横綱稀勢の里が今日2019年1月16日引退を表明しました。
引退会見ではファンや関係者に感謝を述べると共に、自分の土俵人生に悔いはないと言い切った。
しかし、何度も何度も涙を拭う姿からは一点の曇りもなくやり切った末の引退とは窺えない無念の表情も垣間見えた。
唯一人で全盛のモンゴル勢に立ち向かってははね返される孤軍奮闘の末、30歳になってやっと優勝と横綱の地位を掴んだのは丁度2年前の初場所。
未だに、二場所連続優勝もしていないのに横綱にしたのは日本人横綱が欲しい相撲協会と横綱審議委員会の思惑で、もう一場所見るべきだったと言う人もいますが、私は直前の成績からいって昇進は間違っていないと思っています。
しかし、武骨で一途な真っ向勝負の求道者に神様は新横綱優勝という最後の栄光と引き換えに、左大胸筋という稀勢の里最大の武器に支障をきたす部位に大怪我を負わせました。
それまで15年に及ぶキャリアで休場は一日だけという稀勢の里は、引退会見でも言ったように絶対に逃げないが信条。
完治しないままに出場しては途中休場を繰り返し、自らを追い詰めてしまいました。
結果論になりますが、劇的な新横綱逆転優勝の後に2場所位休場して完治させていればこんな結末にはならなかったのかもしれません。
しかし、あの時仮に休んでいたとしても怪我する前の状態に完全に戻れたかは誰にも分からない。
強行出場こそが稀勢の里らしさとも言えます。
結局、稀勢の里は横綱在位12場所中皆勤はたった2場所。勝率も5割丁度、その他連敗など数々の不名誉記録を残して土俵を去る事になりました。
現在は白鵬、鶴竜の2横綱も全盛期を過ぎている上にモンゴル勢もすぐに横綱大関を狙えるような強い力士はいません。
このまま世代交代が進んで近い内に日本人横綱、大関が次々と現れるでしょう。
しかし、たとえ記録的には期待通りになりませんでしたが、真っ向勝負でモンゴル勢に挑んだ稀勢の里ほど記憶に残る横綱大関は当分現れないでしょう。