大相撲春場所は荒れる大阪らしく面白い展開になってきた。横綱照ノ富士の途中休場は残念だが横綱不在を感じさせない盛り上がりを見せている。250人以上の新型コロナウイルス感染者で合同稽古や出稽古はもちろん、同部屋の力士同士でもまともにぶつかり稽古が出来なかったので心配されていたが、それを感じさせない白熱した戦いが続いている。まん延防止等重点措置が21日で解かれ、入場者の制限もなくなって更に熱い春場所になりそう。
中日までの経過
勝ってはいても持ち前の圧倒的な迫力もふてぶてしい程の強さもなく、先が案じられていた横綱照ノ富士が早々に休場。一人横綱不在で横綱土俵入りもなく観客離れが心配されたが、今のところは急激な落ち込みはなさそうだ。その要因は各力士の相撲内容にあると思う。立ち合いの変化も少なく、迫力のあるぶつかり合いから、突き押しや差し手争いの攻防、土俵際での粘りなど大相撲の面白さが凝縮された取組が続いている。
横綱不在で責任を問われるのは大関。カド番の正代、貴景勝と新大関御嶽海という真逆の三大関勢になったが、早くも3勝5敗と大関陥落のピンチの正代も7、8日目初めての連勝で反撃開始。怪我とコロナウイルス感染からの回復が心配された貴景勝も、押し相撲に有りがちな不安定さを見せながらも2敗で折り返し。今場所の目玉の御嶽海は一敗はしたものの、安定感のある充実した相撲で土俵を引っ張っている。
最近の大相撲は言い方は失礼になるが、一般社会と同じように高齢化。力士の最盛期は20代後半と言われた一昔前からは考えられないような年齢構造になっている。幕内力士は30代がぞろぞろ。人数的にも20代とほぼ同数。その20代も25歳以下の若手は数える程しかいない。しかし、それが反って観る側からしたら年代別対抗戦みたいで楽しい。30代後半の力士の奮闘、アラサー世代の充実、数少ない若手への期待と多様な楽しみがある。
優勝争いの行方
優勝は8連勝の高安か。番付が下がっているので、前半に白星を重ねて勢いを付ければ優勝争いに絡むと、前回のレポートで触れた通りの展開になってきた。これまでの長い相撲でなく、押し相撲のように積極的に前に出る取り口が見られる。しかも、ただがむしゃらに攻めるのではなく、見るところはじっくりという冷静さが見られる。初土俵から101場所目の元大関が悲願の初優勝で復活を果たすか。
今場所の主役、新大関御嶽海が連覇を窺う。地位を得て萎縮する事なくどっしりとした落ち着きが出て、相撲に重さが加わっている。得意の突き押しだけでなく、回しを取ってじっくり攻める相撲も見られ、更に安定感が増した感じがする。まだ、うるさい相手が残っているので、これまで通りに冷静沈着な相撲を取り続けて欲しい。実力者高安との直接対決が今場所の行方を占う大一番となる。
御嶽海と同じく1敗で追う新関脇の若隆景にもチャンスはある。小柄な体ながら強い右からの押っつけが強烈。常に下から下から攻めるという意識に好感が持てる。これから上位陣との対決が始まるが、優勝争いの台風の目になりそう。先場所に続いて優勝争いに加わってきた琴ノ若。今場所も圧力を掛けて前に出る積極的な相撲が目立つ。このまま1敗で勝ち越しを決めれば上位陣との対決も組まれるが、先場所より更に成長した大器は上位にとっても脅威となりそう。
全勝の高安に優勝経験がないので2敗勢にも優勝の可能性はある。カド番からの復活をかける貴景勝。前半2敗した時は心配したが、首の故障は癒えたようで持ち前の立ち合いからの強い当たりが出来ている。これからの大関戦や三役陣、高安相手に自分の相撲を取り切れればカド番からの優勝もあり得る。2場所連続で12勝の新関脇阿炎。復帰後からの前に出る積極的な突き押しで、大関への足掛かりにしたいこの場所。ただ、勝ってはいるが悪い癖の引きが出てきたのが懸念材料。
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