快晴良馬場の東京競馬場、コロナウイルス感染対策緩和で約1万人の観衆が見守る中で行われた第41回ジャパンカップ。ダービー馬4頭に外国馬3頭を含む18頭が参戦。注目は昨年無敗三冠を達成して、このレースで引退を表明しているコントレイル。7戦無敗で菊花賞を制してから3連敗中の三冠馬が引退の花道を飾れるか、競馬ファンのみならず固唾を呑んで見守ったレースを回顧。
コントレイル三冠への歩み
コントレイルは史上2頭目の無敗三冠馬ディープインパクトと、母ロードクロサイトの仔として2017年4月1日に生を享けた。2018年9月には鳥取県の大山ヒルズに移動して育成調教を始める。しかし、脚部不安に陥り2歳の5月まで騎乗調教が出来なくなり、他馬とは別メニューでの調整を余儀なくされた。
2歳の2019年8月に栗東の矢作芳人厩舎に入厩、9月15日阪神競馬場の新馬戦で福永祐一を背にデビュー。大外枠をものともせず2馬身半差の快勝。2戦目東京スポーツ杯2歳ステークスは騎乗停止処分の福永に替わってライアン・ムーアが騎乗。中団の外から直線あっという間に先頭に立ち、初の重賞制覇は2歳JRAレコードのおまけ付き。
3戦目の2歳GⅠホープフルステークスをコンビ復活した福永で制したコントレイル。大山ヒルズでの放牧を挟んで2020年4月19日三冠の第一歩皐月賞に参戦。スタートで遅れ中団後ろのインという苦しい位置。しかし、3コーナーで外に持ち出してマクリ気味に進み、直線ですぐに先頭。内から馬体を寄せるサリオスとの叩き合いを制して皐月賞制覇。
コロナウイルス感染拡大で、先の大戦以来76年ぶりの無観客となったダービー。好スタートから3番手内側でレースを進めたコントレイル。折り合いに専念した福永が直線で馬場の中央に持ち出すと、並び掛けたサリオスを3馬身突き放して圧勝。史上2組目の父子での無敗二冠達成。「遊び癖があるが、遊びながらダービーを勝ってしまった」と称賛を惜しまない福永。
類い稀なスピードと、母方の短距離の血から3000メートルに不安の声。しかし、二冠達成から三冠馬を目指すのは既定路線。前哨戦の神戸新聞杯を難なく快勝し、三冠最後の菊花賞挑戦。距離適性面からか折り合いを欠いて苦しい戦い。徹底マークのアリストテレスとの200メートルの息詰まる叩き合い。「何とか凌いでくれ」という福永に応えてクビ差の三冠達成。
屈辱の連敗から復活、引退
三冠馬となったコントレイルに陣営が選んだ次の戦いは、激闘の疲れが心配される中4週のジャパンカップ。史上最強の牝馬と言われ2年前の牝馬三冠馬アーモンドアイ、本年の牝馬三冠馬デアリングタクト、そしてコントレイルという、史上初豪華絢爛な三冠馬3頭の激突。直線大外から上がり最速の脚で駆け抜けたが、アーモンドアイに及ばず初めての敗戦。
明けて4歳になったコントレイルの起動戦は約4ヶ月ぶりとなる大阪杯。疲れも癒えて成長したコントレイルはマイル路線からの転身を図るグランアレグリアや、ライバルのサリオスを抑えて一番人気。しかし、正午過ぎの大雨で急激な馬場悪化。逃げた無敗牝馬レイパパレを必死に追ったが、重馬場にスタミナを削られて直線伸びずまさかの3着敗退。
大阪杯の重馬場で疲労が見られ、予定していた宝塚記念を見送ったコントレイルは天皇賞(秋)とジャパンカップの2戦での引退を発表。2021年10月31日、約7ヶ月ぶりのレースに臨んだコントレイル。万全の状態と府中の2000メートルという最適とも言える条件の天皇賞(秋)。中団後ろから直線で上がり最速の脚を繰り出すも、今年の皐月賞馬エフフォーリアに届かず無念の3連敗。
競走馬の掲示板では、三冠馬に対する謂われなき中傷の類いのコメントが出され、反感するファンとの間に対立が生じる事態。しかし、陣営は予定通りジャパンカップに向かって万全の仕上げを施す。18頭立てダービー馬4頭による頂上決戦。1枠2番の枠順は恵まれたとも言えるが微妙な枠。「ラストランなので無敗三冠馬の名誉を守る」と眦を決して挑んだ福永。
レースは快勝だった。好スタートから一旦下げて、外に持ち出した福永の渾身の鞭に応えたコントレイル。3頭のダービー馬と前にいたオーソリティを従えて真っ先にゴールに飛び込んだ。涙を流しながらコントレイルを労る福永。最後に観客席に一礼した姿にもらい泣きのファン。馬名の飛行機雲は儚く消えても、コントレイルの勇姿が忘れ去られる事はないだろう。
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