日本でもオミクロン株の感染が徐々に拡大しつつあるが、世界でも早くから感染が確認された香港。その香港で開催された香港国際競走に日本馬が大挙参戦した。
私は度々競馬ブログ等で今は参戦を見送るべきと発信してきた。政府やJRAから参戦する陣営に懸念を表明して欲しいと願っていたが、危機管理能力に欠けるのか全く触れがなかった。
そんな中、悲劇が起きてしまった。
香港国際競走
香港国際競走とは毎年12月第2週頃に香港シャティン競馬場で行われる国際招待競走。主催は香港ジョッキークラブ、メインスポンサーがロンジンになっている。当日行われるGⅠは、香港ヴァーズ(芝2400m)、香港スプリント(芝1200m)、香港マイル(芝1600m)、香港カップ(芝2000m)の4レース。
日本馬はこれまでも多数参戦して活躍してきた。日本から近いので馬の輸送が楽な上に、招待された場合は招待馬の輸送費と、関係者の渡航費が全額開催側の負担となる等の好条件が、参戦馬が多い原因のようだ。これまでの参戦で4レース全て日本馬は制していて、エイシンプレストン、ステイゴールド、ロードカナロア、モーリス等の名馬も制覇している。
今年はGⅠ4レースに12頭が参戦。いずれも優勝争いの出来るハイレベルな馬達の出走で、日本国内でも馬券が発売されて盛り上がっていた。4レースの香港ヴァーズで、グローリーヴェイズか直線外から差し切って、2度目のV。8レースの香港カップは日本馬2頭の叩き合いを制したラヴズオンリーユーが、今年海外GⅠ3勝目の快挙を達成。
香港スプリント
GⅠ馬3頭が参戦して最も期待された香港スプリント。しかし、直線入り口で先行していた香港馬アメージングスターが落馬。これに巻き込まれた福永祐一騎乗のピクシーナイト等3頭が落馬。昨年の覇者ダノンスマッシュもあおりを受けて8着。難を逃れたレシステンシアが2着入線という、まさかの決着。
競馬に落馬は付き物とも言えるが、今回のような4コーナーから直線という、一番密集し尚且つスピードが乗る場所だっただけに後ろの馬は避けようがなかった。特に、ピクシーナイトは落馬した馬に乗っかかる感じで激突し、鞍上の福永は一回転して叩き付けられている。不運としか言い様のない事故だった。
悲運の名手と名馬
避けようがない不運な事故と述べたが、それでは済まされない要因がある。冒頭で触れたが何故オミクロン株感染拡大のこの時期に香港遠征させるのか。騎手は帰国後2週間の待機期間がある。従って、国内のレースに3週間騎乗出来ない事になる。国内のGⅠ戦線佳境のこの時期の3週間もの不在は、騎手にとって余りにも痛い騎乗機会減と言わざるを得ない。
もちろん、最終的には香港遠征を承諾した福永自身の責任と映るが、ピクシーナイトは馬主がシルクレーシングで音無厩舎所属。香港マイル出走のインディチャンプも同じ馬主と厩舎所属。しかも、2頭とも福永騎乗でGⅠ制覇した馬。その2頭が揃って香港遠征としたら、騎乗を断る訳にはいかないのが実情。
ピクシーナイトは前走スプリンターズSでGⅠ制覇とはいえ、まだ3歳。今年既に6戦している事を考慮すれば、冬場は放牧に出して成長を促すべき。しかも、今回のレースは3歳馬ながら年長馬と同じ57キロでの出走になる。わざわざ、香港遠征の理由が見当たらない。賞金目当てに無理な参戦を決めて、先のある有望株を潰した事になったら競馬界の損失。
結局、福永は左鎖骨骨折。 ピクシーナイトは左前膝骨折という人馬にとって最悪の事態になってしまった。確かに、馬主も調教師も経済活動の一環として出走させるのは紛れもない事実。しかし、目の前の果実ばかりを追って円熟の手綱捌きをみせる名手と、スプリント界を背負って行く期待馬を失う事になりかねない無謀な参戦には反省を促したい。
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