既に日本のスポーツシーンが失われて2ヶ月。オリンピックの1年間延期は決定したけれど、プロ、アマを問わずほとんど全ての競技で再開の展望もなく、虚しく時が過ぎ去るだけ。
プロ野球も例外ではない。オープン戦から徐々に調子を上げて開幕戦に突入しようという矢先に、開幕戦延期が決定。突然、梯子を外された選手は対外試合も出来ずに黙々と調整に励むだけ。これではモチベーションの維持も難しいだろうと心配になる。
喪失感はどの選手も同じだろうが、今回は確実視されていた『史上最年少2000本安打』が絶望的になった巨人坂本勇人をレポートする。
● 史上最年少2000本安打
投高打低の流れの中、一流の基準とされた投手の200勝は現在24人に対して、打者の2000本安打は52人と、2倍以上達成している(日米通算は含まないで、あくまでもNPBだけの成績)。
しかも、200勝投手は2008年8月4日山本昌(中日)が達成して以来、12年間も現れていない。打者の2000本安打が一流の証しとしたら、200勝投手は今や超一流の領域。
それに対して、2000本安打は1956年5月31日川上哲治(巨人)が達成して以来、1995年4月15日落合博満(阪神)が27人目として達成するまで、39年の月日を要しているが、28人目2000年8月18日秋山幸二(ダイエー)から、52人目2018年9月22日福浦和也(ロッテ)までの18年間で25人も達成している。
今や、毎年1人以上2000本安打達成者が現れる状況。別に2000本打者を貶めるつもりはないが、『200勝投手が超一流としたら、2000本打者は一流』と、私自身は評価している。
その、2000本安打最年少記録で注目を集めるのが坂本勇人(巨人)。これまでの最年少記録は約半世紀前の1968年7月21日榎本喜八(東京)の31歳7ヶ月16日。
現在31歳の坂本がこの記録を破るには7月29日までに116安打放つ必要がある。本来は3月20日開幕の今シーズン、東京オリンピック前の前半戦に巨人は99試合組まれていた。昨年の99試合時点で126安打の坂本には十分可能性がある数字。
● 史上最年少より史上最多を目指せ!
しかし、コロナウイルス感染による再三の開幕延期が続き、未だに開幕戦の日程が決められない状況。更に、昨日5月4日政府が全都道府県の緊急事態宣言の5月31日までの延長を決定した事により、6月中の開幕も危ぶまれる状況。開幕しても、今シーズンの試合数は100試合未満になるのが確実。
坂本の2000本安打達成は最年少どころか、今年中の達成も極めて難しい状況になった。しかし、言いたい。最年少記録云々とあらゆる競技でマスコミが騒ぐが、それがそんなに重要か。それより、坂本にはもっと大きな『通算最多安打記録』をこそ目指して欲しい。
現在、NPBの通算安打記録は張本勲(ロッテ)の3085安打。現在1884安打の坂本はあと1201本で張本に並ぶ。今シーズンは試合数減少で仕方ないが、坂本が仮に40歳まで現役を続けるとしたら、9年間130安打平均で達成可能。
もちろん、これから40歳に向かって体力の衰えや、怪我、故障に悩まされて、今までのように順風満帆な選手生活が続けられる保証はないが、一見ひ弱に見えるスマートな体型ながら、ここまで大きな怪我もなく続けてきた坂本なら可能性は大いにあるとみている。
プロ野球のみならず、東京オリンピックを始めとしてプロ、アマを問わず全てのスポーツやイベントが開催延期や中止に追い込まれ、マイナーな競技では存続自体が危ぶまれる状況。
こんな暗い時だからこそ、坂本の史上最年少2000本安打は再びスポーツにスポットライトを浴びさせてくれる明るいニュースになったはず。しかし、敢えて言いたい。今年一年だけの『史上最年少』より、これから10年間話題になり続ける『史上最多』をこそ坂本には目指して欲しい。