冬季北京オリンピックも今日を入れて残り4日。たくさんの感動と、いっぱいのドラマを楽しませて頂いています。歓喜の笑みと無念の涙……、そのどちらにも本人にしか分からない努力や苦労の人間ドラマがあります。ただ、勝ち負けやメダルの有無だけで評価出来るものではありませんね。メダルを獲得してもその後の人生で転落して行く人もいます。逆に、敗者になって得た知識や経験を活かして指導者や第二の人生で成功している人もたくさんいます。勝者にも敗者にも感謝の声援を送りながら残りの競技を楽しみたい。
2月15日
銀 スピードスケート女子パシュート
銅 スノーボード女子ビッグエア 村瀬心椛
銅 スキー複合男子個人ラージヒル 渡部暁斗
2月16日現在 金2銀5銅7
3大会連続メダル・渡部暁斗
ゴール寸前までトップを守っていた渡部暁斗にグローバクとオフテブロのノルウェー勢が襲い掛かる。小動物を襲う猛禽のような眼差しと勢いであっという間に、並びかけられると渡部には、もう抜き返す力は残っていなかった。今大会不振のジャンプで「ここにきて一番いいジャンプ」という会心のフライトで5位で後半距離のスタート。首位の選手がコースを間違えている間に3.5キロでトップに躍り出る。
しかし、早めのトップは周りに距離に強い選手が不在な中で、先頭を走り続ける体力の消耗にもつながる諸刃の剣。お互いに体力を温存しながら2人で併走して追うノルウェー勢が、5キロ過ぎから一気に差を詰めてくる。最後の1.5キロで15秒あった渡部の貯金は見る間に無くなって、「最後に足を伸ばしたかの記憶がない」という程の精魂尽きたゴールで、金メダルがスルリと滑り落ちて3着でのフィニッシュ。
連覇目前の陥穽・女子パシュート
平昌五輪からの連覇を狙うスピードスケート女子パシュート。スタートから先頭の高木美帆、佐藤綾乃、髙木菜那がいつも通りの一糸乱れぬ隊列で、最初の400メートルでカナダを1秒以上のリード。しかし、今季のW杯で3勝の後半強いカナダがジリジリ追い上げてくる。最終ラップを残した時点で、更にギアを上げたカナダが0秒39まで迫ってきた。
その切迫感はコーチの声を介して選手達にひしひしと伝わってくる。ここで待ち受けていた陥穽はフィギュアの羽生結弦と同じ氷上の溝。その溝に髙木菜那の左足がハマってバランスを崩し、踏ん張り切れずに転倒。膝に手を付いて項垂れる姉の背中をポンポンと叩いて慰める高木美帆。思わぬアクシデントで敗れはしたが、髙木菜那を気遣う妹美帆と佐藤綾乃、リザーブの押切美沙紀の姿には、世界中から称賛の声が上がっていた。
トピック(禁止薬物余波)
禁止薬物を使用しながら、スポーツ仲裁裁判所から出場を認められたフィギュア女子のカミラ・ワリエワがSPで首位に立った。圧倒的な強さで今季無敗のカミエラ。その強さで他の選手達の心を折る事から【絶望】という異名まで持つ。しかし、今は彼女こそ絶望の淵に立たされているのかもしれない。正確無比なトリプルアクセルで着氷が乱れてしまった。
しかし、彼女自身が絶望を味わうならともかく、他の選手達にも大きな影響が出る事になりそう。ワリエワの薬物違反の有無が確定するには数ヶ月かかる見通し。先日のフィギュア団体のメダルもそれまで授与されない。更に、残りのフリーを終わってワリエワが3位以内の場合は、個人の表彰式も行わないと発表された。せっかく、メダルを獲得しても表彰台で喜びを分かち合う事も出来ず、帰国の際に手ぶらで帰るメダリストが現れるという思わぬ余波が広がりそう。
今日、明日の見所
第14日(17日)は、スピードスケート女子1000メートルに前回銀メダルの小平奈緒と銅メダルの高木美帆が、再びダブル表彰台を目指して参戦。また、一昨日3大会連続メダルを獲得した渡部暁斗らが、28年振りのメダルを狙う複合男子団体に登場する。更には、最終戦を迎えたカーリング女子スイス戦に準決勝進出をかけて日本が勝利を目指す。
第15日(18日)は、フィギュア混合団体で活躍した【りくりゅうペア】三浦璃来・木原龍一が個人のメダルを狙って登場。また、フリースタイル男子スキークロスの1回戦から決勝までが行われる。更に、先日銅メダルを獲得したスピードスケート男子が、余勢を駆って参戦する1000メートルからも目が離せない。