第86回日本ダービーが終わって早くも1ヶ月が過ぎた。現在の競馬はサイクルが速く、ダービーの翌週には2歳馬による新馬戦が始まる。2歳馬のG1が新設され、重賞競走が充実した事もあってデビューが早くなっている。
以前はクラシックを狙うような期待馬は早くて10月、中には年明けてデビューする馬もあったが、現在の番組編成からは年明けからのデビューではクラシック戦線に間に合わせるには賞金的に厳しい上、たとえ出走したとしても日程上の都合で馬に無理を強いる事になるので、やはり遅くとも年末までにはデビュー戦を迎えたいところだろう。
● 新馬戦デビュー勝ちの期待馬
これまで東京、阪神、函館の3場で23の新馬戦が行われた。その中で印象に残った勝ち馬3頭を紹介する。
リアアメリア(牝)中内田充正厩舎
6月1日、今年の2歳馬の初勝利を挙げたのはディープインパクト産駒の牝馬。除外が1頭出て6頭立てという寂しい頭数になったが、単勝120円という圧倒的人気に応えて2着に8馬身という圧勝だった。ゲートで出遅れて最後方からの競馬になったが、川田将雅騎手は首を上げて行きたそうなリアアメリアをなだめて追走する。4コーナーから直線に向いたところで大外を回っての5番手。先手を取った福永祐一騎手騎乗のラルゲッツアが逃げ込みを図るが、川田は慌てず持ったまま直線半ばで捕えると、最後まで追うところ無く離して8馬身差のゴール。6頭の内上位3頭を牝馬が占める等、レースレベルは分からないが、次のレースを期待させる内容だった。
サリオス(牡)堀宣行厩舎
まずまずのスタートだったが、すぐに控えて道中は6、7番手の外を回る。折り合いは付いてレーン騎手は慌てる風もなく追走。8頭立ての大外7番手で直線に入る。残り200メートル位の所で少し気合を入れると、一気に加速して鞭を入れる場面もなく1番人気のアブソルティスモに2馬身差を付けてゴール。3着は更に7馬身離れているので、この2頭の能力が抜けていた。上がり33秒1と優秀でアブソルティスモの33秒9という数字と比較しても分かるように、末脚が楽しみな馬だ。
ブルトガング(牡)手塚貴久厩舎
16頭立てと頭数が揃った中、ゲートの出が悪く後方2、3番手からのスタート。徐々に位置を上げてルメール騎手は中団後ろのインを追走。直線に入って馬場の真ん中から更に外に出して追い上げて行く。ゴール前200メートル地点で軽く気合を入れると、一気に前団を捕らえて後は鞭無しでゴール前は追う事もなく4馬身突き放した。本気で追った時の脚が楽しみな馬。1800メートルでのこのパフォーマンスはG1戦の手応えを予感させる楽しみなディープインパクト産駒。
● これから出てくる大物•良血馬
ラインベック(牡)友道康夫厩舎
今週から始まる中京開幕週に出てくる期待の一頭。金子真人氏、友道康夫師、福永祐一騎手といえば、昨年悲願のダービー制覇した福永騎乗のワグネリアントリオ。しかも、血統が父ディープインパクト、母アパパネと両親共三冠馬。合わせてG112勝という夢の配合。アパパネはラインベックが3頭目の産駒になるが、全てディープインパクトとの配合で、3頭共牡馬。1番仔のモクレレは2勝クラス5歳。馬名通りの2番仔ジナンボーは6戦4勝で、今月オープン馬になったばかり。両馬共気性に難があって3歳クラシックには縁が無かったが、「今のところは問題ない。折り合いも付く」と、友道師。「動きがいい。走りそうだ」福永も好感触でレースに臨む。
ルナシオン(牝)藤沢和雄厩舎
父ディープインパクト、母ピラミマの配合は石坂厩舎のルナステラの全妹。ルナステラは期待された割りには先月ようやく2勝目を上げたばかりだが、半兄にはバンドワゴンや昨年の大阪杯等重賞4勝のスワーヴリチャードがいる筋の通った血統。少し小柄だがノーザン天栄で順調に乗り込まれている。既にゲート試験は合格していて早ければ夏の新潟、あるいは秋の東京デビューの予定。ただ、藤沢調教師はじっくり仕上げる予定で「まだデビューには時間がかかりそう」とのコメント。名伯楽の藤沢師も期待が大きいだけに、万全の態勢で新馬戦を使うようだ。
レーヴドゥロワ(牡)池江泰寿厩舎
父キングカメハメハ、母レーヴディソールという魅惑の血統。キングカメハメハは8戦7勝でNHKマイルCと日本ダービーの変則2冠を制した名馬。一方のレーヴディソールは4戦4勝で牝馬三冠確実と言われながら無念の骨折。福永祐一とのコンビで阪神ジュナイベルF(G1)とチューリップ賞を制した時は最強牝馬とも言われた逸材。まだ第3仔で活躍馬はいないが、キングカメハメハとの仔は初めてで圧倒的強さを誇った両親の血が一気に覚醒するのを期待して、POGでは人気になっている。現在は厩舎で調教を積まれているが、新潟か小倉デビューの可能性がある。良血馬の衝撃的なデビューが待ち遠しい。
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