新型コロナウィルス感染の第２波が心配される中、７月１０日から５０００人以内のイベントが可能になり、プロ野球やサッカーＪリーグが観客を入れての試合が始まった。もちろん、東京を始めとする都会での感染拡大が更に懸念される状況下では、いつまた無観客試合に戻るか分からないが、とりあえずウィズコロナの中でのスポーツ、イベントがスタートした。
そんな中、７月１９日初日を迎える大相撲に激震が走った。中川部屋（神奈川•川崎市）の師匠•中川親方（元幕内•旭里）が弟子に対して日常的に暴力や暴言などを吐いてパワハラ行為を行っていたという。相撲部屋という閉鎖的な世界で起こった事だけに、真相はまだはっきりしないが、中川部屋は閉鎖になる事が決まった。
● 最近の大相撲暴力問題
大相撲とは特殊な世界。早ければ中学を卒業した１５歳の少年を親方が預かり、兄弟子達と寝食を共にしながら心身を鍛えて関取を目指していく。部屋制度はほとんど２４時間一緒に生活していくだけに、家族的な雰囲気を醸し出す大相撲特有な世界。
もちろん暴力はいけないが、誤解を恐れずに言えば格闘技だけに教えの中で叱咤激励の意味も込めて、ある程度手や足が出ても仕方ないと思っている。ただ、愛情が見られない日常的な暴力は絶対に許されない。最近の暴力問題を挙げてみる。
● ２０１７年、大相撲秋巡業中の鳥取市内の飲食店でモンゴル出身力士同士で口論になり、横綱日馬富士が幕内貴ノ岩をカラオケのリモコンで殴って、全治２週間の怪我を負わせた。この件は後に貴ノ岩の親方である貴乃花親方が協会と対立し、連日マスコミに報道されたあげく、貴乃花親方が協会を去る原因になった。
● その約一年後、信じられない事に今度は貴ノ岩が付け人に暴力をふるう加害者となった。２０１８年１２月４日、巡業先の福岡で忘れ物をした付け人が言い訳したという理由で、拳や平手で４、５発殴打して怪我を負わせた。衝撃的な日馬富士事件からわずか一年後の、しかも被害者が加害者になるというショッキングな事件に相撲協会は迅速に対応し、わずか３日後の１２月７日に貴ノ岩自らの引責引退で幕を閉じた。
● ２０１９年８月３１日、貴乃花部屋閉鎖に伴い千賀ノ浦部屋に移籍した貴ノ富士が序二段力士に暴力を振るった。貴ノ富士は貴公俊の四股名だった２０１８年春場所で、付け人の顔を殴って一場所の出場停止処分を受けている。その後、貴ノ富士がスポーツ庁に上申書を提出する等もめたが結局引退に追い込まれた。
結局、ここまでの３件の暴力事件は全て元貴乃花部屋の力士が関係していて、一説には貴乃花部屋では日常的に暴力が行われていたのでは……という説が流れた。
● 中川部屋問題の決着
日本相撲協会の発表によると、２０２０年２月中川親方は弟子にちゃんこの運び方を注意した際、顔面中央部を右手拳で一回殴打。別の弟子には浴衣帯の結び方を注意して左こめかみを手拳で殴打。
３月の春場所中には荷物転送に不手際があった別の弟子の背中を蹴った上、左顔面を平手打ちした。更に、この弟子には居眠りした際に正座させて腹を３回蹴り、胸部を手拳で２回殴打。また、３人の弟子に日常的に「首にするぞ」「殺すぞ」等の暴言も繰り返していたという。
結局、中川親方は弟子３人に対する暴力、暴言を理由に日本相撲協会より『委員から平年寄』という２階級降格処分を受けて、中川部屋は閉鎖、親方は時津風部屋の部屋付きとなった。
しかし、一連の暴言、暴力が事実なら私が冒頭に述べた愛情を持っての叱咤激励の意味を込めての手出しとも異なる上に、一種の病的な暴力とも考えられ司直の手に委ねるべき事件ではないかと思う。部屋付き親方として協会内に留まるとしたら協会の身内をかばう甘い処分と言われても仕方ない。いずれにせよ協会は今度こそ暴力絶滅に真剣に取り組まなければ、ファンから見捨てられる事を覚悟しなければならない。
