全てのスポーツシーンを奪ってしまったコロナウイルス。しかし、緊急事態宣言も解けてようやく、野球、サッカー、ゴルフ等に再開の兆しが見えてきた。プロ野球は6月19日の開幕を目指して他球団との練習試合も始まった。
しかし、深刻なのは高校野球。春の選抜大会に続いて、夏の全国高校野球大会も中止。各都道府県単位での独自の大会が開催されるようになったのは救いにはなるが、甲子園を目指して3年間白球を追ってきた球児にとっては過酷な夏になってしまった。
そんな中、高校球児にもコロナウイルス禍に喘ぐ国民にも、ほっこりしそうなニュースが続いて届けられた。阪神球団と甲子園関係者、更に高野連から相次いだ暖かい話題をレポートする。
● 全国高3球児に甲子園の土
阪神と阪神甲子園球場が6月8日、日本高野連に加盟する硬式、軟式野球部の3年生全員に『甲子園の土』が入ったキーホルダーを贈ると発表。コロナウイルス禍の中、春の選抜高校野球大会に続いて夏の全国高校野球大会も中止。
「選抜も夏の甲子園も無くなって、気持ちをどこにぶつけていいか分からないような報道を見ていました」「挑戦すら出来ずにみんな悔しい思いをしているはず。背中を押せるものはないかと思って決めた」と、矢野阪神監督。
5月中旬から矢野監督、コーチ、選手がオンラインミーティングの中で球児のために出来る事が話し合われ、球団、甲子園球場の賛同を得たという。キーホルダーに入れる土は矢野監督、コーチ、選手、甲子園球場関係者が直接グラウンドから集めるという。
約5万人と言われる球児への支援に、日本高野連の八田会食は、「球児への熱いエールと共に、憧れである甲子園球場の土が入ったキーホルダーを頂いた。皆様に感謝申し上げる」とコメントした。
矢野監督は、「このキーホルダーを持った子と会えたらすごく嬉しい。かばんやリュックに付けてくれる子と会うかもしれない。プロの世界で会う子もいるかもしれない」と、将来に思いをはせた。
● 選抜大会32校の交流試合
『甲子園の土の入ったキーホルダー』から一日おいた6月10日、今度は高野連から新たなプレゼント。中止になった今春の第92回選抜高校野球大会に選ばれていた32校を招待して『2020年甲子園高校野球交流試合(仮称)』を、8月10~12日と15~17日に開催すると発表。
甲子園球場での開会式は行わず、対戦カードは7月18日に各校主将のオンラインで行い、勝敗に関係なく各校1試合だけ。ベンチ入りは例年より2人増の20人。その他、部長、監督、記録員1人、補助員5人等の合計30人以内だけ招待する。
更に、宿泊は試合前日と当日の最大2泊。北海道、東北以外は公共交通機関を使わないで地元から貸し切りバスで来場。雨天の場合は順延するが、1日3試合以内として延長戦は行わない等の感染防止対策に務める。
選抜高校野球大会中止時に、「何らかの形で甲子園球場の土を踏ませてあげたい」と話していた八田会長。「交流試合は日本高野連の挑戦であり、新たな挑戦に向かう高校球児へのメッセージ」と語った。
春の選抜高校野球大会中止に次いで、夏の全国高校野球大会も中止になって3年間白球を追ってきた球児には、これまでの努力を否定されたような辛い一年になってしまった。しかし、『各都道府県独自の大会』『甲子園球場の土の入ったキーホルダー』『2020年甲子園高校野球交流試合』の三点セットを力にして、それぞれの新たな夢に向かって進んで欲しい。