錦織圭が1年8ケ月振りの大会を優勝で飾った。最高世界ランキング4位、4大大会決勝進出など男子テニス世界的名プレイヤーとして活躍してきたが、相次ぐ怪我や故障で2021年10月を最後にコートから離れていた錦織。世界上位のランキングもランク外に陥落。
その間、新しい力の台頭でロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル等のかってのライバル達もアンディ・マリー、ノバク・ジョコビッチを除いては引退か、引退を示唆。既に33歳の錦織も復活は厳しいと心配する声も聞かれたが、そんな雑音を吹き飛ばすような鮮やかな復活劇で再スタートを切った。
怪我多発の錦織圭
2007年プロ転向から孤軍奮闘で日本テニス界をリードしてきた錦織圭。ツアー12勝、世界ランキング4位、全米オープン準優勝、リオデジャネイロ五輪銅メダル等の輝かしい実績。178センチと日本人としては恵まれた身長だが、180センチは優に越える外国選手の中では小柄の部類。圧倒的なサーブ力からの超攻撃的プレーの多い外国選手とは対極の、フットワークの良さ、バリエーション豊かなショット、粘り強いストロークが錦織の売り。
しかし、体格の差を補うプレースタイルを突き詰めていくのは体への負担増と、疲労による故障という負のスパイラルに陥りかねない。プロ入り2年後の2009年、4大大会でも善戦してランキング56位まで上げてきた5月、ウィンブルドンを前に右肘疲労骨折で欠場。その後も腹筋、右足首、左膝、右足親指などの故障を繰り返しながら2014年全米オープン準優勝の快挙達成。以降も何度となく欠場、復帰を繰り返してきたが、2022年左股関節手術で長期離脱、今大会が1年8ケ月振りの復帰戦。
今大会の錦織圭
今大会のカリビアン・オープンは錦織が休養前に主戦場としていたツアーの下部チャレンジャー大会。世界ランキング3桁はおろか1000番台の選手も参加する、かっての錦織からしたら格下の大会。しかし、2022年の左股関節手術、更にリハビリ中の右足首負傷でプロ入り後最長のブランクでランキング圏外からの再スタート。さすがの錦織も「3、4大会で初勝利出来たら……」というコメントまで出していた。
一回戦の相手は世界ランキング333位のクリスチャン・ランモ。持ち前の鋭いリターンやフットワークで圧勝。難なく2回戦に進出。2回戦のミッチェル・クルーガーは第1セットを先取され苦しんだが、第2セット以降は相手のセカンドサーブに狙いを定めて得意のリターンで逆転。準々決勝は254位のアダム・ウォルトン戦。休養日なしの戦いを正確なファーストサーブから有利なストローク戦に持ち込み快勝。「1回勝つ事が目標」から「出来る限りのところまで頑張りたい」と上方修正。
準決勝のグスタ・ボエイデ戦は試合をこなす度に冴えてきたショットの精度でミスの多い相手を圧倒。フットワークの良さや巧みなドロップショットも決めてストレート勝ち。復帰戦でいきなり優勝のかかる相手は世界1118位ながら、昨年のウィンブルドン・ジュニアの部で準優勝の19歳のホープ、マイケル・ゼン。第1セットから力の差を見せ付け、テンポの速い攻めで相手を圧倒し6-2で先取。第2セットは疲れが見えた錦織が5-2から追い付かれたが、最後に踏ん張って復帰を優勝で飾った。
今後の錦織圭
下部ツアーとはいえ、1年8ケ月振りの復帰戦を優勝という最高の形で終えた錦織。「1勝するのに3、4大会は要するかも。今大会はまず一つ勝てれば……」等というコメントが出ていた程、自信はなかったようだ。しかし、試合を重ねる毎にショットの精度が上がり、試合感も戻って自信を取り戻し優勝に繋がった。今大会の優勝で75ポイントを獲得し、消滅していた世界ランキングで492位が確定。
錦織同様に股関節手術で世界ランキング839位まで落ちた経験がある元世界ランキング1位アンディ・マリーから「よくやった圭、カムバック戦で勝利」と祝福のツイートを送られた錦織。束の間の休息を挟んで7月3日からの下部ツアーに再び参戦する予定。「自分でもびっくりするくらいいい結果が出た。夏の全米オープン目指して頑張りたい」という錦織。ノバクジョコビッチやアンディ・マリーらのライバルが待つ、4大大会の舞台へ精神的に更にたくましくなった錦織が再び駆け上がっていく。
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