異例続きの夏の甲子園が幕を閉じた。史上最多の七度の順延、初めての女子硬式野球の決勝戦、準決勝は全て近畿勢、そして智弁学園和歌山と智弁学園との兄弟対決……。開会式予定の8月9日から決勝戦の8月29日まで21日間、3週間もの長丁場になった夏の甲子園。これ程の長期間の大会は何らかの見直しの必要があるのではないだろうか。
そもそも、何故高校野球だけがいつまでも国民的行事みたいに特別な扱いを受け続けなくてはならないのだろうか。この期間中には全国高等学校総合体育大会、いわゆるインターハイが行われるが参加校、競技種目など圧倒的に格上で規模の大きい大会なのに、殆ど目もくれない扱いになっている。この多様性の時代に野球だけに大挙応援団を繰り出してお祭り騒ぎする必要があるのだろうか……。
智弁対決の明暗
明暗を分けたのは1回表の智弁和歌山の攻撃。いきなり、1番の宮坂厚希が初球を捉えてセンターオーバーの二塁打。続く大仲勝海がライト前に落として1、3塁。4番の徳丸天晴の犠打で先制。ここの二死2塁で抑えたかった智弁学園先発の西村王雅に、更に三連打で3点追加。まだ初回で猛打の智弁学園なら挽回可能と思われるが、その後の攻撃の焦りを生んだ。
智弁学園の反撃は2回裏。一死2塁から6番植垣洸の内野安打と、8番谷口の三塁打で2点を返す。その後は3回から代わった智弁和歌山のエース中西聖輝と立ち直った智弁学園の西村の投げ合い。次の1点が注目されたが、取ったのは智弁和歌山。リリーフの小畠一心から6回宮坂のタイムリー、7回には7番高嶋奨哉のツーベースで追加点。優勝へ大きく近付いた。
更に、8回9回と前日118球完投した小畠に容赦なく襲い掛かり9点。一方の智弁学園もヒットは出るが点差を考えるとランナーを送る事も出来ずに、併殺や凡打を繰り返して得点には繋がらない。結局、16安打9得点の活発な打棒と3回以降を無失点に抑えたエース中西の好投で、智弁和歌山が21年ぶり三度目の頂点に立った。
注目投手の総括
● 風間球打(秋田・明桜)
秋田県大会で最速157キロをマークした今大会の目玉の風間。183センチの長身から投げ下ろす低めの直球は突き刺さる感じて迫力十分。更に、風間の場合はストレートに加えてカーブ、フォークボール、スライダー、チェンジアップ……等の多彩な変化球にも魅力がある。現代野球ではいくら直球が速くても打者は対応してくる。緩急自在こそが好投手の条件。残念ながら2回戦で敗退したが、ノーゲームになった帯広農業戦で4回までノーヒットに抑えた、悪条件の中での対応力にスカウトが高評価。
● 秋山正雲(東京・二松学舎大付)
初戦となった2回戦の西日本短大付のエース大嶋柊との投げ合いは今大会屈指の投手戦となった秋山正雲。170センチと投手としては小柄だが、その左腕から繰り出される146キロの速球を武器に5回まで西日本短大打線をノーヒットに抑える。結局、4安打9奪三振で投げ合いを制して3回戦進出。京都国際戦では2本の本塁打を浴びる等苦戦したが、延長10回を一人で投げ抜いた。「真っすぐ、変化球の精度など常に磨いていかなければ。こいつが投げたら大丈夫と思われる投手になりたい」と、プロ入り志望を表明。
● 深沢鳳介(千葉・専大松戸)
最近はあんまり見掛けなくなった右サイドスローから、伸びのある145キロ速球とスライダーが注目の深沢鳳介。春の選抜大会でも中京大中京を8回3安打に抑える好投を見せている。1回戦強敵の明豊戦では6安打11奪三振で完封。2回戦の長崎商業戦は5点ビハインドの5回裏からの登坂。1失点に抑えたが敗退。プロからの注目については、まだ考えられないと明言を避ける。「甲子園に帰って来られて悔いはないです」と晴れやかな笑顔で甲子園を後にした。
● 花田侑樹(広島・広島新庄)
1回戦、強豪横浜相手に7回途中まで5安打無失点の好投。今春の選抜大会でも上田西を8回途中まで無失点で勝利に貢献し、プロから注目を浴びていた。「後ろにいいピッチャーがいるので、一つずつアウトを積み重ねて行くという気持ちでした」。しかし、まさかの逆転3ランでサヨナラ負け。「いい投手だと再認識した。ミスも少なく勝てる投手の要素」「投手らしい投手。全体的な制球、キレ、バランスもいい」とスカウトからは絶賛の声。まだ分からないと、今後については避けた花田だが是非プロで見てみたい投手の一人。
運動後のジョイントメンテ&リカバリーケアドリンク【ランショット】
高校野球の課題
今大会は度重なる大雨によって史上最多の7度もの順延を招いた。これまでは、この時期は熱中症が懸念される程の猛暑に目がいって、これ程長い雨に見舞われる懸念は想定していなかった。しかし、最近の異常気象はいつ、どこに大雨をもたらすか分からない。3週間もの滞在は選手や関係者への負担が大き過ぎる。そろそろ、夏の高校野球大会も見直す時期にきている。
冒頭でも述べたが、何故いつまでも高校野球だけを国民的行事みたいに特別扱いするのだろうか。一昔前なら十分な設備や環境もなく男の子は野球やるのが当たり前みたいな雰囲気があった。しかし、今はサッカー、テニス、ゴルフ┅┅等の多種多様な競技を年少時から始める環境が整っている。もう、野球だけを花形スポーツみたいに扱う差別は止めるべきだ。
具体的には選抜高校野球も夏の全国大会も甲子園に拘る必要はない。夏はインターハイと一緒に持ち回りでやればいい。体力的にキツいサッカーでさえ多数の会場を使用して9日間で終わっている。あるいは、雨を見越して関東と関西のドーム球場を使用して日程通りに開催させる。とにかく、この多様性の時代に変なノスタルジックを持ち出して甲子園球場に拘る愚は止めるべきだ。
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