綱がキーワードになる初場所は悪い方に出てしまった感じ
横綱照ノ富士は4日目に2敗し6日目引退を表明
綱取りを目指した琴桜は、まさかの5連敗で失速
序盤戦は好調だった豊昇龍も中日で2敗の黄信号
好成績が多い平幕の優勝の可能性も出てきた初場所リポート
不屈の横綱照ノ富士引退
不屈の横綱照ノ富士が初場所6日目に現役引退を表明。初日の若隆景戦で敗れた後、師匠の伊勢ケ浜親方に「もう一回負けたら引退したい」と告げていたというから覚悟の引退と言えよう。
本場所での相撲で2勝はしたが、負けた2番も含めた4戦で以前の照ノ富士らしい豪快な相撲はなく、早晩辞めるだろうという予感はあった。悔いはないと言い切ったように、満身創痍の状態でのこの2、3年は横綱の責任だけで務めていたのだろう。
正に型破りな横綱だったと言えよう。初土俵から2年足らずで部屋は閉鎖。伊勢ケ浜部屋に移籍して頭角を現し、23歳で大関昇進。が、2年後怪我などで陥落。両膝手術などで序二段まで番付を落とす。そこから2年で大関復帰、横綱昇進と怒涛の進撃。
白鵬引退後の大相撲を一人横綱として支え、優勝も10回を数える活躍。しかし、人工関節を入れなければならない程の膝の他に糖尿病なども悪化し15日間の土俵も勤められない程の状態。次の横綱を待望していたが、誕生を見る前に無念の引退となってしまった。
綱取り消滅?2人の大関
照ノ富士が綱取りを期待していた大関の内の一人琴桜。安定感があり先場所は序盤の一敗の後、12連勝の14勝1敗での初賜杯。攻守共に磐石の相撲ぶりから本命視されたが初日こそ辛うじて白星だったが、2日目からまさかの5連敗で序盤で綱取り失敗。
先場所の初優勝後の多忙な日程で、場所前から調整不足が懸念されていたが力強さに欠ける相撲ぶり。攻守両用の相撲で安定感が売りだが守勢一方の内容。粘りも失われ、攻めても上体が高く相手に圧力が伝わらない。このまま大関で終わってしまうのか来場所が正念場になる。
先場所は相星決戦で琴桜に屈した豊昇龍。これまでの足腰の良さを活かした投げ、土俵際の粘りからの逆転の相撲を一転して速い攻めに転換。今場所は更にその相撲に磨きがかかり、立ち合い一気の突き押しが見られ不調の琴桜を尻目に好スタート。
他の横綱、大関陣が黒星を重ねる中、優勝戦線を引っ張っていくと見られていた。しかし、大きな相手を攻めあぐね、動きが止まった時の脆さが表れ2敗。全勝、1敗は平幕力士だけだが、例え優勝しても12勝では疑問符が付く。残り全てを勝ち切る力があるか見守りたい。
優勝争いは平幕中心か?
中日を終えて全勝は前頭14枚目の金峰山だけ。以前から力強い相撲で注視していたが、押し相撲に致命的ともいえる首の故障で十両落ち。幕内に復帰した今場所は頭で当たらなくても両手突きからの攻めが奏効。ただ、これから組まれる上位戦に圧力が通用するかが鍵になる。
1敗はやはり平幕の千代翔馬と尊富士。千代翔馬も故障が癒えて活躍しているが、注目は尊富士。新入幕優勝という派手な幕内デビューを果たしたが、右足負傷で十両陥落を味わい先場所幕内復帰。圧倒的なスピードの攻めで1敗を堅持。上位に通じるか注目したい。
2敗には優勝経験者の豊昇龍、大栄翔、玉鷲。そして突き押しの威力が増した王鵬。2差はあるが実力から豊昇龍が上だが、まだまだ上位の強敵との取り組みが残る。仮に4敗までの争いになった場合は、上記の7人に大関大の里、調子が上がってきた霧島も優勝争いに加わるか。