昨年3月24日、前代未聞の感染症により一年延期が合意となった東京オリンピック・パラリンピック。当時の安倍晋三総理は何を根拠に1年の延期を提案したのか分からないが、私自身はコロナ禍の先が見えないので2年延期すべきと思っていた。
また、当時は日本の1日の感染者数は30~250人くらい。むしろ、海外の感染拡大で他国の選手達が来日出来るか不明のために延期した意味合いが強かったと思う。おそらく、何の根拠もなく日本はこれ以上拡大する事なく尻すぼみになるだろうと、みんなが思っていた節がある。
ところが、皮肉にも変異株の流行もあって昨年をはるかに上回る感染者数で、医療現場は逼迫。3回目の緊急事態宣言発令に追い込まれている。世論も開催中止を求める声が大きく先行き不透明。オリンピックを開催すべきか否か考えてみる。
過去のオリンピック中止
オリンピック中止の声が日増しに高まってきたが、オリンピック中止なんて出来るのだろうか。日本だけだとしたら不名誉な記録にならないだろうか、と思う人もいるだろう。しかし、過去に夏季、冬季合わせて5回の中止がある。
過去に中止のオリンピック
夏季
1916年 ベルリン
1940年 東京
1944年 ロンドン
冬季
1940年 札幌
1944年 コルチナ・ダンベッツオ
5回も中止があったなんて驚いたが、その内2回も日本と知って更に驚いた。中止の理由は全て戦争。ベルリン大会は第1次世界大戦。東京、札幌大会は日中戦争。ロンドン、コルチナ・ダンベッツオ(イタリア)は第2次世界大戦。
当時、オリンピックは夏季、冬季とも同じ年に開催されていた。従って中止になる場合は必然的に同時になるケースが多くなる。また、延期は過去に例がなく昨年の延期は史上初めてとなった。
オリンピック開催賛成派
今やすっかり影が薄くなった『オリンピック賛成派』だが、それでも無観客や一部観客制限という条件付きでは4割弱の支持者がいる。それに、国、東京都、オリンピック組織委員会などは当然、コロナウイルス感染を抑えて開催に邁進する賛成派。
「人類がコロナウイルスに打ち勝った証しとして東京オリンピックを開催する」という精神論を振りかざす賛成派もいるだろう。「これまで頑張ってきたアスリートのため」とか、「こんな時だからこそ開催して明るい話題にしよう」
賛成派には上記のような抽象的な意見が多く見られる。また、「経済的損失が大き過ぎる」とか、「違約金を払わなければならないかも」という現実的な声も聞かれる。しかし、こういった疑問点に政府が説明しない事が更に不安を増幅している。
オリンピック開催反対派
開催反対派の理由はなんと言ってもコロナウイルス。最初は来日する外国人がコロナウイルス感染拡大の要因になるという意見が多かったが、「緊急事態宣言下にオリンピックなんてやっている場合ではない」の声が大半を占めてきた。
オリンピック開催のためにも、最も感染拡大を防がなければならない日本政府が、この一年何一つ有効な対策を見出だせていないのだから、上記の批判も当然。PCM検査も増やさず、医療体制の強化も出来ず、ワクチン競争にも遅れをとってしまった。
「オリンピックの予算をコロナ対策に回せ」「医療従事者が命懸けで戦っている時にオリンピックなんてやっている場合か」「イベントより国民の命と健康が優先」「オリンピックを政権浮揚の道具にするな」等と反対派のボルテージは上がる一方。
そういう声にオリンピック代表に内定した選手からも、「オリンピックは死者を出してまで行われる事ではない」「皆さんが反対なら開催する意味がなくなってしまう」「絶対に開催しなくてはいけないと思えないところもある」と苦しい思いが寄せられる。
正直、私はスポーツ観戦もやる事も好きでワクワクしながら、2020年夏を楽しみにしてきた。しかし、1年延期して更に感染状況が悪化し、国民や選手からも懸念の声が上がる以上は更に1年延期。それが無理なら中止もやむを得ないと考えている。
政府には腹をくくって欲しい。もう、「コロナに打ち勝った証し」「アスリートファースト」という綺麗事は言わない。腹を割って『中止出来ない理由』『中止した場合のデメリット』を明かして、国民と一緒に最後の判断を下して欲しい。