大相撲春場所が3月14日初日を迎えた。場所直前に2名の部屋付き親方がコロナウイルスに感染し、山響部屋と尾上部屋の28力士が休場。先場所と同様に波乱のスタートになった。また、4場所連続休場中で今場所に進退を懸けるはずの横綱鶴竜が稽古中の怪我でまたもや休場。本人は現役続行を選んだが、場所後の横綱審議委員会では厳しい意見が出そう。
このところ、白鵬、鶴竜の2横綱はまともに場所を勤めた事がなく、恋々と横綱という地位にしがみつく姿勢に批判的な意見が多い。大関は2場所負け越しで陥落するが、横綱には負け越しや休場を続けてもその地位を失う制度がない。それは全力士の目標であると同時に模範ともならなけばならない横綱は、看板力士の名を汚す事が許されず自ら引退の時期を決めるべきというしきたりがあるから。両横綱とも潔さを示して欲しい。
優勝を争う力士達
横綱 白鵬
4場所連続休場で11日には36歳の誕生日を迎えた白鵬。ここ3場所は全休だっただけに相撲勘や、古傷の右膝の状態などに不安が残る。2月下旬の合同稽古には2日間参加して、幕内上位の若手を相手に60番取って急ピッチの調整をした。立ち合いで相手を惑わして自分のペースに持ち込むだろうが、まともに勝負を挑んで勝ち切る力はなく、優勝は厳しい。
大関 正代
優勝に近い力士の一人が正代。先場所も最後まで優勝争いを演じて大関の存在感を示した。昨年辺りから見違えるように体を活かした攻める相撲を見せて大関に昇進。型にはまらないところが正代の良さ。馬力で圧倒するだけでなく、懐の深さで守勢に回っても凌いで白星に結び付ける。ただ、ポカも多くあっさり土俵を割る場面も見られるが、崩れる事はなさそう。
大関 朝乃山
最も期待するのが朝乃山。このところ、コロナウイルス感染対策で出稽古が出来ないのが痛いが、右四つになれば安定感抜群。以前は押し相撲に不安があったが、立ち合いが力強くなって一気に押される心配はなくなった。素早く左の上手を取れるかが鍵を握る。優勝には連敗中の照ノ富士に勝つのが条件。怯む事なく真っ向勝負で倒して欲しい。
大関 貴景勝
先場所綱獲りから一転して角番を迎えた貴景勝。初日を見た限りでは左足首に不安はなさそうだが、守りに回った時に本当の回復具合が分かる。ただ、身長の割にはあまりにも体重増で本来の動きが出来ていなかったが、十数キロ減量してシャープになったのは好材料。本来の突き押しでよく相手を見ながらの相撲が取り切れれば、当然優勝争いに加われる。
関脇 照ノ富士
今場所の大関獲りが焦点の照ノ富士。一時序二段まで下がってからの幕内復帰と優勝には頭が下がる。ただ、目標は高く大関復帰と更にその上の番付。膝などの故障が再発しなければ大関復帰はまず堅そう。ただ、優勝となると疲れが溜まった時に痛々しさが増す後半を乗り切れるかが鍵。そのためには速い攻めで勝負を決める相撲を増やしたい。
小結 御嶽海
少し前までは大関争いの先頭を走っていた御嶽海。貴景勝、朝乃山、正代の3人に先を越された悔しさは忘れてはならない。実力的には三大関とほぼ一緒。差が付いたのはムラが多い御嶽海の精神面。上位相手には滅法強い反面、下位の力士にあっさり敗れる。器用な面もあって色々な相撲を取れるが、遮二無二攻め切る取り口を磨いてみれば道が開けそう。
その他の有力力士
このところ、すっかりトレンドになった平幕優勝。しかし、春場所に限ってはここ10年間横綱と大関だけ。まずは平幕ではないが先場所優勝の大栄翔。突き押しの威力は抜群で、波に乗れば先場所の再現もある。が、押し相撲が連続して好成績を残せるのが難しいだけにスタートが鍵。もう一人は元大関の高安。今場所は稽古も十分でこのところ悩まされてきた故障もなさそう。ムラな一面はあるがじっくり落ち着いて攻めれば実力者だけにチャンスはある。