者の大迫傑が、「メディアに発信したのに全く取り上げられなかった」として、先月のMGCで選手に賞金が出なかった事に対して疑問を呈した。
「選手は名誉の為だけに走っているのではないのです。僕らは走る事でご飯を食べ、家族を養っているのです」等と、ツイッターで発信した。
これ程切実に率直に金銭問題を発信したのには驚いた。確かに、マラソンもプロを名乗る選手はいるし、高額の賞金大会があるのも知っている。しかし、オリンピック出場をかけたレースはオリンピック出場という名誉第一と思っていたからだ。
そして、この疑問から「自分や他の選手、今後のアスリートのために2021年3月辺りを目処に日本でマラソンの大会を作ります」と、結んでいる。
確かに、オリンピックにアマチュア精神が無くなり、オリンピックそのものも商業として莫大なカネが動くのは分かっていたが、選手も『オリンピック出場』という名誉だけでなく金銭面でも堂々と発信する世になったと、時代の流れを感じる。
これに対しては賛否を言うつもりはないが、東京オリンピックのゴタゴタもカネが原因だし、今やスポーツに一昔前の『純粋な金メダル至上主義』は無くなってしまったのかも……と、感慨を禁じ得ない。
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