正に圧勝。力の差をまざまざと見せ付けた日本シリーズ第1戦、第2戦のソフトバンクの強さ。私的には第1戦が鍵を握ると思っていた。率直に言って投打ともにソフトバンクの戦力が勝るとみていただけに、千賀滉大と菅野智之という両エースが投げ合う初戦で菅野が圧巻のピッチングで投げ勝って、やっと五分五分になると考えていた。
しかし、その希望的な予想も千賀の圧倒的な力の前に7回3安打に抑えられ、チャンスらしい機会もなく余裕綽々でマウンドを下りるのを俯いて見送るほかなかった。逆に菅野はシーズン前半のような無敵なピッチングが影を潜め、特に積極的なバッティングを見せた栗原陵矢一人に2ランホームラン、2点二塁打とことごとくタイミングを合わせられて撃沈してしまった。
ソフトバンクの4連勝か?
とにかく、日本シリーズに滅法強いソフトバンク。ここ10年間でリーグ優勝5回という数字も立派だが、プレーオフ、日本シリーズという一発勝負に無敵な力を発揮している。日本シリーズは10年間に6回出場して全て制覇し、2017年から3連覇中。工藤公康監督になってからは5年間で4回の日本一で、まだシリーズ負けなし。
2018年の対広島第3戦から10連勝を記録中のソフトバンク。今季9勝2敗と安定感抜群の東浜巨の日本シリーズ離脱は痛いが、第3戦には公式戦は8月下旬からの先発起用と出遅れながら6勝を稼いだサウスポーのムーア。更には8勝1敗と相変わらずの成績を残したベテラン和田毅が控えている。
連勝した事でローテーションに余裕が生まれ、エース千賀は余裕を持って中6日の第6戦に向けて調整が出来る。また、第2戦を13ー2と大勝した事により、第1戦に登板したモイネロー森唯斗という勝利の方程式コンビを休ませる事も出来た。中継ぎ要員の嘉弥真新也、高橋礼、岩嵜翔なども第2戦で無難に試運転を済ませ、投手陣に隙は見当たらない。
強力打線も活発で第1戦8安打5打点、第2戦は15安打10打点13得点と手が付けられない状態。今シリーズの主役に踊り出た栗原は7安打4打点.875と乗りに乗っている。2戦連続2安打の4番グラシアルに、第2戦で満塁ホームラン6打点のデスパイネ。主軸の柳田にも当たりが出て負ける要素が見当たらない。
巨人の巻き返しはあるか?
巨人に勝機はあるのか。ネットでは『ロッテより弱い』という声も聞こえてくるが、偶然とはいえ1989年近鉄との日本シリーズで巨人が初戦から3連敗を喫した時、近鉄の選手が『(最下位だった)ロッテよりも弱い』と発言したという。その時、監督だった藤田元司に奮起を促された巨人は4連勝して、大逆転優勝を果たした。
しかし、初戦、第2戦の戦いぶりをみていると、完全にソフトバンクに呑まれている気がする。菅野は何とか6回もったが、第2戦の先発今村信貴は2回もたずに3失点でKO。中継ぎ投手も第1戦こそ何とか踏ん張ったが、第2戦は出てくる投手が軒並み打たれて総崩れ。第3戦先発のサンチェスが頼りだが、先に点を取られない事が肝心。先取点を与えたらソフトバンクに一気に流れが行ってしまう気がする。
打撃面でも2試合でわずか9安打の巨人。2戦ともに複数安打を放つ選手もなく、勢いを付けられない。第1戦、第2戦と安打を放っているのは坂本勇人とウィーラーだけ。ソフトバンク先発は190センチの大型左腕ムーアだけに、好調の兆しが見られる坂本とウィーラーの右打者の爆発と、やはり右の岡本和真の奮起にかけるしかない。
そもそも、敢えてセリーグの本拠地でも指名打者制を用いる提案をした、原辰徳監督にも疑問を感じる。「勝ち負けより面白い野球」みたいな発言内容だったようだが、王者ソフトバンクを相手に相手有利な指名打者制で戦う事自体、普通は考えられない。指名打者に起用したデスパイネと亀井義行の差を考えれば、自ら不利な条件を選ぶなんて愚策としか言えない。
また、日本シリーズはセリーグ、パリーグの本拠地で用いられている制度で対戦すべきだろう。ただ、面白さを理由に変えていいものとは思えない。来年、別のチームが日本シリーズに参戦した場合、今年と同様に全ての試合で指名打者制を使わなければならないのか……、という迷いを生じられる場合もあり得る。原監督には深い反省を求めたい。
最後に、コロナウィルス感染拡大に揺れる日本において、規制されているとはいえ観客動員をしての日本シリーズ。こんな状況時に戦える喜びを力に変えて、両チームともに、球場観戦者だけでなくテレビで楽しむ人達に勇気を与える好試合を見せて欲しい。