どんなスポーツにも怪我や故障は付き物。趣味でやっている一般市民のランニングや球技、レクリエーションみたいな事でも怪我して病院や整形外科に通ったり、治るまでじっと我慢している人は多い。それが自分の人生とプライドを掛けて常にベストパフォーマンスを要求されて戦うプロなら、そのリスクはアマチュアの想像を遥かに上回るほど大きい。
競技にもよるが、最近はプロ、アマチュアを問わず10代から40歳過ぎまで幅広い年代で活躍している選手が目立つ。その人の体幹や、ちょっとした運、不運によって怪我や故障はいつ、誰に起こるか分からない。ましてや、若年から世界を相手に活躍してきた錦織圭のような選手には、酷使されてきた肉体に蓄積された疲労は常人とは比較にならない程で、常に故障や怪我のリスクを抱えている。
錦織圭、現在の立ち位置
男子テニス世界ランキング (5月2日付)
1 ジョコビッチ(セルビア)
2 メドベージェフ(ロシア)
3 ズベレフ(ドイツ)
4 ナダル(スペイン)
5 チチパス(ギリシャ)
6 ベレッティーニ(イタリア)
7 ルード(ノルウェー)
8 ルブレフ(ロシア)
9 アルカラス(スペイン)
10 オジェアリアシム(カナダ)
↓ ↓
66 錦織圭
86 西岡良仁
こうしてランキング上位を列挙してみると、錦織圭がベストテンの常連として活躍していた頃とは様変わりしていて、否が応でも時代の流れを感じさせられる。その点、34歳のジョコビッチが未だにナンバーワンの地位を維持しているのは奇跡としか言いようがない。また、35歳のナダルのベストテン上位も特筆物。それなのに、32歳の錦織の凋落振りをみると怪我とはいえ、ファンとして溜め息をつかずにはいられない。
錦織圭、今どうしてる❔
思えば、錦織が全豪オープンでベスト8入りしてランキング20位以内になって脚光を浴びるようになったのは2012年、今から10年前22歳の頃。そして、現時点でのキャリアハイと言える、2014年全米オープンで宿敵ジョコビッチを下して決勝進出。しかし、決勝ではチリッチ(クロアチア)にストレートで敗れ、四大オープン優勝という快挙はならなかった。タラレバは禁物だが、あの時制していればその後の競技人生はまた違ったものになっていたのかもしれない。
その後、2015年に錦織にとって最高位となるランキング4位になり、17年までベストテン上位の常連として活躍。ただ、ツアー優勝はあるものの四大オープンではジョコビッチ、ナダル、マレー(イギリス)、フェデラー(スイス)の四強には悉く跳ね返され、力の差は歴然としていた。そして、2017年夏から初めての長期休養でランキングが下落したものの、翌18年ウィンブルドンでベスト8、全米オープン準決勝進出で年末にはランキングベストテン返り咲き。
2019年も全豪、全仏、ウィンブルドンとベスト8入りして気を吐くが、8月から一年以上に及ぶ長期休養でランキングは30位台に陥落。2020年以降も休養と復帰の繰り返しで50位~60位を行ったり来たり。2021年は東京オリンピックを目標に2月から精力的に参戦。全仏オープン4回戦進出、オリンピックではベスト8と復活の狼煙を上げかけたが、10月のパリバオープンを最後に股関節の手術、リハビリで半年以上の休養で現在に至っている。
錦織圭、復活はあるか❔
10月を最後にコートから離れた錦織。MRIにはダメージの影は映っていたが、切ってみないとどのくらいの傷か明確にならない中、2ケ月色々と試行錯誤を重ねて迷っていたという。痛みに耐えきれず手術に踏み切ったところ、同じように股関節を傷めて人工関節の手術を受けたマリーのようになる寸前だった。「悩んだ2ケ月の前に手術していれば……」という悔いは残るが、人工関節に至らないで安堵している。
この夏には復帰予定の錦織。しかし、股関節の手術は術後の痛みがぶり返す場合もある。マリーも錦織と同じように内視鏡での手術後も痛みが消えず人工関節の施術に踏み切った。更に、やはりマリーと同様に元世界一位のヒューイット(オーストラリア)も左右2度の施術をしている。股関節の故障といっても、状態は人それぞれだがフットワークとベースラインからのストロークで勝負する、元世界王者達とプレイスタイルが似通った錦織にとっては気掛かりな二人の状況だ。
夏に復帰してからの錦織の目標は2、3年以内にグランドスラムの上の方でやる事だと言う。現在32歳の錦織にしては悠長な気もするが、そんなところかもしれない。陸上や水泳のように自分のタイムだけで競うのではない。テニスはランキングによって対戦相手が決まる競技。ある程度上げない限りは早い段階でランキング上位と戦う事になる。もう一度、10年前に戻った気持ちでチャレンジャーとして復活する錦織。何年先になろうと再び四大オープンで輝く錦織圭をファンはいつまでも待っている。
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