大相撲初場所は関脇御嶽海が三役在位28場所目の奮起で、三度目の優勝と長野県出身力士227年振りという大関昇進を決めて幕を閉じた。優勝争いは千秋楽まで照ノ富士、御嶽海、阿炎、琴ノ若の4力士にチャンスがあるという混戦模様で盛り上がったが、今回は平幕で二桁勝利をあげて活躍した5人にスポットを当ててみる。
力みが取れた阿武咲
身長は176センチと小柄だが163キロの丸い体で、如何にも昔からの押し相撲の体型にぴったりの阿武咲。高校一年で国体優勝などの活躍を見せ、すぐに中退して16歳で角界入り。2年で十両昇進、怪我で幕下陥落もすぐに返り咲き20歳で新入幕。更に、僅か3場所で新小結とトントン拍子の出世街道。しかし、2018年初場所での膝の怪我から歯車が狂い出す。
怪我の後は前頭上位と中位を行ったり来たり。立ち合いから力みが見られて、強烈な押しの力が相手に伝わらず、いなしにばったり落ちる相撲が目立つ。今場所は八分の力で当たっているように見え、無理に追い込まずに横からの攻めも見られて白星に繋がっている。攻めの姿勢は大事だが、更に横からの攻撃も磨き、組んでも取れる特性を生かして上を目指して欲しい。
驚異の粘り腰豊昇龍
ご存知、朝青龍の甥に当たる豊昇龍。まだ、初土俵から丸4年の22歳ながら前頭上位の常連になりつつある。同期で大鵬の孫の王鵬には序ノ口で敗れ優勝をさらわれたが、幕下で追い付き直接対決を制して番付で逆転。2年足らずで十両昇進、更に初土俵から15場所で新入幕を果たした。131キロの軽量を衝かれ一気に持っていかれる事もあるが、粘り腰が武器。
その粘り腰を活かして食らい付き、投げ技での逆転勝利は魅力的だが、それだけで上を目指せる程大相撲は甘くはない。「技とかやる訳じゃなく、当たって攻めて、下から起こす相撲を取りたい」という豊昇龍。まだ、その相撲は出来ずに今場所も投げ技が目立った。当たり負けしないで攻め切る相撲を増やし、圧力を掛けてからの投げ技が決まるようになれば大関候補。
強烈な突き押し阿炎
初土俵から4年半で新入幕、そこから一度も十両落ちする事なく幕内上位から中位に定着した阿炎。2019年7月新三役から4場所連続小結を務めるが、陥落した翌年の7月に、新型コロナウイルス禍の中キャバクラに通っていた事が判明。協会の調査にも虚偽の説明をした事から、8月4日引退届を提出。協会は受理せずに出場停止3場所の懲戒処分を下した。
結局、西前頭14枚目から西幕下56枚目まで番付を下げた阿炎。そこから、二場所連続7戦全勝優勝で十両復帰。更に昨年九州場所で再入幕後、二場所連続12勝の好成績。以前は突き押しに撤し切れずすぐに引く悪癖があったが、復帰後は長い腕で徹底的に突き押しで攻め切る相撲。この勢いがどこまで続くか分からないが、大関候補の一人になった事は間違いない。
変幻自在な業師石浦
高校相撲の強豪・鳥取城北相撲部監督の長男として生まれ、幼少から相撲を続けた石浦。中学、高校と実績を残して日大に進み英乃海や遠藤などと活躍したが、病気で体重が激減。大学卒業と同時にオーストラリア留学。初土俵は一年遅れの2013年1月。春場所から序ノ口、序二段と全勝優勝を果たした。2015年春場所、鳥取県出身として53年振りの関取。
2016年九州場所には新入幕を果たすが110キロ台の軽量で苦しみ、幕内と十両を行ったり来たりが続いた。元々、筋肉質な石浦だが昨年辺りから体重増量に務め、今場所は自身最重量の124キロ。立ち合いから一気に持っていかれる事が少なくなり、横に食らい付いての投げ、ひねりが決まった。幕内上位で迎える来場所、業師石浦が旋風を巻き起こすか。
攻めに徹する琴ノ若
横綱琴桜の孫として注目されている琴ノ若。188センチ、168キロの体格を活かして2015年九州場所初土俵。2019年7月十両昇進。2020年春場所には新入幕を果たした。怪我で一度十両陥落も一場所で返り咲き、その後は幕内定着。昨年秋場所では大関正代に勝つが、膝の怪我で休場。先場所はその影響で負け越して、前頭14枚目まで番付を落とした。
元々、組んでも離れても取れるタイプだが、今場所は徹底的に相手に圧力を掛ける相撲。回しを取るなり、いなすなりすれば楽に勝てそうな場面でも遮二無二前に出ていた。11勝中、8番は離れての勝利。とにかく、今は攻めの強さを強化するという意図がはっきりしていた。今後、番付を上げた時に上位相手に力負けしない圧力を身に付け、一気にブレイクするか。
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