
今年の締めくくりの大相撲九州場所。横綱は明暗が分かれた
先場所同様に最後は横綱同士の優勝争いに持ち込まれるのか
大の里時代が当来するのか、それとも両雄並び立つのか。大相撲九州場所を占う
大の里時代当来するのか?
初日、対戦成績で拮抗していた小結高安を相手に快勝した横綱大の里。高安の強い当たりを受け止めて、体を密着して危なげなく寄り切る盤石の相撲で初日白星。先場所千秋楽で分の悪い豊昇龍に本割で敗れながら、優勝決定戦で振り切って横綱としての初優勝。
普通なら苦手な相手に敗れて優勝決定戦に持ち込まれたなら動揺するはず。しかし、師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)のアドバイス通りに冷静な相撲で雪辱を果たして優勝。これまでもスピード出世で、その強さは誰もが認めていたが、この一戦で精神的にも更に一皮むけた感じ。
大の里の強さは相撲内容だけでなく、怪我や故障しない体にもある。師匠が己の師匠である元横綱隆の里から授かった「前に出る相撲は怪我や故障のリスクが低い」との教え。それを実践して横綱になるまで一場所しか休場のなかった師匠。その教え通りに前に出る相撲に磨きをかけた大の里。
攻められた時の相撲に若干不安はあるが、まだ25歳、初土俵から2年半。まだまだ伸び代は十分ある。今場所連覇して、これまで9人しかいない年間4回の優勝をはたし、大の里時代への足掛かりとするのか。今場所も大の里から目が離せない。
巻き返しなるのか豊昇龍?
初日は鋭い出足の伯桜鵬に当たり負けして一方的に寄り倒された横綱豊昇龍。鋭い立ち合いは豊昇龍の持ち味でもあるが、軽量だけに相手に先手を取られた時の不安は消えない。ただ、闇雲に出るだけでは変化やいなしに対応出来ないリスクがある。
かといって、先場所何番か見せた立ち合いでの変化は横綱としての沽券にかかわる。しかし、大の里のような恵まれた体格ではないので、受ける相撲には不安を覚える。難しい事だが、立ち合い踏み込んで相手に簡単に押されない重さが必要になる。
その重さは豊富な稽古量で大型力士に胸を出して、自ら体得するしかない。豊昇龍の武器は、負けん気と気の強さ。横綱は少し負けただけで、あれこれ言われる番付。しかし、持ち前の精神力で打ち勝ち、一強を目指す大の里に立ち向かって欲しい。
復活の兆し見えたか琴桜?
昨年の九州場所で悲願の初優勝を飾って、次の場所で綱取りの権利を得た大関琴桜。しかし、今年は一転して苦難の年になってしまった。綱取りを懸けた初場所でまさかの5勝10敗に終わると、その後3場所連続で8勝止まり。その間に豊昇龍、大の里に次々に横綱への先を越されてしまった。
それでも、先場所は13日目に豊昇龍を破って9勝目。が、その相撲で右膝を痛めて休場。大相撲ロンドン公演にも不参加。しかし、再生医療で快方に向かって今場所は初日から出場。難敵若隆景相手に右をのぞかせて、一方的に寄り切り。先場所から見られた積極的な相撲で白星。
以前からの左膝に加えて、右膝も痛めた事で受ける相撲には不安が残る。しかし、これまで相撲が遅いと言われていた琴桜。これを転機に速く攻める相撲に変えられるのか。ただ我武者羅に出るのではなく、これまで同様に受け止めて、速い攻めを意識すれば禍を転じて福となす可能性もある。
一気に大関昇進か安青錦?
大の里を筆頭に最近スピード出世の力士が次々に現れている。今場所、新関脇昇進の安青錦もその一人。大の里は幕下10枚目格付出だが、阿青錦は序の口から僅か13場所での関脇昇進。その上、関取昇進後は全て2桁勝利という驚異の成績を残している。
身長182センチ、体重140キロは大型化した現在の大相撲では軽量組。しかし、低い体勢からの攻めや、多彩な技で軽量のハンディを乗り越えている。ただ、大の里のような圧倒的破壊力の持ち主に一気に出られると、持ち味の低い体勢になれずに一方的に負けるケースが見られる。
初日は元大関の実力者霧島を相手に、突き押しの展開から上手く送り出して白星。霧島は一気に出てくる力士ではないが、相手の突き押しにも対処していた。今場所は大関獲りとは言われていないが、前頭筆頭と小結で連続11勝。成績如何では一気に大関昇進の可能性もある。
