早いもので今年も半分経過。まだまだと思っていたパリオリンピックまで約3週間
各競技、種目での代表が続々決まっている中、注目された陸上日本選手権が終了
パリ切符を求めて選手達がしのぎを削った中から、特に印象的なレースのリポート
男子100メートル
マラソンと共に陸上の花形種目として注目される男子100メートル。パリオリンピックへの参加標準記録は殊の外厳しく10秒00。一時、9秒95の日本記録保持者山縣亮太をはじめ、9秒台が続出したが最近は難しい状況。
世界選手権8位以内で今年9秒台を記録したサニブラウン・ハキームが唯一の内定者。3名の代表枠はあるが、残り2へのチャンスは、陸上日本選手権で優勝して10秒00以内などという厳しい一発勝負。
山縣亮太、多田修平の東京オリンピック代表は故障でリタイア。注目は連覇を狙う坂井隆一郎、成長著しい東洋大学の柳田大輝、好調を伝えられる東田旺洋、そして桐生祥秀など。小池祐貴を除く有力選手は順調に決勝進出を決めた。
例によって低い姿勢から抜群のスタートを決めて坂井が序盤リード。中盤から徐々に柳田が並び掛けて2人の争いも、最後に猛然と追い込んだ東田が加わる。粘った坂井が連覇達成も記録は10秒13で代表内定ならず。
女子100メートル障害
女子100メートル障害はライバルとしてしのぎを削ってきた、寺田明日香、福部真子、田中佑美の三選手に注目。まずは、準決勝1組では福部が参加標準記録の12秒77を突破する12秒75で1位通過。
更に2組では田中が日本歴代2位となる12秒85の好記録。また寺田も同組で2着で悠々と通過。しかも、1組の追い風0.8メートルに対して、こちらは向かい風0.3メートルという条件の差があり、決勝は予断を許さない状況。
決勝は福部が優勝した場合は代表が内定。田中、寺田は参加標準記録を突破しつつ優勝という厳しい結果が求められる。そして、決勝は雨の上に向かい風0.2メートルという微妙な条件。
レースはスタート直後から飛び出した福部を田中、寺田が追う予想通りの有力3選手の争い。結局、競り合いを制して福部が逃げ切り、代表内定を決めた。レース後、手を繋ぎ、肩を組んで労い合った勝者と敗者の姿が印象的だった。
女子中距離界注目の2人
今回の日本選手権はパリオリンピック代表が懸かった大会ではあるが、それと共に将来の陸上競技を背負って立つ若い力にも注目が集まった。奇しくも女子中距離で同じ16歳、高校2年生の2人にスポット。
中学3年時に1500メートルの全国大会優勝。更に全国女子駅伝で快走し一躍名前を知らしめたドルーリー朱瑛里。高校進学後も活躍したが、SNSの怪情報や過剰な表現に苦しめられ、一時不調説も流れた。
しかし、U20アジア陸上選手権1500メートルで4分21秒41で圧勝。田中希実との対決が注目された今大会。速いペースの田中を追い掛ける展開になったが、最後は力尽き4分18秒16で7位に終わった。
もう一人はサッカー日本代表久保建英のいとことして注目を集める久保凛。中学時は800メートルのランキングでドルーリーに遅れを取る。しかし、1500メートルを主戦場とするドルーリーに対して800メートルで進化。
最近では高校生はもちろん、社会人相手にも好勝負。自信を持って臨んだ初の日本選手権800メートル。無理に逃げず好位に付け、残り250メートルで田中がトップに立った直後に抜け出し、独走の圧勝で高校生チャンピオンになった。
二人ともパリの切符は掴めなかったが、これからの中距離界を引っ張っていく逸材。久保は建英との関係もあり、色々取り沙汰される可能性が高い。しかし、ドルーリー共々過剰な騒ぎで若い芽を摘むような事だけは止めて欲しい。