ナイキの厚底シューズがマラソン界を席巻している。世界の有名選手はもちろん、日本でも相次いで日本記録を更新した設楽悠太や大迫傑をはじめ、MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)で上位入賞したほとんどの選手が履いて、今やマラソンシューズといえばナイキという状況になっている。
今回で100年を迎えた『第96回東京箱根間往復大学駅伝』でもほとんどの選手が履いていて、区間新記録や区間賞の選手は全てナイキの厚底シューズ。新記録続出のハイレベルと言われる今大会だが、それは選手のレベルアップというより厚底シューズによるもの、といっても過言ではない。
第96回東京箱根間往復大学駅伝の成績と厚底シューズの影響について考えてみた。
● 第96回東京箱根間往復大学駅伝
•総合成績
1位 青山学院大 10時間45分23秒(大会新)
2位 東海大 10時間48分25秒
3位 國學院大 10時間54分20秒
4位 帝京大 10時間54分23秒
5位 東京国際大 10時間54分27秒
6位 明治大 10時間54分46秒
7位 早稲田大 10時間57分43秒
8位 駒澤大 10時間57分44秒
9位 創価大 10時間58分17秒
10位 東洋大 10時間59分11秒
11位 中央学院大 11時間1分10秒
12位 中央大 11時間3分39秒
13位 拓殖大 11時間4分28秒
14位 順天堂大 11時間6分45秒
15位 法政大 11時間7分23秒
16位 神奈川大 11時間7分26秒
17位 日本体育大 11時間10分32秒
18位 日本大 11時間10分37秒
19位 国士舘大 11時間13分33秒
20位 筑波大 11時間16分13秒
関東学生連合 11時間12分34秒
総合成績トップの青山学院大はライバルと見られた東海大の往路での伸び悩み、東洋大のまさかの出遅れなどを尻目に終始安定した走りで、往路で4位の東海大に3分22秒の差をつけた時点で、ほぼ優勝を手中にした。
2位の東海大は復路新記録5時間23分47秒の意地を見せたが、層の厚い青山学院大も好タイムで駆け抜けて20秒しか差を詰める事が出来なかった。
また、上位常連校の明治大、早稲田大、駒澤大、東洋大などを抑えて健闘した3位國學院大、4位帝京大、5位東京国際大の走りは見事の一言で、来年以降の戦力図に変化をもたらす可能性があり、楽しみになってきた。
● 高速レースと厚底シューズ
今大会は空前のハイレベルと言われている。総合成績1位の青山学院大、2位の東海大は共に従来の大会記録を破っている。その他、往路は青山学院大、國學院大、東京国際大、東海大の4位まで記録更新。
更に、往路は1区を除いて2区相沢晃(東洋大)、3区ビンセント•イエゴン(東京国際大)、4区吉田祐也(青山学院大)、5区宮下隼人(東洋大)。復路でも、6区館沢亨次(東海大)、7区阿部弘輝(明治大)、10区嶋津雄大(創価大)と、全10区中じつに7区間で区間新記録。
さすがに、急にこれほどのレベルアップは考えられず、その要因はナイキの厚底シューズ『ナイキ ズームX ヴェイパー ネクスト%』と、判明した。
何と、往復10区間210人中177人がナイキの厚底シューズを履いていた。更に、10区を除く区間賞と大会新記録は全て『ナイキの厚底シューズ』が叩き出したものだったという。
恐るべし『ナイキ厚底シューズ』と言えよう。思えば、スポーツは用具との戦いとも言えよう。ゴルフのクラブ、水泳の競泳用水着、陸上競技やスピードスケートのスーツ……、全ての競技で0•1秒、いや0•01秒を縮めるために用具の開発に勤しんできた。
今大会の『記録ラッシュ』が、全てシューズのおかげとは思わないが、これほどの急激な記録ラッシュは『ナイキ厚底シューズ』なくしてはあり得なかったのも事実だろう。来年以降は『厚底シューズ』だけによる記録ラッシュと言われないように、更なる選手自身のレベルアップが問われる。
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