はっきり言って今年の3歳馬はコロコロ勝ち馬が変わるし、レベル的にどうかなと思っていましたが最後のところで盛り上がりました。久し振りの大観衆の中のダービーで、レジェンド武豊が史上最年長53歳にして自身が持つ記録を塗り替える、史上最多6度目の制覇。まるでシナリオ通りのような絵になるレースでした。
今回のダービーは4強と言われるダノンベルーガ、イクノイックス、ドゥデュース、ジオグリフにそれぞれ川田将雅、C・ルメール、武豊、福永祐一が騎乗。馬の走りももちろんだが、日本を代表する名手達の競演に注目していました。各馬の資質と枠順を考えて名手達がどのように考え、騎乗したのか振り返ってみました。
馬の能力を信じた武豊
レース中ドゥデュースの姿は確認出来なかったので中団馬群の中かと思っていたら、やはり皐月賞と同じ後方からの競馬。直線外から橙色のヘルメットが上がって来たので、好位の外に付けていた皐月賞ジオグリフかと思ったら、武豊騎乗のドゥデュースだった。内から抜け出しを図る馬との勢いの差は一目瞭然で、猛然と追い込んできたイクノイックスをクビ差凌いだところがゴールだった。
昨年末にホープフルステークスを選ばずに朝日杯フューチュリティステークスを勝ち、弥生賞、皐月賞と連敗した時点で巻き返しはないと思っていたが、皐月賞の上がり最速の脚は伊達ではなかった。皐月賞の敗戦は武の騎乗ミスと思っている。普通ならそれを踏まえて少し前に位置するはずだが、やはり後方からのレース。馬の底力を信じて、その末脚に賭けた武の執念がもたらした史上最多6度目のダービー制覇だった。
枠順に泣いたルメール
どんなレースでも枠順による有利不利は避けられない。しかし、今年のルメール程極端なケースは稀だろう。今年のクラシック4戦17番、18番、18番、18番。外差しが利くと言っても、ダービー前日からCコースに変わった馬場では出来れば外枠は避けたいはず。スタートでやや遅れて道中は後方3番手からになったイクノイックス。2頭前のドゥデュース共々ダービー制覇に求められる10番手以内からは苦しい位置。
しかし、3、4コーナー外から上がって行った武に対して、やや遅れてコーナーを内で回ったルメール。直線に入って横にスワイプするように外に持ち出したところが丁度ドゥデュースの後ろ。満を持してアクセルを踏んだライバルに対して、一瞬反応が遅れた分最後の追い込みが届かなかった。「18番だから難しかった……」と嘆いたルメール。しかし、僅か3、4戦目で皐月賞、ダービー2着は実力の証。秋から来年以降にリベンジを待ちたい。
伸び切れなかった川田
4強の中で12番という最も走りやすい枠番をゲットしたダノンベルーガ。道中は10番手前後の馬群の中、ライバルの一頭ジオグリフの内に位置して、直線も真ん中から先頭を行くアスクビクターモアに迫った。リーディングジョッキー川田らしくスムーズに立ち回ったが、1、2着馬を出し抜くどころかアスクビクターモアも抜けずに4着。
皐月賞は外伸びのコースの中、最イン1番枠が災いした感じもあり、ハーツクライ産駒としての成長度も買われてか今回は一番人気。最後は上位の馬より直線内側ではあったが、勝負所までは理想的な展開で来られただけにゴール前での失速は残念。結局、2戦共に4着に終わったという現実からみても、ライバル達より底力で劣ったとしか言えない。
位置取りを悔やむ福永
史上初のダービー3連覇と皐月賞に続く2冠がかかった福永・ジオグリフ。皐月賞のインタビューで距離延長への懸念を漏らしていた福永。アメリカでダート短距離で活躍した父への不安からか、皐月賞であれ程強い勝ち方をしながら4番人気。その上に15番枠では福永も悩んだはず。課題のスタートは上手く切れたが、狙っていたポジションか取れずに終始外を回される苦しい展開。
直線残り400メートル地点で外から伸ばせる位置に出したが、更に外から伸びた上位2頭のライバルに抵抗する力はなく、伸びきれす7着の完敗。「距離的にはまだ分からないが、道中壁を作れなかった」と敗因に上げた福永。枠順も響いたが、この距離ではそれを克服する力に欠けたとしか思えない。今後は更なる成長を待つか、2000メートル前後の距離を中心に戦えば、再びGⅠを獲れる器なのは間違いない。
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