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正代13勝2敗、熊本県出身力士初の優勝!大相撲9月場所回顧

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大相撲9月場所はコロナウイルス感染対策の都合上、2500人という観客の中で行われ、関脇正代が13勝2敗で熊本県出身力士として初めての天皇賜杯を手にした。白鵬、鶴竜の両横綱が休場で予想されたように大混戦になり、中日8日目には2敗力士が9人。

大関貴景勝、関脇正代以外は全て平幕という史上稀にみる大混戦。そこから一人また一人と星を落として、一時は初日から3連敗で優勝争いの圏外と思われた大関朝乃山にも自力優勝の目が現れた。しかし、最後まで力強い取り口で中日以後白星を並べた正代が念願の優勝を果たした。

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● 初優勝と大関を手にした正代

平成26年3月場所前相撲、翌5月場所の序の口優勝から一度も負け越し知らずで快進撃を続けた正代。序の口以来ちょうど2年後の28年5月場所に東前頭2枚目で初めて6勝9敗で挫折を味わう。そして、それが3年半の長いトンネルの始まりになった。

その後の正代は一時は三役も経験したが幕内上位から中位の間を行ったり来たり。その間、後輩の御嶽海、貴景勝、朝乃山に次々に追い越され優勝をさらわれ、貴景勝、朝乃山には大関昇進でも後れを取ってしまう。

立ち合いに胸を反らせる癖が力強い当たりに欠ける要因になると共に、相手に押し込まれる格好の原因にもなって体を活かしきれない相撲が続く。意識が変わったのは昨年から。「僕はこのままでいいのか」稽古嫌いを返上して、居残り稽古を開始。

相変わらず胸を反らせはするが、力強い下半身でしゃにむに前に出る相撲で再び開花。入幕以来初めて前頭2桁の番付に落ちた昨年11月場所から、11勝、13勝、8勝、11勝、そして今場所13勝で賜杯を抱いた。

30日に開かれる番付編成会議と理事会で大関昇進まで確実にした正代。ただ、私的にはもう一場所見てからが妥当と思う。最近3場所が8勝、11勝、13勝で32勝しかない上に両横綱が休場。更に、今場所前から大関獲りという意識がなかっただけに、今後プレッシャーに耐えられるかが心配。

しかし、急成長で安定感と力強さを身に付けて大関と同等の実力があるのは確かだろう。また、両横綱共に全盛期の力は無くいつ引退してもおかしくない状況を考えれば、三大関で切磋琢磨して横綱を目指すのも悪くはない。来場所から更なる高みを目指して頑張って欲しい。

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● 力負けした形の両大関

正代に後れを取った形の両大関だが、それ程悪くはなかった。朝乃山は出稽古禁止のあおりを食ったのが不運。かって隆盛を極めた高砂部屋も現在は関取が朝乃山ただ一人。幕下以下の力士相手だけの稽古では立ち合いの力強さに欠け、思うような稽古が出来なかったはず。その不安が初日からの3連敗に現れたが、その後の10連勝は朝乃山の強さを現すもの。三大関になっても朝乃山が綱取りの本命に変わりはない。

貴景勝は先場所途中休場した故障からの回復度が懸念されたが、中日まで2敗はしたものの勝った相撲はこの人らしい突き押しの力強さが見られた。終盤まで優勝争いに加わって一応大関としての責任は果たした。ただ、いつも言う事だがこれから横綱を狙うなら突き押しだけでは苦しい。もう一度四つ相撲も取り入れたニュー貴景勝に挑戦して欲しい。

● 最後まで盛り上げた平幕力士

横綱不在の場所が盛り上がった要因は最後まで優勝争いに加わった平幕力士の存在。特に、千秋楽正代との直接対決であわや優勝決定戦か、というところまで追い詰めた翔猿の活躍は特筆もの。じつに106年ぶりとなる新入幕優勝はならなかったが、その四股名のように土俵上を駆け回る多彩な動きと共に、一気に知名度がアップした。

じつは、十両英乃海の実弟で日本大学から平成27年に初土俵。順調に番付を上げて来たが体も小さく幕下上位で足踏みして、十両でも2年以上過ごして新入幕とはいえ既に28歳。今後幕内上位で活躍するには変幻自在な取り口だけではなく、当たりの強さを身に付けてそれから横の動きを効果的に使う相撲に切り替えられるか否かが課題。

その他にも、今場所程平幕力士の活躍が目立った場所は記憶にないくらい、土俵を盛り上げてくれた。古傷の膝の故障で途中休場したが、朝乃山、正代に完勝した先場所優勝の照ノ富士。前頭筆頭で力強い突き押しで二桁勝利の隆の勝。途中休場がありながら終盤3連勝で実力を示して勝ち越した霧馬山。大関陥落の原因となった故障から癒えて久しぶりの10勝を挙げた高安。

先場所の10勝に続き今場所11勝を挙げて小兵ながら右四つにも進境著しい若隆景。先場所屈辱の13連敗から巻き返して突き押しの威力が復活した阿武咲。幕内最年少の21歳で10勝して先が楽しみな琴勝峰……、正に多士済々で来場所以後に更なる活躍が期待される。

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