
この週末に盛り上がったのは陸上の日本選手権
トラック、フィールドに男女のスター選手集結
色々な種目があって、人それぞれの好みがある
今回はその中で日本最速の男を決める男子100メートルのリポート
5年ぶりの戴冠に・桐生祥秀
洛南高校時代から注目を集め、3年時の織田記念で10秒01をマークし、一躍スターダムに駆け上がった桐生祥秀。東洋大学へ進学し、1年時に日本選手権初優勝を果たした。度々、怪我に見舞われるが日本人最初の9秒台を期待される一人となった。
リオデジャネイロ五輪では400mリレーで銀メダル獲得。そして、最終学年の2017年9月9日、福井で行われた日本学生陸上競技対抗選手権大会の男子100m決勝で、追い風1.8mの好コンディションの中、9秒98を記録。
ついに、日本人最初の9秒台の男の称号を得た。しかし、当時最速の男と言われていた山縣亮太の後塵を拝し、更には世界クラスと言われるサニブラウン・ハキームの台頭で、桐生の影は薄くなるばかり。
しかし、今年は年初より調子がよく、怪我に悩まされる山縣やサニブラウンを尻目に好成績を残してきた。7月5日、日本選手権男子100m決勝で5年ぶり3回目の優勝。記録は10秒28と奮わず世界選手権代表は厳しいが、涙の復活を果たした。
日本最速の男散る・山縣亮太
桐生より3学年上の山縣亮太。高校時代から国体や世界ユース等で活躍し、慶応大学へ進学。2年時のロンドン五輪に出場し、10秒07の自己新で準決勝進出。翌年は、当時最速高校生として注目された桐生に圧勝して、日本選手権初制覇。
しかし、肉離れや腰痛などの怪我で悩まされる事も多く、2014の日本選手権は桐生に敗れて連覇はならず。翌年、慶応大学卒業後にセイコーホールディングスに入社したが、その年は腰痛でほぼ棒に振ってしまう。
2016年にはリオデジャネイロ五輪で再び自己新を更新しての準決勝進出。無敵を誇ったのは2018年。5年ぶりの日本選手権制覇をはじめ、10秒00をマークするなど19レース全てで日本選手には無敗。
しかし、2019年には肺気胸で戦線離脱。復帰した2021年6月6日、布勢スプリントで自身初となる9秒台、9秒95の日本新記録樹立。三大会連続のオリンピック出場を果たした。しかし、2022年右膝の手術でまたしても戦線離脱。
本格的に復帰の今年は春先に骨折。ほぼ、ぶっつけ本番の今大会。桐生と同組の準決勝で6着敗退。世界選手権に懸けていただけに進退が気に掛かったが、「自分の出られる試合で、世界陸上に出る選手に負けないように頑張る」と、前を向いた。
予選落ちとは…サニブラウン
山縣、桐生が故障に悩まされている間に、日本選手としては異次元の速さで台頭してきたのがサニブラウン・ハキーム。サッカー経験のあるガーナ人の父と、インターハイに短距離で出場した日本人の母を両親に持つアスリート一家に生まれる。
注目を集めたのは城西大学附属高校1年時。インターハイ男子200mでいきなり準優勝。国体(少年B)では100m10秒45で優勝。2015年、高校2年で日本選手権100m、200m共に2着。世界陸上200mで準決勝進出。
2017年、フロリダ大学に進学して練習拠点もアメリカに移す。その前に日本選手権100m、200mの2冠。世界陸上200mで史上最年少での決勝進出。2021年東京五輪は200mで予選敗退。そして、翌年の世界陸上100m決勝進出。
更に、2024年パリ五輪では準決勝9秒96の自己新をマークしながらも決勝進出はならなかった。今年は春先から調子が上がらなかった上に、今大会直前に右股関節骨挫傷の最悪のコンディションで予選敗退。世界陸上での復活を目指す。
まさかのフライング柳田大輝
日本のエース達が故障や不調で苦しむ中、台頭してきたのが柳田大輝。本来は走り幅跳びの選手で高校1年でインターハイ4位。国体(少年B)で優勝と輝かしい実績を誇る。
しかし、新型コロナウイルス禍でレースが減り、練習の一環として走っていた100mのタイムが急上昇。2年時の2020年日本選手権で7位入賞。その後、桐生の卒業した東洋大学へ進学。
2022年日本選手権100mで3位入賞し、世界陸上400mリレーの代表に選ばれる。翌2023年には日本選手権準優勝と確実にステップアップ。更にアジア選手権で10秒02の自己ベストで初優勝。
今年は更に加速し、関東インカレで追い風参考ながら9秒95をマーク。セイコー・ゴールデングランプリで元世界選手権覇者のコールマン(アメリカ)に競り勝って優勝。絶好調で初制覇を目指して臨んだ今大会。まさかのフライングで予選敗退。
何のスポーツでも故障やアクシデントは付き物。日本選手最強と言われ、日本記録保持者の山縣は再三の怪我に悩まされる。日本人初の9秒台の桐生は一時の輝きを失い。異次元と言われたサニブラウンさえも故障には勝てず。絶好調の柳田はまさかのフライング。
しかし、それでも本人の気力が続く限りは再起は可能。33歳になった山縣亮太、一時の不調から立ち直った桐生祥秀、世界陸上での復活を期すサニブラウン・ハキーム。そして、まだ21歳の失意の柳田大輝。お互いに絶好調での対決を目にしてみたいものだ。