
東京で開催される2025世界陸上
その前半のハイライト男子100m
代表はほぼ決まりつつあるが、新旧入り混じった競争激化のリポ
日本最速の男・山縣亮太
慶應大在学中から次世代のエース候補と言われオリンピックや世界陸上にも日本代表に選出されてきた。2年時にはロンドン五輪100mで準決勝進出。3年時には日本選手権初制覇など、陸上男子短距離界を引っ張ってきた。
何度も日本人初の100m9秒台を期待され、そのチャンスもあったが何故か風に見放されて届かなかった。また、腰痛をはじめ太股やハムストリングなどの下半身の故障にも見舞われて、その都度復活の繰り返し。
セイコーホールディングスに入社し、社会人3年目となった2017年から翌18年にかけては山縣の絶頂期。自己ベストの10秒00を記録し、17年後半から18年は日本選手権をはじめ数々のタイトルを獲得。日本勢相手に25レース無敗を誇った。
そして、2021年布勢スプリントで9秒95の日本新記録を樹立。同年の東京五輪で選手団主将を拝命。しかし、その後は右膝手術などの故障に悩まされ低迷。今年から本格的に復帰し、久し振りの10秒0台をマーク。来年以降も現役を続けると表明。33歳で更なる高みを目指す。
現役最強・サニブラウン
山縣が日本最速なら、現在最強といえるのがサニブラウン・ハキーム。東京城西高校2年時の2015年日本選手権で100m、200m共に2着と早くから開花。2017年からはフロリダ大に進学し、拠点をアメリカに移すと表明。
2017年、日本選手権100m、200m2冠。世界陸上100m準決勝進出、200mは史上最年少で決勝進出を果たし7位入賞。2019年5月にはアメリカの競技で日本人2人目の9秒台となる9秒99。更に6月に9秒97の日本新記録を樹立。
しかし、そんなサニブラウンにも受難の時が訪れる。2020、2021年共にスランプ気味で東京五輪代表にも選出されなかった。そして、再び脚光を浴びた2022年。日本選手権100mを制し、代表に選出された世界陸上100mで日本人初の決勝進出、7位入賞。
翌2024年にはパリ五輪準決勝で自己ベスト9秒96をマーク。しかし、ハイレベルな大会で決勝進出はならず。そして、今年は故障が続き満足なレースが出来ず、日本選手権はまさかの予選落ち。しかし、前年の9秒96で世界陸上には出場の模様。復活なるか注目してみたい。
日本初9秒台・桐生祥秀
山縣、サニブラウンに勝るとも劣らないネームバリューの持ち主が日本人最初の9秒台の桐生祥秀。その桐生が一躍注目の的となったのは2013年の織田記念。高三になったばかりの17歳がいきなり10秒01の日本歴代2位のタイムをマーク。
翌年、東洋大に入学した桐生。日本選手権100m初優勝、世界ジュニア選手権銅メダル等活躍。そこからは3歳上の山縣のライバルとして注目され、どちらが10秒を切れるかに関心が集まっていく。そして、山縣が全盛を誇った2017年9月、日本学生陸上対抗で9秒98を樹立。
【日本初の9秒台スプリンター】となった桐生。しかし、山縣同様に怪我などにも悩まされ、スランプに陥っていく。日本選手として誰もが狙う東京五輪。その代表選考会となる2021年日本選手権は、まさかの5着で100mの代表を逃す。
その後はライバル山縣同様に活躍の場面も少なく、桐生も終わったかとも思われた。しかし、今年は5年ぶりの日本選手権優勝。更に、8月3日の富士山麓ワールドトライアルで9秒99と、8年ぶりの9秒台。五輪で果たせなかった夢を同じ東京の世界陸上で果たすのか、桐生に注目。
急成長22歳・柳田大輝
東洋大学では桐生より8年後輩になる柳田大輝。ここ数年、各種大会で活躍して名を揚げていたのは知っていた。2020年日本選手権では高二で決勝進出。2022年には同大会で3位入賞し、世界陸上400mリレー代表に選出。翌年は更に順位を上げて2位。
しかし、最も驚かされたのは今年のセイコーゴールデングランプリ。自己ベスト9秒93のクリスチャン・ミラー、世界歴代6位の9秒76のクリスチャン・コールマンを抑えて優勝。テレビで観ていたが信じられなかった。
その好調を維持して期待された日本選手権は、まさかのフライングで失格。と思ったら、8月16日のアスリートナイトゲームズ福井の予選で追い風参考(3.3メートル)で9秒92。更に決勝では10秒00の自己ベスト。
なにをやるか分からないはちゃめちゃなところがあるが、今最も勢いのあるスプリンター。まだ22歳になったばかりで、伸び代は一番。世界陸上の個人種目の出場は逃したが、2028ロサンゼルス五輪では目が離せない存在になりそう。