
新横綱と新しい会場IGアリーナの誕生で、大いに盛り上がる大相撲名古屋場所
東西に若い横綱が揃い、近年の平幕中心の優勝争いから上位陣主導に変わるのか
今場所の焦点の大の里を中心に、優勝争いと大関争いのリポートをお届けしたい
唯一無二の存在へ大の里
『唯一無二』を掲げて新横綱の場所へ向かう大の里。幕下付出から7場所で幕内初優勝、9場所で大関昇進、そして13場所で横綱に。数々の最速記録を携えて横綱昇進を果たした大の里。
唯一無二というからには、他の横綱、大関陣を従えて孤高の領域へ向かうという覚悟の表れか。最近でいえば、先日相撲界を去った元横綱白鵬並みか、それ以上の存在を意識しているのだろう。
大言壮語とも言われかねない、その言葉を自ら発したのは己の絶対的実力の誇示なのか。あるいは、敢えて己にプレッシャーをかけて更なる高みを目指す覚悟なのか。そのスタートが今場所になる。
先場所後は横綱昇進に伴う行事などで稽古不足も心配される。現に豊昇龍と行った三番稽古では調整不足が露わになっていた。しかし、その後のほぼ一週間で基礎運動などをこなして上り調子。
新小結欧勝馬を相手の初日。気負ったのか珍しく立ち合い突っ掛けた感じで、仕切り直し。しかし、二度目の立ち合いでは相手に何もさせずに一方的な寄り切りで圧勝。無難に白星スタート。
はやって頭から当たる立ち合いではなく、胸で受け止めてから出るか、突き押しで攻めるのが大の里の相撲。右差し、左からの寄りや押っつけの型を更に磨いていけば簡単に負ける事はないはず。やや苦手意識のある豊昇龍に勝って孤高の領域へ一直線。
横綱での初優勝へ豊昇龍
192センチ、191キロの堂々たる体格の大の里に比べて、150キロの先輩横綱豊昇龍。身長は188センチあるだけに、少し前なら大柄な部類に入ったかもしれないが、超大型化した最近の大相撲では軽量の部類ともいえるだろう。
それだけに、大の里みたいな受け止めてからの相撲は出来ない。瞬発力を生かした速い攻めが必要になる。それが嵌まった時には強いが、相手に受け止められたり、あるいはいなされたりした時が課題。
横綱昇進後の2場所は5勝5敗5休、12勝3敗と安定感に欠ける。幸い、今場所当たる顔触れには立ち合いからの変化に頼る相手は少ないが、慌てて出ていくと土俵際で墓穴を掘る事にもなりかねない。
以前のように平幕主導の優勝争いなら、2つ3つの取りこぼしでも挽回可能。しかし、大の里と優勝争いするなら序盤戦の取りこぼしは致命傷になりかねない。大の里と併走していけるかが試される。
霧島と若隆景の大関争い
豊昇龍と大の里が相次いで横綱昇進を果たし、大関は琴桜一人。そして、次の大関候補の中から飛び出してきたのが3人の関脇陣。残念ながら大栄翔は休場で一歩後退。先場所11勝で西関脇の霧島が大関復帰への足掛かりを築けられるのか。
首を痛めて低迷して大関から陥落したが、その後も一場所おきで2桁勝利の成績。やや安定性には欠けるが実力は衰えていない。粘り強い相撲で今場所も2桁の成績を残し、来場所を昇進の場所に出来るか注目したい。
もう一人は西張出関脇の若隆景。こちらもややムラはあるが、3年前には幕内優勝も果たし、7場所連続で関脇在位と大関候補の一番手と言われた存在。そこから怪我で幕下まで陥落。
そして、先場所は西小結で12勝。その前は前頭筆頭で9勝を挙げている。仮に今場所も12勝以上なら大関当確の可能性もある。最低でも2桁勝利なら、来場所大関昇進を懸ける場所になる。右四つと強烈な押っつけがあり、実力は十分。
優勝争いは本命が大の里。稽古不足は気になるが一番毎に調子を上げて、先場所同様の千秋楽を待たずに優勝なるか。
対抗は豊昇龍。序盤の取りこぼしが気になるが、大の里戦は対戦成績でリード。併走か悪くても一つの差で行ければ優勝も可能か。
余程の事がない限りは両横綱の優勝争い。波乱があれば、大関を狙う霧島と若隆景
琴桜が相変わらず精彩に欠ける状態では、この4人の優勝争いに絞られる。