全英オープンで活躍中の錦織圭が第9日目の準々決勝で、第2シードのロジャー•フェデラーと対戦する。対戦成績は3勝7敗、更に史上最多の8度の全英オープン優勝を誇る【芝の王者】フェデラー相手に錦織は、「対等とは思っていないが、勝てるとは思います」と言い切る。
全仏オープンでの故障回復を優先させて、前哨戦をパスして今シーズン初めての芝コートで迎えた今大会。心配をよそに4回戦まではこれまでのキャリアで最も充実した戦いぶりを見せて、極めて順調に勝ち上がってきた。念願の四大タイトル制覇に向けて挑む錦織の今大会の戦いぶりと、フェデラー戦の勝算を占ってみる。
● 今大会の錦織の戦いぶり
これまで、四大タイトルでの錦織圭は初戦から勝ち上がるために時間を要して、強敵と相まみえる準々決勝辺りでは消耗が激しくてスタミナ切れが指摘されてきた。しかし、今大会の錦織は1回戦から3回戦までアグレッシブなテニスを見せ、多彩なショットと積極的なネットプレー等で相手に付け入る隙を与えずに、全てストレートの短時間で勝ち上がってきた。
4回戦のミハイル•ククシュキン(カザフスタン)こそ、相手の積極的なプレーに手を焼いて1セットを失い2時間43分要したが、1回戦から3回戦まで全てストレートで制した結果、これまでのプレー時間は4試合で8時間31分。『マラソンマン』と名付けられた今年の全豪オープンでは準々決勝までの4試合で13時間47分、全仏オープンでも13時間22分を要して強敵と当たる頃には余力がなく、シード選手になすすべも無く敗退してきた。
これまでの経験を生かして、格下相手の試合ではいかに省エネで勝ち上がれるかが、上位進出の鍵と見極めてアグレッシブに速い勝負を心がけてきた成果が、数字の上にも表れている。その要因の一つとして、サービスゲームでの安定感も挙げられる。今大会の錦織はファーストサーブからの得点確率が高く、観ていてもブレークされる気がしない。
それに加えて、もともと屈指のショットメーカーとして知られる錦織だが、これまで若干苦手とされていた芝コートでも頭を使うテニスが出来るようになってきた。特に、リターンの駆け引きが芝コートでは重要だと認識し、それが実践されている。
「ここから最高の選手達とやり合わなくてはいけないので、更にレベルを上げなければならない」準々決勝の熱戦を制した後で語った錦織。全豪オープンの準々決勝ではノバク•ジョコビッチ、全仏オープンの準々決勝ではラファエル•ナダルと当たったが、4回戦までの戦いで消耗していてなすすべも無く敗退した。「更にレベルを上げなければならない」と言える、余力も自信もあるのだろう。
● フェデラー戦への勝算は?
「対等とは思っていないですけど、勝てるとは思っています。怖さは前よりはないですし、向かっていくだけなので」と、準々決勝の後に話した錦織。しかし、37歳になってかって程の絶対的な存在ではないが、『芝の王者』フェデラー。今大会も得意の芝コートで錦織以上の安定感で勝ち上がってきた。
ただ、チャンスは十分にある。まず、今年のウィンブルドンはコートが遅いと、言われている。例年なら大会が進行すると同時にコートが堅く締まってくるが、今年はコートが柔らかくて芝が少し湿っぽい感じがあり、ボールの勢いがコートに吸収されているという声が聞かれる。
もし、この状態が続いているならフェデラーのサーブの威力や、バックハンドのスライスの切れが少しでも落ちる可能性があるので、錦織にとって有利な材料になる。錦織の勝算はリターンにある。フェデラーのサーブを読んで如何にして鋭いリターンを返せるか。それが出来ればネットプレーや得意のショットを駆使して崩していける。
あと、錦織も言っているがフェデラーの得意とするサーブアンドボレーや、リターンからの速く厳しい攻めに負けないように、早い仕掛けが出来るか否かが勝敗を分ける可能性がある。その反面、相手の土俵である早仕掛けに乗るよりも、フェデラーの攻撃を堪えて得意のショットを放てるラリーに持ち込めばチャンスという見方もある。
いずれにしても、今大会の錦織を見ていると自信と風格に満ちていて、簡単に自滅する事は考えられない。安定したサーブ、切れ味鋭いリターン、多彩なショット、機を見て仕掛けるネットプレーとドロップショット。これまで積み重ねた経験に裏打ちされた戦略でアグレッシブに戦いを挑んで欲しい。
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