20年振りという世界最強カナリア軍団の来日。世界ランキング1位のブラジル対23位の日本。大相撲でいえば横綱と前頭中位ぐらいの取組といったところだろうか。これまでの両国の対戦成績はブラジルの10勝2分だから全く歯が立たない相手と言ってもいいだろう。
ネイマールを筆頭にヴィニシウス、カゼミーロ、フレッジ……これでもかというようにビッククラブ所属の選手が発表される度に、新国立競技場に詰めかけた最多63638人の歓声が響き渡る。どちらがホームか分からない程のスター軍団ブラジル選手達への声援の中で行われた、キリンチャレンジカップ日本ーブラジル戦のレポート。
日本ーブラジル代表選手
ブラジル
監督 チッチ
GK
アリソン(リヴァプール)
ウェヴェルトン(パルメイラス)
エデルソン(マンチェスター・C)
DF
アウヴェス(バルセロナ)
ダニーロ(ユヴェントス)
サンドロ(ユヴェントス)
テレス(マンチェスター・U)
アラーナ(アトレチコ)
ミリトン(R・マドリード)
マガリャインス(アーセナル)
マルキーニョス(PSG)
シウバ(チェルシー)
MF
ギマランイス(ニューカッスル)
カゼミーロ(R・マドリード)
ダニーロ(パルメイラス)
ファビーニョ(リヴァプール)
フレッジ(マンチェスター・U)
パケタ(リヨン)
コウチーニョ(アストン・ヴィラ)
FW
ジェズス(マンチェスター・C)
マルティネッリ(アーセナル)
クーニャ(A・マドリード)
ネイマール(PSG)
ハフィーニャ(リーズ)
リシャルリソン(エヴァートン)
ロドリゴ(R・マドリード)
ヴィニシウス(R・マドリード)
日本
監督 森安一
GK
川島永嗣(RCストラスブール)
権田修一(清水)
ダニエル(シントトロイデン)
大迫敬介(広島)
DF
長友佑都(東京)
吉田麻也(サンプドリア)
谷口彰悟(川崎)
山根視来(川崎)
板倉滉(シャルケ)
中山雄大(PECズヴォレ)
富安健洋(アーセナル)
伊藤洋輝(シュツットガルト)
菅原由勢(アルクマール)
MF・FW
原口元気(ウニオン・ベルリン)
柴崎岳(レガネス)
遠藤航(シュツットガルト)
伊東純也(ヘンク)
浅野拓磨(ボーフム)
南野拓実(リバプール)
古橋亨梧(セルティック)
守田英正(サンタ・クララ)
鎌田大地(A・フランクフルト)
三笘薫(U・サンジロワーズ)
前田大然(セルティック)
堂安律(アイントホーフェン)
上田綺世(鹿島)
田中碧(デュッセルドルフ)
久保建英(マジョルカ)
赤は先発メンバー
猛攻に耐えた前半45分
いきなり、ポスト直撃のシュートで魅せたカナリア軍団。そこからは猛攻に次ぐ猛攻。実力差は如何ともし難く日本陣営での攻防が続き、サムライブルーはただ自陣で防ぎ耐えるだけ。時々、ボールを奪ってカウンターを仕掛けるが、すぐにまた自陣に攻め込まれる繰り返し。ネイマールの次元の違うテクニック、ヴィニシウスの驚異的な突破力、更にはハフィーニャのセットプレー……、世界一の攻撃を日本はよく防いだというしかない。
フレッジのミドルシュート、ハフィーニャが抜け出してのシュート、ネイマールの鋭い右足のシュート。嵩に掛かってのブラジルの猛攻をゴールキーパーの権田が次々と手で足で弾いてゴールを割らせない。その間に日本もコーナーキックなどで反撃を見せるが殆んど枠をとらえられない。とにかく、圧倒的劣勢の日本は守り抜いてワンチャンスをものにするしか勝機はない。
しかし、世界一の攻撃力を誇るカナリア軍団も雨のせいか、韓国戦の疲れが残っているのか決定打が出ない。思いなしかネイマールも幾分精彩を欠いているようにも見える。そのネイマールが前半終了間際の42分、パケタのパスを受け、ペナルティーエリア内からのシュートを打つが、権田がセーブ。日本のシュートが2、3本に対して15、6本放つが得点にならないブラジル。ある意味、日本のペースとも言えなくないムードの中、前半終了。
痛恨のPK…後半45分
見た目には8―2か7―3の割合でブラジルが圧倒しているが、得点は0―0。日本は原口から鎌田に代えて後半スタート。ブラジルは交代無しで臨む。先手は日本。5分ペナルティーエリアの外から古橋のシュート。相手ディフェンダーに当たってコーナーキックを得るが得点には結び付かない。13分には右サイドバックの長友が抜け出して、ゴール前にクロスボールを上げるが田中のシュートが相手に当たってしまう。後半に入って日本がペースを掴み掛けているようにも見え、金星の期待が高まってくる。
お互いに数人ずつ選手交代を重ねて後半も中盤に差し掛かっていく。この間ネイマールは日本のマークに遭いながらも、2本、3本とゴールを狙うが固い日本の守備に阻まれる。32分、日本はペナルティーエリア内で遠藤が相手選手と接触してペナルティーキックを与えてしまう。このチャンスにネイマールが冷静に権田の動きを見定め、ゴール左隅に決めてブラジルがついに先取点を奪った。その後、お互いに決定的なチャンスはなく1ー0のままホイッスル。
この一戦に対しては惜敗、善戦との評価の一方で、「日本は極端に守備的で、19ものファウルを犯してブラジルの猛攻を凌いだ」という声も聞かれた。確かに、1ー0で終わったがシュート数もボール支配率もブラジルが圧倒。ドイツやスペインと向き合うW杯への光明も見えたという論評もある。しかし、ブラジル戦のような戦い方では大敗はないが、勝ち点も奪えないのも事実。W杯を勝ち抜くに足りないのは攻撃力に他ならない事だけは明確になった一戦だった。