昨年東京オリンピックが終わったばかりだが、新型コロナウイルス感染拡大で1年ずれたせいで2024年パリオリンピックの代表争いが各競技で既に始まっている。早くも代表選考会の3回目に入った卓球の【第3回パリ五輪日本代表選考会TOP32】には男女の有力64選手が集結。
特に混戦模様で注目を集める女子は若年層のレベルアップで東京オリンピック代表選手もうかうか出来ない状況。今年好調で選考ポイント争いをリードする早田ひなを追って、実績組と若手が激突した大会を締めたハリケーン平野美宇にスポットを当ててみた。
パリ五輪選考状況
これまでの日本の卓球のオリンピック選考は世界ランク上位3名にサポート役として1名と決まっていた。パリオリンピック選手出場資格は、団体戦の出場資格を得た国は世界ランキング上位2名がシングルス枠を獲得出来ると定めている。これはこれまでの日本の代表決定と同じプロセスになる。
しかし、今回日本は独自の選考方法を決定し、世界ランキングではなく選考対象となる13大会での獲得ポイントと、Tリーグでの勝ち点の合計での上位2名がパリオリンピックのシングルス出場選手。団体戦に出場する3人目は協会が決めると発表。この日本独自の選考方法が国際卓球連盟とIOCに認められた。
今大会終了時点でのポイント上位8名
世界ランク
1 早田ひな 162 6位
2 伊藤美誠 113 5位
3 平野美宇 106 21位
4 木原美悠 105 15位
5 長崎美柚 96 42位
6 芝田沙季 94 62位
7 石川佳純 86 8位
8 佐藤瞳 69 69位
優勝は平野美宇❗
今年と来年に3回ずつ行われるパリオリンピック日本代表選考会TOP32も今年は最後。これまで全日本選手権をはじめ数々の大会で最年少優勝を果たす等注目を浴びてきた平野美宇。2017年には国際大会で次々と中国のトップ選手を退け、ハリケーン平野と恐れられた。
東京オリンピック代表に選出されて団体銀メダリストとなった平野。しかし、その後新型コロナウイルス感染などもあり精細を欠いて常に一桁台を維持していた世界ランクも一時は40位台と低迷。この春にはプロ転向以来所属していた日本生命との契約も満了。木下グループと契約を結んで心機一転。
今年になって徐々に調子を取り戻してきた平野。そこにはJOCエリートアカデミー時代に担当コーチだった中澤鋭コーチとの再タッグという要因もあった。あのハリケーンと中国選手から恐れられていた頃のコーチとの再会。「すごい心強い。結果もどんどん良くなっていると思います」と主に戦術やメンタル面を担うコーチの影響を認めている。
今大会までのパリオリンピック選考ポイントは117Pの早田から大きくはなされて56Pで6位に甘んじていた平野。2回戦で高校生の横井咲桜に苦しみながら4ー3で逆転すると、準々決勝では長年のライバル伊藤美誠にストレート勝ち。更に、今大会好調の芝田沙季を4ー2で退けて、現在日本で最強とも言える早田ひなとの対決に持ち込む。
試合は序盤から平野の好調を窺わせる内容で主導権を握る。しかし、第1セットは9ー5とリードしながら最後は6連続得点を奪われて、まさかの逆転負け。続く第2セットは早田が長いリーチを生かしたラリーで前半リード。平野猛追するも届かず8ー11と及ばず、早田が2セット連取。
今までの平野なら、このまま崩れてしまったかもしれない。しかし、ここからギアを上げた平野は得意のバックハンドだけでなく、今年になって鍛えたフォアハンドからも緩急自在の攻めで試合を支配。11ー4、11ー9と連取して並ぶ。
この時点でほぼ勝負あり。故障明けで1ケ月振りの実戦となった早田にはスタミナ的にも不安があったのかもしれない。1点取る度に声を上げて完全にペースを握った平野は、正にハリケーンのような速い攻めで11ー3、11ー5と一方的な試合内容で制した。決まった瞬間、小さく拳を握り【美宇スマイル】で復活をアピールした。
現時点での選考ポイント争いでは早田が2位に49点差で独走態勢。しかし、来年の3回の選考会の他に世界選手権及びアジア選手権。そして、全日本選手権、更にはTリーグの成績などもポイントに含まれるので、まだまだ順位の入れ替わりはあるはず。ハリケーン平野の復活でますます混沌としてきたパリオリンピック選考。平野、伊藤、早田の黄金世代に若手が肉薄するのか。それとも、ベテランが息を吹き返すのか。勝負は正に下駄を履くまで分からない……。
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