ドーハで開かれている陸上・アジア選手権は現地時間4月22日、注目の男子100メートル決勝が行われて桐生祥秀(23=日本生命)が10秒10(追い風1・5メートル)で、日本人選手として初めてアジア選手権で優勝した。
今年の桐生は調子が良い。オーストラリアの初戦で昨年一度も出せなかった10秒0台となる10秒08を計時していた。
今回のアジア選手権も前日の予選は10秒29(追い風0・9メートル)で1着。2時間半前の準決勝は10秒12(追い風1・4メートル)で全体トップのタイムで決勝進出を決めている。
「桐生が一番速い」
東洋大学から指導している土江寛裕コーチは明言する。
京都・洛南高校3年の2013年には10秒01をマークしていきなり脚光を浴びた。翌2014年には早くも日本選手権を制覇している。
2016年には再び10秒01を計時して、日本最初の9秒台は桐生しかいないと期待されていた。その期待を裏切る事なく2017年には待望の9秒台となる9秒98を出して日本中を熱狂させた。が、桐生には速さと同時に脆さとムラがあるのも事実。
早い時期から期待されながら、日本選手権優勝は2014年の一度だけ。世界選手権やオリンピックでは決勝どころか準決勝にも進めず予選落ちを繰り返している。
自らに足りないのは勝負強さだと分かっていた。
競り合いの時に硬くなったり、調子を合わせきれなかったりする。
初めてのオリンピックだった2016年リオデジャネイロ大会で、100メートルの日本勢の中でただ一人予選落ちした時にパワー不足を痛感し、好きでなかった筋力トレーニングを本格的に始める。
昨年からはがむしゃらな走りから、集中して冷静にレースの組み立てを考える走りに変えたそうだ。
独り暮らしを始めた社会人一年目の昨シーズンはコンビニ弁当が多かったが、今は自炊中心にして今シーズン前の時点で昨年より体脂肪が少ないという。
更に、これまで取り組んだ事のなかったメンタルトレーニングも始めた。
今シーズン初戦のオーストラリアで10秒08で走った時は、2着とタイム差が無かったが競り勝っている。
「日本最速の男が桐生なら、日本最強の男は山縣亮太」と、私的には感じている。
昨年、一度も日本選手に先を譲る事のなかった山縣が、9秒台どころか9秒8台を意識してトレーニングに励んでいる。
山縣は最強であると同時に最速も目指している。
桐生は最速と同時に最強にも照準を合わせたという事だろう。
この二人を中心に日本短距離界が回っていく事は間違いないだろう。
しかし、【最速】、【最強】共に一人しかいないからこそ【最速】、【最強】と言われる所以であろう。
山縣、桐生のどちらか、いや出来うるなら二人揃って東京オリンピック100メートル決勝のスタート地点に立つ事を期待して止まない。
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