第104回全国高校野球選手権大会は仙台育英が東北勢として初めての優勝という感動のシーンで幕を閉じた。今年も新型コロナウイルスに翻弄される中、地方大会中に感染して無念のリタイアを余儀無くされたチームもあった。更に、予選を勝ち抜いて甲子園出場を果たしながら感染したチームもあった。しかし、高野連の配慮で抽選の時点で当該チームの日程を調整するなどして出来得る限りの最善の策で何とか終える事が出来た。
しかし、それでも県立岐阜商業のように多数の登録選手の入れ替えを余儀無くされる等の影響を受けたチームもあったが、棄権する事無く戦った姿に安堵している。また、地方予選で感染して棄権したチームに対して、大会終了後に記念試合として手を差し伸べた学校もある等、勝敗を超えた感動的なシーンは高校野球の在り方を再認識させてくれた。今年は野球伝来150年という記念の年だったが、今般の世界情勢や感染状況などに負ける事なく更に200年へと続いてくれる事を願わずにはいられない。
今大会の全試合結果
8月6日 1回戦
国学院栃木 10ー3 日大三島
樹徳 3ー7 明豊
一関学院 6ー5 京都国際
8月7日 1回戦
八戸学院光星 7ー3 創志学園
愛工大名電 14ー2 星稜
盈進 7ー12 鶴岡東
近江 8ー2 鳴門
8月8日 1回戦
日本文理 0ー11 海星
天理 2ー1 山梨学院
高岡商 3ー13 敦賀気比
市船橋 6ー5 興南
8月9日 1回戦
横浜 4ー2 三 重
聖光学院 4ー2 日大三
二松学舎大付 3ー2 札幌大谷
杜 10ー1 県岐阜商
8月10日 1回戦
大阪桐蔭 6ー3 旭川大
聖望学園 8ー2 能代松陽
2回戦
明秀日立 2ー1 鹿児島実
8月11日 2回戦
仙台育英 10ー0 鳥取商
佐久長聖 4ー14 高松商
九州国際大付 2ー1 明徳義塾
富島 0ー5 下関国際
8月12日 2回戦
一関学院 5ー7 明豊
愛工大名電 6ー5 八戸学院光星
近江 8ー3 鶴岡東
天理 2ー4 海星
8月13日 2回戦
浜田 5ー3 有田工
九州学院 14ー4 帝京五
国学院栃木 5ー3 智弁和歌山
市船橋 6ー8 敦賀気比
8月14日 2回戦
聖光学院 3ー2 横浜
二松学舎大付 7ー5 杜
聖望学園 0ー19 大阪桐蔭
8月15日 3回戦
仙台育英 5ー4 明秀日立
高松商 2ー1 九州国際大付
愛工大名電 5ー2 明豊
近江 7ー1 海星
8月16日 3回戦
浜田 3ー9 下関国際
九州学院 4ー0 国学院栃木
敦賀気比 1ー8 聖光学院
大阪桐蔭 4ー0 二松学舎大付
8月18日 準々決勝
仙台育英 6ー2 愛工大名電
近江 7ー6 高松商
大阪桐蔭 4ー5 下関国際
聖光学院 10ー5 九州学院
8月20日 準決勝
聖光学院 4ー18 仙台育英
近江 2ー8 下関国際
8月22日 決勝
仙台育英 8ー1 下関国際
熱戦譜アラカルト
和歌山県としては1939~1940年の海草中以来82年振りという連覇を狙った智弁和歌山。投打共に充実していて大阪桐蔭の春夏連覇を阻止する一番手と思われていたが、国学院栃木にまさかの逆転負け。初回2点先取されたが2回表に追い付き、6回表に勝ち越して3ー2。しかし、その裏すぐに2本のタイムリー二塁打で逆転を許す。8回には4番平井悠馬に一発を浴びて3ー5での敗退。難しいと言われる甲子園初戦。しかも、相手は開会式直後の一戦に10ー3と快勝して波に乗る国学院栃木。自慢の打線が爆発する事もなく連覇か消えた智弁和歌山。改めて初戦の怖さを思い知らされた一戦。
誰もが優勝候補の筆頭と疑わなかった大阪桐蔭。しかし、やはり初戦は一時3点のリードを許す等苦戦。しかし、その鬱憤を晴らすように2回戦では埼玉の強豪聖望学園に19ー0の圧勝。2日後の二松学舎大付戦はエース川原嗣貴の完封と王者らしさを発揮。そして迎えた準々決勝。1回裏2点先取するが小刻みな点の取り合いになり6回終了時点で3ー4とリード。しかし、下関国際の2枚看板古賀康誠、仲井慎の前に突き放す事が出来ない。逆に9回表一死2、3塁から4番賀谷勇斗にタイムリーを打たれ逆転を許す。最後の攻撃も好投を続ける仲井に三者凡退に終わり、春夏連覇の夢を絶たれた。
どちらが勝っても初の優勝旗奪取となる仙台育英ー下関国際。殆んどの高校で投手複数制は採用されているが、登録した5投手全てが140キロという仙台育英のレベルは圧巻。しかも、複数制とはいえ他チームは2人か多くて3人ぐらいのところ、仙台育英は初戦から5投手を使用。全て継投で優勝を果たした。対して、下関国際は古賀康誠と仲井慎の2人制。一日空いたとはいえ準決勝で130球投げた仲井が踏ん張り切れなかったのは蓄積した疲労もあったのだろう。ゲームは3回まではお互いに無得点だったが、先制した仙台育英が7回5番岩崎生弥の満塁ホームランで止めを差した。
東北勢優勝への道程
これまで優勝がなかった東北勢。しかし、決して弱い地方ではなかった。第1回大会で秋田中がいきなり決勝進出を果たし、京都二中に延長13回サヨナラ負け。1969年には伝説と化した三沢(青森)が太田幸司を擁して決勝進出。松山商と延長18回無得点で引き分け再試合。翌日も一人で太田が投げ抜いたが2ー4で涙を呑んだ。更には、1971年磐城(福島)が165センチ左腕田村隆寿の力投もむなしく、決勝で神奈川桐蔭学園に0ー1の惜敗。全て公立での躍進は決して東北の地が野球後進地方ではない事を物語っている。
その後、平成に入って仙台育英、東北の宮城勢、光星学院(青森)などの私学が躍進して優勝を窺う。2018年には久し振りに公立の金足農(秋田)の吉田輝星がほぼ一人で投げ抜いたが力尽きた。夏の甲子園だけで9回決勝進出を果たしながら優勝旗に手が届かなかった。これらを振り返ってみると、殆んど一人の好投手が投げ抜いて決勝では余力がなく力尽きたというパターン。今大会の仙台育英は複数の好投手を揃えて挑んだ結果の栄光。
ただ、確かに東北地方のレベルは上がってはいる。しかし、仙台育英は他県からの所謂『野球留学』は多い方ではないが、私立では近畿地方からの野球留学を多数抱えて甲子園を目指すチームも多い。東北勢の最近の活躍挍は殆んど私立。甲子園で好成績を挙げたとはいえ、殆んどが他県からの選手ではレベルアップとは言い難い。以前、高野連の方で野球留学に制限を加えるという意見を発した人がいたが、猛反発で消えてしまった。私はこの意見に賛成。今回の優勝は本当に評価する。が、地元出身の選手で固めた公立高校が躍進してこそ、東北勢の真のレベルアップの結実。更なる精進を期待したい。
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