いつもの場所以上に綱がテーマになる大相撲初場所
綱への威信を掛けて3場所振りの出場へ踏み切った照ノ富士
綱取りへ向けて一歩も譲らない構えの琴桜と豊昇龍
新大関の場所を終え、綱取りへスタートする大の里
今場所の優勝と綱を巡る鬩ぎ合いの4人のリポート
進退と再起を掛けて照ノ富士
この2年間で3回の優勝を積み上げて目標としていた2桁10度目の優勝を果たした横綱照ノ富士。しかし、両膝の故障などを抱えて満身創痍の中、それ以外の9場所は全休か途中休場に終わっている。
それでも、他の力士との力の差は歴然で千秋楽まで取り切った場所は全て賜杯を抱いている。が、若い三大関が頭角を表した昨今は当然周囲の見方も変わってくる。進退を掛けるとは明言してはいないが、出るからには結果を求められる。
場所前の稽古で取り組みを行ったのは横綱審議委員会の総見と、その後1、2日程と調整の遅れは隠せない。初日は不戦敗以外に一度も負けた事のない小結若隆景の肩透かしにばったり。前半黒星が続くようだと厳しくなるので、2日目の隆の勝戦の勝敗と相撲内容に注目したい。
祖父の座へ上り詰めるか琴桜
昨年の九州場所で大関在位5場所目にして、念願の初優勝を手にした大関琴桜。3日目土をつけられた後、12連勝と崩れなかったのは実力の証し。大関同士で迎えた相星決戦も終始落ち着きはらって難敵を退けた。
15日間の相撲もどっしりと落ち着いて、多少相手に攻められても慌てず、最後に自分の形に持ち込んでいく。攻めが遅いという外野評もあるが、攻めだけでは墓穴に嵌まる。攻守一体の今の相撲が理想的。
先場所後、初優勝の行事等で慌ただしい状況が続き稽古不足が懸念される。稽古総見ではライバルの大関に完敗。しかし、そこから修正して臨む本場所。初日は難敵の隆の勝相手に手こずったが白星。慌てず騒がずマイペースで綱取りを目指す。
雪辱を果たして綱取り豊昇龍
先場所、千秋楽の相星決戦で敗れて大関昇進後の初めての優勝を逃した豊昇龍。ライバルの琴桜が祖父との夢なら、こちらは叔父の朝青龍に続く横綱を目指す。大型化した大相撲で軽量の部に入る体で、抜群の足腰の良さで大関まで上がってきた豊昇龍。
しかし、その足腰の良さが災いして強引かつ、投げに拘る取り口が多く安定感を欠いていた。また、軽量を突かれて押し相撲に一気に持っていかれる不安もあった。しかし、先場所からガラリと一変して一気に前に出る相撲に変身。
それはそれで墓穴を掘る可能性も持ち合わせているが、粘り強い足腰で変化技にも対応出来そう。場所前はその積極的な相撲を更に磨いて、優勝しての横綱昇進を目指す。初日の相撲も圧勝し、一気に波に乗って綱取りを引き寄せられるか。
虎視眈々と再スタート大の里
綱取りを目指す琴桜、豊昇龍の両大関の陰に隠れたような今場所の大の里。しかし、体調に心配はなく元気いっぱい。ただデビュー以来、余りにも脚光を浴びて来たのが一段落しただけ。逆にこんな時こそ怖い存在に間違いない。
先場所は相星決戦の両大関に霞んだ形になったが、新大関故の場所前の行事などでの疲れや稽古不足が原因。中には、取り口を覚えられたとか、勢いが止まったという声も聞かれるがまだ角界入りして11場所目。伸び代は十分ある。
初日は伏兵の翔猿の引き落としに土を着けられたが、気楽に取れる今場所は優勝争いに割って入る。持ち前の破壊力を活かした突き押しと右四つに加えて、もろ差しの相撲も研究中。引き出しを増やして今場所はもちろん、この先の相撲界をリードしていく。