非常事態宣言が発令されている中、途中から観客を入れて行われていた大相撲夏場所は、今場所大関に返り咲いた照ノ富士が、優勝決定戦で大関貴景勝を下して先場所に続いて２場所連続、通算４回目の幕内最高優勝を飾った。
３月場所中に横綱鶴竜が引退して一人横綱となった白鵬も６場所連続休場と、このところ続いている横綱不在の中スタートした夏場所。幕内だけで途中休場や途中出場も含めると７人という、相変わらずの休場者の多かった今場所を振り返ってみる。
今場所の横綱・大関陣
昨年７月場所の途中休場後に９月場所から３場所全休。今年３月場所に出場したが３日目から途中休場の横綱白鵬。今場所も休んで６場所連続休場。昨年１１月には横綱審議委員会から『注意』決議を受けている。来場所引退をかけて出場予定だが、期待は出来ない。
東大関の朝乃山には失望。右四つ左上手の本格派四つ相撲として『横綱に最も近い男』と期待していた。ただ、部屋に他に関取がいなく出稽古禁止の最近は稽古不足で成績が不安定。今場所前に外出禁止を破りキャバクラに出入り。厳罰で数場所出場停止の可能性。
西大関貴景勝は中盤まで２敗はしたが、本来の威力ある突き押しが見られた。１３日目の遠藤戦の敗北は痛かったが千秋楽の本割で照ノ富士を突き落とし、優勝決定戦に持ち込んだ。優勝は逃したが大関の責任は果たした。来場所は『ストップザ照ノ富士』で臨め。
大関在位４場所目で２度目の角番で迎えた正代。序盤こそ４勝１敗で切り抜けたが、相撲内容は相変わらずバタバタの綱渡り。中盤相次いで下位力士に敗れ、９勝で角番は脱出したが優勝争いに加われなかった。腰高を直して下から圧力を掛ける相撲に変えて欲しい。
大関復帰場所で２場所連続優勝の照ノ富士。初日から力強い相撲で相手を寄せ付けず１０連勝。貴景勝、遠藤に２差の独走態勢。後半反則負けや差し違い等で紛れ、遠藤、貴景勝に連敗したが決定戦で優勝。安定感は随一で古傷の怪我の悪化さえなければ横綱当確か。
場所を盛り上げた力士
怪我による休場で大関を陥落。一時は前頭下位まで番付を下げた関脇高安。そこから６場所連続の勝ち越しで復活。今場所は優勝争いには加われなかったが２場所連続で二桁。来場所もう少し星を上積み出来れば大関が見えてくる。唯一照ノ富士と五分に戦える男。
再入幕した昨年７月から連続二桁勝利で前頭筆頭も、負け越した上にコロナウイルス感染で全休した若隆景。番付据え置きで臨んだ３月場所、前頭２枚目で１０勝。今場所は筆頭で９勝と新三役確実。体は小さいが下からの強烈な押っつけが武器。今、最も旬な力士。
角界随一の人気力士遠藤もはや３０歳。三役に上がっても勝ち越しは続かず若手の台頭もあって頭打ち状態が続いていた。前頭８枚目と番付を下げた今場所、技だけでなく圧力を掛けて白星を積み重ね、優勝を争う２大関を連破。遠藤ここに有りと存在感を示した。
これからの大相撲展望
来場所、引退をかけた白鵬が出場するが多くは望めない。今後の大相撲をリードするのは２９歳の照ノ富士。優勝決定戦にもつれ込んだが妙義龍戦での反則がなければ独走だったはず。横に動かれた時の膝に不安があったが、今場所をみる限り心配無用。圧倒的パワーに巧みさも加わり安定感が出て来た。照ノ富士時代の到来か。
朝乃山が不在となりそうな今、照ノ富士を追うのは貴景勝。強烈な突き押しとタイミングの良いいなしは乗ってくれば手が付けられない。しかし、押し相撲の宿命で安定感には欠ける。まだ、２４歳だけに更なるパワーアップも可能だが、四つ相撲もプラスすべきか。
この２人を追うのは高安。大事な場面でポカをするイメージがあるが『照ノ富士に勝てる実力者』は他にいない。今場所１０勝の御嶽海は強さと諦めの早さが同居。稽古を積んで心身のアップデートが大関への課題。正直、どこまで伸びるのかまだ分からないが、更に力強さを身に付けて押しを磨き、元大関栃東級になれるか若隆景。
