大相撲秋場所が幕を開けた。新横綱照ノ富士の動向が最大の焦点になるが、それに対抗する実力者がいてこそ盛り上がる場所なのにその存在が見当たらない。もう一人の横綱白鵬は同じ部屋の力士のコロナウイルス感染で、宮城野部屋に所属する全力士休場の措置で出場出来ない。
いきなり新横綱の場所で一人横綱となった照ノ富士のプレッシャーが心配されたが、初日から万全の相撲で小結逸ノ城を寄せ付けずに完勝。それに対して、優勝争いを期待された大関正代と貴景勝は相次いで初日から土。早くも照ノ富士の独走が囁かれる事態になった大相撲秋場所を占う。
秋場所の優勝争い
先場所照ノ富士との全勝対決を制した横綱白鵬が、前述のように同部屋力士のコロナウイルス感染により休場。三役力士に二桁勝利がなかった事からも、この両力士の力が抜けている事は一目瞭然。その照ノ富士は名古屋場所後に横綱昇進。新横綱がいきなり一人横綱というプレッシャーの中、初日の取組が注目された。
初日の相手は先場所西前頭2枚目で10勝5敗と復調気配がみられる逸ノ城。この二人はモンゴルから同じ飛行機で来日し、鳥取城北高校で一年間同じ釜の飯を食った仲。しかし、逸ノ城も場所前にコロナウイルス感染で稽古禁止になり、まだ体調回復の途上。勝負は一方的で、立ち合い左前まわしを掴んで引いて寄りきり。新横綱の初日を白星で飾り、優勝候補の本命。
対して、白鵬不在の中優勝争いに加わらなければならない大関正代、貴景勝の二人が共に黒星スタート。貴景勝は先場所休場の原因となった首の痛みが懸念されたが、同じ突き押しの前頭北勝富士相手に当たり負けして一方的に押し出される。正代は前に出たものの雑な取り口で豊昇龍につけ込まれて寄り切られる。初日で早くも照ノ富士独走確定と思わせる結果に終わる。
また、関脇明生、小結高安という実力者も初日から土が付いて、更に照ノ富士の強さを際立たせ独走の色を濃くしてしまう。唯一の救いは関脇御嶽海。鋭い踏み込みから、実力者の隆の勝を力強く押し出して上々の立ち上がり。これまで、幕内優勝2回。三役常連の実力者で波に乗ったら手を付けられない力士だけに、照ノ富士との直接対決まで並走して欲しいところ。
期待される若手力士
白鵬は既に36歳。今、無双の強さを誇る照ノ富士もいつ膝の故障が再発するか分からない状態。そんな中で大関や実力者達がチャンスをものに出来ない今、もはや若手に頼るしかないのだろうか。それとも、実力者達が奮起して再浮上出来るのか。これからの数場所はベテラン、中堅、若手の三つ巴の鬩ぎ合いが勃発しそう。将来有望な若手に注目してみたい。
東前頭筆頭・豊昇龍 ご存知の通り第68代横綱朝青龍の甥。体型は朝青龍の若い頃と同じ筋肉質で、足腰の渋とさと負けん気は叔父譲り。昨年九月場所新入幕後勝ち越しと負け越しを繰り返しながらも徐々に番付を上げ、大関正代、朝乃山に土を付ける活躍。先場所は幕内初の二桁10勝。場所毎に力を付ける22歳。叔父同様に一気に番付を駆け上がるか。
西前頭3枚目・琴ノ若 豊昇龍がモンゴルのエリートなら、日本のサラブレッドと言えるのが琴ノ若。祖父が第53代横綱琴櫻で父が元関脇で現在所属する佐渡ヶ嶽親方という血筋。188センチ、173キロという恵まれた体格で組んでも押してもよしという万能派。体格の割には器用さもあって出し投げも得意。もっと、前に出る圧力を磨けば一気に開花の可能性有り。