
大相撲夏場所で優勝した大の里が満場一致で第75代横綱に昇進
その一方で、数々の記録を残してきた元横綱白鵬が相撲協会退職
明暗を分けた期待の新横綱と、相撲史に残る大横綱の真逆のリポ
唯一無二の領域へ大の里
予想通り圧倒的強さで一発回答で綱取りに成功した横綱大の里。年6場所制では輪島の21場所を大幅に上回る13場所。新入幕からでは大横綱大鵬の11場所より速いわずか9場所での昇進。
その他、これまでも数々の記録を更新している。中でも特筆すべきは、史上初の一度も負け越し無しでの横綱昇進。これから、更に色々な記録を打ち立てて【唯一無二】の領域へ向かっていく。
相撲史を紐解いてみると、ここ二十年程はモンゴル勢に席巻されてきた。第66代若乃花以来、アメリカ出身武蔵丸に続いてモンゴル勢が4代続き、大の里の師匠稀勢の里まで日本人横綱が誕生していなかった。
この国際化の中で日本人に拘るのもどうかという意見もあるだろう。しかし、国技の大相撲にとっては日本人横綱は別格のもの。稀勢の里は残念ながら怪我の影響で十分に力を発揮出来ずに引退。
その師匠の無念を晴らすべく愛弟子の大の里が日本人横綱の系譜を引き継ぐ。如何にも日本人が好みそうな展開を見せての横綱昇進。師匠の教えに沿って、相手の当たりを受けて攻め返すという、王道の横綱相撲で一時代を築いていくことだろう。
一方、角界ではライバルが存在してこそ盛り上がるという見方もある。栃若時代を筆頭に柏鵬、輪湖などオールドファンにとっては懐かしいのだろう。豊昇龍の奮起で【大豊時代】となるか。唯一無二の【大の里時代】到来か注目していきたい。
身から出た錆なのか白鵬
大の里の横綱昇進で盛り上がる陰で、静かに各界を去るのが元横綱白鵬。歴代最多の優勝回数45を誇る、ある意味では唯一無二の存在だったとも言える大横綱。
一方で、粗暴な取り口やお騒がせな言動が問題視されて処分を受ける事も多かった。特に印象に残るのは、勝つ為には手段を選ばない横綱らしからぬ見苦しい立ち合いや、張り手の多用。
大の里が師匠から受けて目指す横綱像とは真逆な存在の横綱だった白鵬。そして、宮城野部屋を継いでからは元前頭の北青鵬の暴力事件の監督責任を問われる。2階級降格と部屋閉鎖に追い込まれてしまった。
昨年4月から弟子と共に伊勢ヶ浜部屋に転籍。1年以上経過したが、閉鎖解消の気配がなかった。更に、伊勢ヶ浜親方の退職によって、以前から折り合いが悪かった元横綱照ノ富士が白鵬が預けられた伊勢ヶ浜部屋を継承。
それによって、後輩のモンゴル出身横綱の下につく事になる。それへの反感もあって自ら既に退職届を提出済み。6月2日の臨時理事会で受理されて退職が決まった。
私から見れば自ら蒔いた種としか思えないが、そこは判官贔屓の日本人。SNSでは相撲協会への心ない投稿が相次いでいる。豊昇龍と大の里には白鵬を反面教師として、横綱の品格を示して二人で角界を盛り上げて欲しい。