新型コロナウイルス感染拡大で4ヶ月ぶりの本場所開催になった大相撲7月場所。3月の春場所は無観客で開催され、その後夏場所は感染拡大や、力士の感染による死亡などもあって開催中止。今場所も本来の名古屋から両国国技館に代えての開催。
更に、場所前は出稽古も禁止され、力士達は部屋でのぶつかり稽古しかできずに本場所を迎えるなど、異例の中での開催。調整に戸惑う力士も多かったはずだが、ここまでは横綱鶴竜の途中休場はあったものの大した混乱もなく序盤戦を終えている。今後優勝争いを期待される上位陣をウォッチングしてみる。
● 東横綱白鵬
初日、小結隠岐の海に少し危ないところはあったが、ほぼ順調に白星を連ねている。今場所は今のところいつもの醜い張り手やかちあげ等の立ち合いは見られていない。自ら当たって攻める相撲が目立つ。
ただ、35歳という年齢による衰えは致し方なく、巧さと経験で凌いでいるのが現状。これから、関脇以上の上位陣と相対した時、今までのような安定した取り口が出来るか不安。経験値だけで制するのは難しいような気がする。
● 東大関貴景勝
カド番の上に故障上がりで調整具合が心配された貴景勝。ここまで4勝1敗とカド番脱出には好スタートは切れたが、肝心の相撲内容が今一つピリッとしない。充実の上位陣にあって唯一気掛かり。
鋭い当たりから攻めて一気に押すか、押し合いの中で冷静に相手を見ながらいなして勝つのが貴景勝の相撲。しかし、この5日間の相撲内容は地に足が着いていないような取り口で軽さが目立つ。まずは勝ち越しを目標にして、それが成ったら思い切って上位陣に向かって欲しい。
● 西大関朝乃山
新大関の場所が4ヶ月ぶりの上にいつも通りの稽古が出来ない異例なスタートになったが、ここまで新大関とは思えない落ち着きと安定した取り口で上位陣で最も充実感を漂わせている。これからの優勝争いを引っ張っていく気概が見て取れる。
これまでの朝乃山は押し相撲に攻められて回しに手が掛からずに土俵を割る相撲が見られたが、今場所は重みが加わって攻められても下半身が安定していて、柔らかさを生かして逆転している。ズバリ、優勝への一番手。
● 東関脇正代
28歳の正代だが、この年齢でこんなに変わる力士も珍しい。以前は頭が上がって上体を反らせての相撲で、攻めの力が半減していたが、昨年後半辺りから立ち合いが変わり力強い攻めが見られるようになった。
今までは勝敗に無頓着のように見えて、勝つ時は力強い相撲も見られたが、攻められると諦めが早くあっさり土俵を割る場面があった。この数場所精神的にも前向きさが見られる。まずは三役での二桁を目指したいところ。
● 西関脇御嶽海
貴景勝、朝乃山の大関昇進を一番悔しい思いで見ていたのは御嶽海だろう。同年代の中で最も速く番付を駆け上がり、2018年名古屋場所で初優勝、昨年の秋場所で2度目の天皇賜杯と、真っ先に大関昇進と思われたが二桁勝利が続かない。
肝心なところで怪我などにも悩まされ、後輩の二人が大関昇進したのとは反対に17場所も続けた三役の座を明け渡し、平幕でも負け越したが、今場所3場所ぶりに関脇に再昇進。この5日間は鋭い当たりから前に出る相撲で全勝。3度目の優勝とライバルに追い付くには負ける訳にはいかない。